わが国の占領憲法には、「 日本 」 がない。歴史、文化、伝統がことごとく、
六年八ヶ月にも及ぶ占領で、洗脳されてしまったからである。
< 戦後我が国を統治したGHQすなわちアメリカの最大課題は、
「 日本を再び立ち上がってアメリカに刃向かわないような国にする 」 と
いうことでした。
下手にエリートをつくると、底力のあるこの民族は 再び強力な国家を作ってしまう。
そこで、まずエリートを潰さなければというわけで、真っ先に旧制中学、旧制高校を
潰してしまった。
もちろんこの措置は、一九〇七年に結ばれたハーグ条約にある 「 占領者は現地の
制度や法令を変えてはならない 」 という趣旨の第四十三条にあからさまに
違反するものです。
大がかりな検閲によって言論の自由さえ封殺するという、洗脳のための蛮行を
秘かに実施していたアメリカにとって、これくらいは朝飯前だったのです。
ハーグ条約に関して付け加えると、憲法や教育基本法を押しつけたのも同様に違反です。>
『 国家の品格 』 84~85頁 藤原正彦 著 新潮新書
この書のなかで、藤原正彦氏は、真のエリートは、 「 偏差値エリート 」 ではなく、
次の二つの条件をあげています。
< 第一に、文学、哲学、歴史、芸術、科学といった、何の役にも立たないような教養を
たっぷりと身につけていること。そうした教養を背景として、庶民とは比較にもならない
ような圧倒的な大局観や総合判断力を持っていること。これが第一条件です。
第二条件は、 「 いざ 」 となれば 国家、国民のために喜んで命を捨てる気概が
あることです。この真のエリートが、いま日本からいなくなってしまいました。>
『 国家の品格 』 84頁 藤原正彦 著 新潮新書