時、うつろいやすく

日常のたわいもない話…
だったのが、最近は写真一色になりつつある。

最後のいちじく

2016-09-27 18:40:07 | 日常

いちじく。

夕立の音で気づいた。

採り忘れた。

外はだいぶ暗くなっている。

ゴロゴロと雷が唸っている。

熟れたいちじくは雨に濡れたら一晩もたない。

一度はあきらめる。

雨音が恨めしい。

今年最後のいちじく。

あきらめきれず外にでる。

玄関ポーチから空を仰ぐ。

どす黒い雲が立ち込めている。

雨は小降りになったが雷が狙っている。

いちじく欲しさに雷直撃では洒落にならない。

しばらく躊躇する。

いま採らなければ明日はない。

軒下をかいくぐっていちじくの木にたどり着く。

薄暗がりの中、かろうじて赤いいちじくをつかむ。

ポロリ。

触ると同時に落ちた。

しゃがんで草の中を手探りする。

野イチゴのとげが刺さる。

痛い。

手を引き抜いてもう一度草むらに手を入れる。

またとげが刺さる。

痛い。

暗い。

濡れた草と土が気味悪い。

雷が怖い。

あきらめて軒下に逃げる。

痛い方の手を見る。

指に小さなとげが二本刺さっている。

ああ、これで今年のいちじくは終わった。

コメント
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