老いたブルース・リー
謝罪会見の決まり文句。
「皆様には、多大なるご心配とご迷惑をおかけしました」
多くの人が心配などしていない。
関係各位への配慮というのならば、せめて前後を逆にして、
「多大なるご迷惑とご心配をおかけしました」というべきだろ。
今度のプリアンプは異常に感度が高い。
音は格別だが周辺機器の電磁波に敏感に反応してしまうところがある。
そこで電磁波対策を講じることにした。
プリアンプ上部のラックに厚さ10ミリの超々ジュラルミン板を敷く。
アルミは電磁波を通しにくい。
プリアンプの両側面をラックごと電磁波シールドネットで覆う。
これで万全である。
掛かった費用は総額21,000円。
我ながらローコストに抑えたものだ。
満足のいく価格である。
二日後。
浴室の折れ戸にガタがきた。
扉の上枠が外れかかっている。
内部のビス受けが折れている。
枠が開いてアクリル板のパッキンが外れかかっている。
一旦、枠を開く必要がある。
両手で枠を握り、思いっきり広げる。
枠とアクリル板に隙間を作り、パッキンのかみ合わせを直す。
一人ではできないのでオカンとタッグを組む。
私が枠を広げている間にオカンがパッキンを直す。
無理に広げているので早くしないと枠がもたない。
その状態がもう3分以上続いている。
オカンの行動が遅い。
パッキンはほぼ元通りになっているようだがまだなにかゴソゴソしている。
「早よせんか」
といいかけたときに、バキーという大きな音がした。
両手に持った折れ戸が二つに裂けてしまった。
枠のジョイントが3か所折れている。
アクリル板のパッキンもベロンベロンに取れている。
一目見て、もはやこれまでである。
あと一歩のところで崩壊してしまった。
あまりのショックでそれから2時間寝込んでしまった。
修理は諦めた。
とても直る見込みはない。
折り戸をまるごと交換するしかない。
深夜に起きると、気を取り直してネットで交換用折り戸を注文する。
総額、送料込みの21,000円。
あと一歩のとこまできての21,000円は大きい。
ショックである。
恐ろしく大損害に思えた。
3日たった今も尾を引いている。
原作を読んで久しい。
小説はこんなではなかったように記憶する。
もっと、切実な身を削られるようなリアルさがあったように思う。
兵隊のメイキャップも嘘っぽいし、人物描写も戦場描写も真実味がない。
抽象的というか、観念的というか、まるで舞台演劇を見ているようである。
核となる日本兵の極限の飢餓の描写も真に迫るものがない。
そもそも人を食う以前に、戦場のいたるところにタロイモの葉が生えている。
そこを掘ればいくらでもイモがあるではないか。
なぜ掘らぬ。
なぜ気づかぬ。
こんな無頓着な映画に戦場の地獄を語る資格はない。
★★