ついに、ティル・フェルナーのベートーベンPfソナタシリーズは最終回を迎えた。最終回は勿論、最後の3つのソナタ。
開始前、今日の演奏がBBCのRadio3で放送されることが伝えられた。「皆さんの参加-特に沈黙パートでの-をよろしくお願いします」といういつものアナウンス。いつもはこの台詞があまり功を奏さないのだけれど、流石に今日は、放送のため、というより、この3曲のために、そしてティルのために、皆が沈黙を守る。楽章間の咳すら、殆どない。これはロンドンにしては記録に値する!?
前半がOp.109、Op.110、休憩を挟んで、Op.111。曲自体の完成度が上がってゆくように、ティルの演奏の完成度も後ろに行くほど上がってゆく。
テンポ、音色、フレージング、強調される音型、気になることが多すぎる。思い出しきれない。言葉も追いつかない。Wigmore Hallでの演奏会では、これまでにも何度かBBCの録音にあたったことがある。ただ「近日、BBCで放送します」と言われても、生を聴いているから録音なんてどうでもいい、と、過去には一度たりともその放送を聴いたことはないが、今回は、絶対、スコアとともに、放送時間を待ち構えよう、と思っている。
最後のソナタの最後の部分。右手がつりそうなほどの長さ&速さのトリルをするところ、そのトリルの感じが、昨日バレエを見たせいだろうが、バレリーナの小刻みに動くトゥを思い出させたことと、その「白鳥の歌」にも似た美しい音楽が相俟って、まるで白鳥がそこに居るように思えた。
一番最後の和音の収まり方が、どうも納得できていない。来シーズン(今年の秋)になるが、パリで同じプログラムの演奏会が予定されているとのことなので、もう一度Salle Gaveauでも聴いてみたい(Salle Gaveau、見かけによらず音響も良いし)-相変わらず反省していない私である。
今日の演奏が聴けて、本当に幸せだった(また、暫く席から立ち上がれなかった)。
ありがとう、Till-ところで、次の挑戦は何かしら?