風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

プライド

2009年11月18日 13時19分15秒 | エッセイ、随筆、小説

 


「最近の質問っていかがなものかと思うんだけど・・・」とあった。
私は「何が?」とそ知らぬ振りをする。
「今晩はなにが食べたいとか、好きなテレビ番組はとかではなく、
日本についてとか、右と左・・・みたいな系統に変化したよね?」と言うので、
だからなにが言いたいのだ?と心の中で思った。

「ごめん、なにか都合の悪い質問でもしたかしら?
覚えがないのは障害のためか、最近立て込んでいたから記憶に留められていないのか、
自分でもよくわからないの、でも、不愉快な気分になったなら謝るわ」と返信した。

私が聞いたのは家族の位置付けについてだ。
なにも日本がどうのとか、世界の貧困についてなどといった重く難しい質問なんかしてやしない。
彼が「正直でありたいと思うのと、嘘はつきたくはないので」といった趣旨の書かれたメールの末尾に
交際に触れるような、私には不愉快極まりない言葉が並んでいたために、
私と付き合う云々以前に、結婚生活ってどんなものなの?と聞いただけのことだ。
もちろん、本当のことなど言いやしないことは十分わかっている。
が、その質問を投げることで、事前に彼のプライドを傷つけ、閉口するだろう予測が立てられたため、
治療を最優先している私に交際云々などという話題を持ち出すなと釘をさした結果、
静かなる怒りのメールが質問から5日も経過した今朝、朝5時半という時間に携帯が受信した。

いい歳をして・・・など野暮なことは言わない。
結婚しているくせに、などとも言わない。
私が憤慨しているのは友人のひとりである彼の多忙さなどに気遣い、
話題を合わせてきたことや、機微、感情を瞬時に読み取った上で
食事などの時間を共有してきた経緯がまったくといって伝わっていなかった事実が逆鱗に触れただけ。

いろいろな男をみていて思うことがある。
仕事のストレスが女遊びに走ってしまうケースを垣間見るたびに、
結局は双方がぼろ雑巾のように傷付けあうだけで、なにもそこからは生まれはしない。
男女問わず、誰かに大切に思われたり、誰かを想ったり、好きになったりする行為は素晴らしいと思うが
ある一線を越えた瞬間から、泥沼に足を取られ、身動きできなくなる。
奇麗事かもしれないが、私はそうした男女関係を忌み嫌っているだけだ。
かかわりを持つ時間も、体力も気力もない・・・・・だけなのかもしれないが。

傷ついたプライドという残留物が目前に転がっている。
そりゃそうだろうと思う。
日本での最高峰である大学の法学部を卒業後、大企業に就職、エリート街道まっしぐらで
本当に偉いポジションに君臨する。
でも本当に幸せなのかと問うたときにも、やはり返信はなかった。
私が聞きたいのは彼の私生活ではなく、彼の思想であり、肩書きや社会的立場を超越した部分、
それが彼にとっては厄介極まりない質問に過ぎないのだろうか。

「ごめん、なにか都合の悪い質問でもしたかしら?
覚えがないのは障害のためか、最近立て込んでいたから記憶に留められていないのか、
自分でもよくわからないの、でも、不愉快な気分になったなら謝るわ」と返信した。

私。
毒のある、嫌な女だ。