欲がないの、と言いかけて止めた。
生きる欲がない。
雨のせいか、闇を見てしまう自分の目というものを怖れた。
体調が痛ましいかぎり、
わたしはわたしであり、わたしではなくなってしまったのだから。
あれから7年の歳月を、
迷い込んだ迷路に、出口がないことを気付きつつあるこの頃。
彼女だと言われたからね、僕はあんぐりと口を開けて、
首を右側に傾けたんだよ。
だって、彼女といえば前に付き合っていた彼女のことだと思ったし、
誰のことか、本当に頭に浮かんでこなかったからね。
そしたらこの前、一緒に歩いているところを目撃したというんだよ。
一緒に歩く女性といえば、あっ、先輩しかいないから、
だからね、先輩のことですか?と僕は尋ねた。
彼女ではないならそれでいいです、と言われた後、
情報源や知恵の出処はそこか?と詰め寄るんだよ。
先輩とは食事に行くし、趣味であるラグジュアリーホテルステイの話題で盛り上がることはしても、
彼らが思い込んでいるような、軽率さはない、と声を荒げたんだ。
するとね、ほら、高次脳機能障害は感情抑制がきかないといった冷ややかな視線を感じて、
僕や先輩への侮辱を、容易に行う姿勢にすら気付けない彼らを、ただただ情けなく思ってね。
国の施設だよね、ここは。
でも、あくまでも障害者の僕たちのためのものではない。
過度の希望や障害受容についてをあれこれ称える前に、
やる気を削ぐような物言いや態度を、
高次脳機能障害や先輩への偏見を、省みる必要がある。
あっ、僕ね、容赦するつもりはないんだ。
だからといって、弱者になってしまった障害者として、彼らと闘うつもりもない。
血税が彼らの給与になっているかと思うとね、いたたまれなくなる。
ここにいる僕がいうのもなんだけど、疑問を払拭できないんだよ。
航空公園にほど近い、とある国のリハビリ施設。
僕とはわたしの友人で、先輩とはわたしを指している。
社会復帰に向けた今後の方針を決める会議に出席した友人は、
抱えてきた疑問を声に出したとき、その発言がわたしの指図や知恵によるものだとして、
ふたりの関係に口を挟んだ挙句、わたしの実名があがったことに腹を立て、
情けない思いを味わい、悲しみに暮れ、こころが折れたそうだ。
支援というものをわたしたちが考えさせられる現実がある。
だれのためのなにを目的とした支援かを置き去りにしたままでは、
支援は絵に描いた餅にしか過ぎず、偽善のニオイが立ち込めてくるだけだ。
欲がないの、と言いかけて止めた。
生きる欲がない。
雨のせいか、闇を見てしまう自分の目というものを怖れた。
欲を削ぎ落とされれることをたとえば支援と仮に呼称するなら、
そんな支援は必要ないと叫びたい。
雨の夜だから、声は雨音に紛れ、闇夜に消えてなくなるだろう。
たくさんの経験をするために産まれて来たのだから
まよい彷徨するのが人生です。
迷う事は、まだ光をさがす楽しみでもあります。
彷徨することは、未知の世界への尽きぬ好奇心です。
エネルギがあるから迷い、彷徨し、苦悩するのだと思います
mayumiさんの人生を楽しみにしています。
追伸
またFBはじめてます。リクエストしました