暮れから正月にかけていつになく少し自由な時間が持てたので、前々から作りたいと思っていたモデルガンのキットを購入して作成しました。銃マニアの人はマウザーと英語読みするのかも知れませんが、ミリタリーファンの人は多分モーゼルとドイツ語読みする方がしっくりするモーゼルM719のキットと、なかなか売ってない(最近ヘビーウエイトモデルとして復活したようですが)第2次大戦中のドイツ軍歩兵の主力武器だったMP40のマルシン製組み立てキットをインターネットで購入しました。
銃の楽しみ方には「撃つ楽しみ」「メカニズムを味わう楽しみ」「コレクションする楽しみ」などがあると言われますが、私の場合は二番目のメカニズムが面白いと感じていて、「考え抜かれて無駄がない銃の機構」に何とも言えない興味があります。実銃をコレクションするのは手入れに時間や手間がかかりますし、実銃自体にはあまり興味がないので集める気が起こりません。また「撃つ楽しみ」も実際小銃やピストルを撃った経験はありますが、あまり楽しいと感じなかったので、やはり自分はメカニズム派なのだろうと思います。
拳銃はマガジン式のダブルアクション(装弾しておけば引きがねを引くだけで弾が出るやつ)を何回か撃ちました。25m位の距離から30cm位の円形の的を撃つのですが、銃身の先が少しゆれるだけで外にはみ出してしまう様な大きさにしか的が見えない状態で、ゆっくり息を吐きながら引きがねを引くと自分で意識しない時に弾が発射されて気がつくと手が跳ね上がっている、という感じです。5発中4発位は円の中に着弾しますが、なかなか中心の5点には入りません。映画のように瞬時の判断で銃を抜いて相手に当たるなどまず無理だろうと感じます。
小銃は400m先に3−4mはある紙の的を立てて伏せ撃ちをするのですが、これがまた拳銃と同様、銃の先が少し動いただけで的から外れるような大きさにしか見えないのでゆっくりと息を吐きながら引きがねを引いて知らないうちに発射されているという感じです。銃が重くて大きい分装薬が多く発射の衝撃も拳銃より大きいはずですが、あまり大きく感じません。これまた5発中3発位は円の中に入りますが、まず400mも離れたらヒトや動物には当たらない(もともと撃ちたいと思わない)と思いました。ゴルゴ13は1000mでも動いている人物の額に一発で命中させますが、「人間業でない」ということが実感としてわかります。
実銃は発射した後、必ず分解掃除をして油を塗ってやらないと痛んでしまい、次に使えなくなるのですが、これが面倒ということも「撃つ楽しみ」が持てない理由です。
モデルガンはでき上がった状態で売っているものもあるのですが、メカニズムを楽しみたい派としては全て分解された状態から組み上げてゆくモデルがやはり楽しいと感じます。可動部分以外はABS樹脂で出来ていて実銃の2/3位の重さなのですが、動作は弾が出ない他は実銃と同じで構造もほぼ同じにできているから十分楽しめます。ただ樹脂の部分はどうしてもプラスチックの質感が残るので、写真にあるような塗料で予め塗装しておくこと、及び組み上がってから軽く上塗りすることが必須だろうと思います。塗料のスプレーはモデルガンショップなどでブラック又はブルーがかったブラックが2400円位で売っています。私はアメヨコのガンショップまで買いにゆきました。非常にきれいに仕上がります。
詳述はしませんが、モーゼルもMP40も少し金属を削り込まないと上手く組めないような所が1−2ヶ所あってコツが要るのですが、否にならない程度の面倒さなので組み上がって上手く動作した時には嬉しくなります。
「撃って楽しむ」か「メカを楽しむ」か「コレクション」かというのは、一般的なミリタリーファンについても言えることで、戦略や用兵に興味がある人と、単に兵器のメカニズムが好きな人、用品をコレクションする人と「ミリオタ」とひと括りにできない「中身の違い」があると思われます。剣道の達人であっても日本刀に興味がない人がいるのと同じです。私は「ミリオタ」のはしくれですが、中身は「兵器のメカが好き」というタイプでどうも本物の軍隊は膚に合わないようです。戦略や用兵についても自衛官と話しができるような一通りの知識はありますが、どうもあまり興味が持てませんでした。かといって武器の諸元を詳細に語るなどという知識はなく、「あの飛行機はかっこいい」とか言っているレベルなのでいい加減なものです。
医者としては幸い銃で撃たれた患者さんを診ないといけない状況になったことはありません。昔ショットガンで至近距離から撃たれて亡くなった人の司法解剖のご遺体を見た事があります。多分バードでなくバックショット(鹿撃ち)なのではないかと思われる胸から上腕にかけてごっそり肉を持っていかれてる悲惨な状態だったのですが、近距離用のチョークかどうかなど事件の詳しい状況は判りません。アメリカでは銃の乱射が最近も頻繁に起こっていて、中東の戦争で亡くなる軍人よりもアメリカ国内の銃犯罪で亡くなる人の方が多いという異常な社会です。アメリカに留学した時もGunshot Woundの正書が大学病院前の生協の本屋に平積みになってました。マンハッタン留学中に幸いホールドアップに合うことはなかったのですが、セントラルパーク以外は100番から北には歩いて行かないとか、万一の時はいつでも出せるようにズボンに20ドル札を入れておくとかは励行していました。モデルガンを買っておきながら矛盾してますが、日本は銃社会でなくて本当に良かったと思います。