rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

戦後秩序の現実とは

2015-01-16 19:03:49 | 政治

戦後秩序のなりたち

 

今年は戦後70周年にあたり、世界各地で第二次大戦の戦勝を祝う行事が予定されていることは前回のブログに書きました。公の席においては、「戦後秩序」とはファシズム枢軸国家、日独伊に対して自由と民主主義を信奉する「連合国」が勝利したことによって連合国(United nations)が中心になって世界をコントロールする体制を言う事になっています。

 

しかし、実際の歴史においては、日本はアジアの国を侵略したのではなく(朝鮮と中国は一応国の体裁をとっていましたが)、アジアにある欧米の植民地を取りにいったに過ぎません。つまり欧州の古い帝国主義国家に、新興日独(伊)の帝国主義国家が戦いを挑んだことで起こったのが第二次大戦であり、結局新旧の帝国主義国家群は潰し合いによって弱体化してしまいます。替わって戦後は土地を収奪して帝国を築くのではなく、経済体制を統一することで覇権を築く米露経済帝国主義国家が2大覇権国となって世界を二分してしまうのです。

 

その経済帝国主義の覇権争いも最終的に米国の資本主義が1990年代に勝利を収め、米国流の拝金資本主義(グローバリズム)が世界標準になることが戦後秩序とほぼ同義になったと言えます。ところが、このグローバリズムが一部の金持ちと大多数の貧乏人という二極化を先進国の内部にも引き起こしつつあることから、現体制を疑問視する人達が世界の中で次第に増えて来ているのが現状です。最近起こっている国際的なニュースは、殆ど行き場のなくなった一握りの富者が持つファンドマネーが原因になっているように思います。世界を動かす権力者としては、何とか一部の富者が世界の富を独占する体制を継続させたい、つまり「戦後秩序」という名前で正当化された体制を維持したいと考えているはずです。この辺の事情は前の拙ブログでも説明しました。

 

フランステロ事件と戦後秩序

 

今回のシャルリー・エブドという週刊誌がイスラムを誹謗する漫画を掲載した事に対するテロ事件もこの戦後秩序の問題が複雑に絡んでいるように思います。欧州では帝国主義時代に植民地で、戦後独立した国々からの移民が多数本国に住み着いています。植民地時代は2級国民として宗主国の国民とは差別されて労働力として使われていた人達が、戦後独立国になったために一般の国民と同じ扱いを受けながらも、現実的には安い労働力としてそのままサービス業などに雇われて、不景気になると早々に解雇されてしまうので失業率も高い状態で集団を形成して住み続けています。フランスでもモロッコやアルジェリアなど旧植民地から400万人近くのイスラム教徒が流入していると報道されていますが、若者の失業が増える中、反移民を訴える愛国等などが勢力を伸ばしている中、摩擦が増えている現状があります。拝金資本主義(グローバリズム)という戦後秩序が行き詰まりを見せて、一握りの勝者と多数の敗者という貧富の二極化が進んでいる中で、「表現、言論の自由」という公の戦後秩序と、「テロリズムの否定」という誰も否定できないメッセージを掲げて各国の元首を含めた多数の一般国民が行進することで、その実「1%が富を支配するグローバリズムを継続させることを狙っている」のではないか、と考えるのはうがった見方でしょうか。私には、貧しい国民と旧植民地からの貧しい移民を対立させることで貧しい国民が反グローバリズムに傾くのを巧妙に抑止しているように見えます。

 

日本の右翼左翼の定義が理解を妨げる

 

フランス語は読めないので私には確認できないのですが、シャルリー・エブドというのは右派系でなく、左派系の雑誌だそうです。つまり保守的な論調でなく、革新的な内容だということでしょう。しかし外国における保守、革新というのは日本のように体制側が常に保守であった国と異なり、革新的な労働党が政権を担う事も普通に行われる社会においては、革新=反体制ではなく、どちらを選んでも体制側という前提で考えないといけません。シャルリー・エブドの画像を検索するとイスラムのみならずカソリックの風刺画も多く、伝統的な宗教などを重視しない革新系ということかなと思わせます。まとめると、

 

諸外国

保守=右派:伝統や習慣・宗教、民族や国家に重きを置く傾向

革新=左派:よりグローバル(皆が同一)な視点で集団よりも個を重視

 

という形になり、米国の民主党に属するネオコンと呼ばれる人達など新保守と名付けられながら起源は左翼であったと言われています。一方、日本では左派・革新というのは反体制派であり、保守が親米であることに対立して親中国・親社会主義で、戦前の日本は全て倫理的に悪であって、所謂反日的と言われる信条を「良し」とする人達という定義になっています。だから韓国の国粋的右翼の主張や中国の反日的プロパガンダと容易に結びつく傾向にあります。中韓が「日本の右傾化を警戒する」などと表現するときの右派の定義も日本的な右翼左翼の定義に基づいているように見えます。習近平氏は中国の伝統や習慣(儒教)を尊重し、強い中国を目指して軍隊も党の軍隊から国軍に変えようとしている「保守的=右翼的」政治家ですが、自らの信条に近い安倍氏に親近感を抱かないのはおかしな事です。

 

日本

保守=右翼:伝統や国家を重視、戦前的価値観を否定しない

革新=左翼=反体制:戦前の価値観は一切否定、グローバリズム、地球市民(社会主義体制があった頃はマルキシズムを良しとしていた)

 

という形になるでしょう。

思うに、民主党政権に一貫性がなかったように感じたのは、国民にも彼ら自身にも日本的な意味での革新系という認識が残っていて民主党が体制派であるという確固たる認識がなかったことにあるのではないかと思われます。一方で現在の安倍政権にも昭和的な保守・右翼を感じさせながら、TPPや米国流グローバリズムを推進している所があり、これは欧米で言うなら伝統を破壊する「革新=左派」的政策であると言わざるを得ません。安倍首相が日本的右翼の衣をかぶった左翼政治家なのか、結局目指すところが戦前を良しとする旧態依然の右翼政治家なのか判断しかねるのは日本人のみならずアメリカの政策担当者も同じなのではないでしょうか。

 

戦後秩序の今後

 

「自由と民主主義を守る」という表向きの戦後秩序の信条は今後も大事にされると思いますが、現実社会では「自由」も「民主主義」も危ういものになってきていることは皆薄々感じているはずです。一方で経済において戦後秩序として打ち立てられた「拝金主義グローバリズム」も権力者達は維持したいと努力していますが、どうも上手く行かなくなって来ているのが現実です。本来拝金主義グローバリズムは戦後秩序が目指したものとは無関係な産物です。我々一般民衆としては「自由」と「民主主義」を駆使して拝金主義グローバリズムを打ち壊し、真に豊かな社会を築きたいものです。それでこそ初めて戦争で犠牲になった人達の死を無駄にせず、戦争の教訓を生かした戦後秩序を築いたと言えると思います。

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