rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

国家主義か社会主義かで割れる米国

2018-10-06 09:51:07 | 社会

米国は11月6日の中間選挙に向けて激しい選挙戦が繰り広げられています。与党共和党はトランプ大統領がアメリカファーストを掲げて国内の産業復興に向けてやや過剰なまでの諸外国(主に中国)への輸入超過是正、課税をアピールしている一方、民主党は若手を中心に「社会主義」政策を掲げる候補者が人気を集めています。

 

グローバリズムは富の再分配を行わない

 

民主主義国家の重要な役割は税収と言う形で国民・企業から集めた「富の再分配」を行い、社会の公平性や秩序を維持することにあります。しかし行き過ぎた拝金資本主義の下では、グローバリズムに基づく企業・個人はタックスヘイブンを活用して収益を挙げた社会に税は払わず、本社を法人税の安い他国に置いたり、収益を名義のみのタックスヘイブンに移してしまいます。日本の全商業を脅かすアマゾン・ジャパンも「本社・決済業務を他国で行っており、日本には集配施設しか置いていない」という理屈で法人税は払っていないそうです(「決裂する世界で始まる金融制裁戦争」渡邉哲也 著 徳間書店 2017年刊 )。グローバリズムも一応「トリクルダウン」という金持ちが金を使うことで貧乏人にも金が回って社会全体が底上げされる、という理屈を富の再分配の替わりに掲げていましたが、QEや金融緩和で金をいくら市場に放出しても富が一部に集中するだけである実体から、99%の庶民・国民から「もう騙されない」と言う声が上がって来ているのです。藤井巌喜氏の近著「国境ある経済の復活」2018年刊(徳間書店)で説明されているように、各国は債券(基本的には税で返すから増税と同じ)発行を繰り返して「富みの分配」を続けるものの、景気の良いグローバル企業・富者は税を払わない、それでいて企業や法人が米国では「市民」と同じ発言権を得て立法府に自分達に有利な法律を作らせ(企業献金はほぼ無制限)益々太って行く。そんな実体に国家という枠組みを再度堅牢に構築し直そうという動き(リベラルの名を借りたグローバリスト達は右傾化と呼んで恐れている)が出て来ているのが現在の世界の情勢なのです。

 

反グローバリズムの流れ

 

そこで米国で出現したのが地方の労働者層を中心とした「トランプ流国家主義」の流れと、前大統領選の民主党候補選びの際、特別代議員という企業の下僕達が全てクリントンに投票した一方で若者を中心とした一般の民主党員達の半数近くが支持したバーニー・サンダース議員が掲げる「社会主義」政策の流れです。8月に公表されたギャラップの調査で民主党支持層の57%が社会主義を肯定的に見ているという結果があります。NY州から連邦下院選に出るオカシオ・コルテス候補、ミシガン州のラシダ・トレイブ候補はメディアでも紹介されていますが、それぞれヒスパニック系、イスラム系の候補で「アメリカ社会民主主義者」という政治団体からの民主党候補です。この動きに従来からのグローバリズム民主党系の重鎮達は戦々恐々としており、ベトナム戦争以来の左傾化とも言われています(雑誌選択2018年10月号)。

グローバリズムからはトランプ流国家主義を極右、サンダースの社会主義は極左とレッテル張りがされますが、それぞれの主張は「反グローバリズム」で共通であり、「富の再分配」の方法が異なっているだけのように思います。

 

民主党サンダース議員とオカシオ・コルテス候補   イスラム系初の女性候補Rachida Tleib候補

 

追いつめられる既存エスタブリッシュ勢力

 

リベラルは不法移民の閉め出しを嫌います(安価な労働力がなくなるから)が、メキシコ経由の不法移民に混ざって流入するドラッグカルテル勢力、MS-13は米国の日常生活を脅かすほどの勢力になっており、トランプの主導する国境警備強化(うまく利用しているという批判もありますが)の重要な課題になっています。一方既存エスタブリッシュ勢力の雄であるカソリックでも激震が走っていて、米国、カナダ、西欧各国で聖職者による児童への性的虐待が次々に明るみに出て、2018年8月のフランシスコ法王のアイルランド訪問では野外ミサで民衆に謝罪する結果にもなっています。NPRラジオニュースでもその様子が録音で流れて聴衆から「謝罪以上にもっと被害者に対してやることがあるはず」といった不満の声も聞かれていました。

現在10月から始まる米国最高裁判事に新たにトランプ派のブレット・キャバノー判事が推薦されていますが、トランプ派から罪を追求されると困る人達(drain the swampの対象者)がでっち上げでもよいから判事就任を阻止しようとあがいています。中間選挙がどのような結果になるかは未定ですが、米国に日本のマスコミでは報じられない新しい流れが確実に現れて来ていると思います。

聖職者への批判が渦巻く

コメント (10)
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