日本のリベラルに限らず、世界のリベラルは一体どうしてしまったのだろうと感ずる事が最近多いです。
「欧州ポピュリズムーEU分断は避けられるか」 庄司克宏 著 ちくま新書2018年刊
を今読んでいるのですが、メディア等で「悪いもの」「望ましくないもの」として扱われるポピュリズムは本当に「消滅させなければ人類にとって害をなすものなのか」疑問に思います。ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されてDi Tellaの定義によると「特権的エリートに対抗して一般大衆の利益、文化的特性および自然な感情を強調する政治運動を指す。少数派の権利に配慮することなく、直接大衆集会、国民投票や大衆民主主義を通して多数派の意思に訴える」とあります。そしてその特徴は「反リベラル」であるとされます。
ははあ、リベラルを自任する人はポピュリズムが嫌いだという事は分かります。では「リベラルとは何か」と言うと「立憲民主主義を骨幹とする思想」とされる場合が多いようです。私は若い頃から立憲民主主義思想一本で来たという自負があるのですが、国防・自衛隊志向であったことからリベラル派とされる人からは嫌われる事の方が多かった様に思います。本来、共産党や社会党で社会主義を目指す人は根本的にリベラルではありえないはずですが、彼らはどうも自分たちをリベラルだと勘違いしている。日本では、自民党中道左派とかハト派とか呼ばれる人たちが本来のリベラルに近い定義になると私は思います。欧州ポピュリズムは極右と揶揄される人たちが目立ちますが、ギリシャなどは左派ポピュリズムであり、左寄りだからポピュリズムではないと高を括る事はできません。社会的エリートと言われる人はリベラルを自任する人が多いと感じますが、ポピュリズムの台頭はこのエリートたちが社会の変化に付いてゆけず、大衆が望む社会を実現できなくなった事、多数決で決まるべき民主主義を社会が体現できていない事から生まれた必然ではないかと私は思います。大衆の意見こそが多数派であり、民主主義では少数派の意見も取り入れた上で最終的には実現されなければならないはずなのに多数派の意見が無視されている事が問題の根幹にあるのであり、リベラルエリートはポピュリズムを批判する資格がないだろう!と私は思います。
マルキシズムが全盛であった昭和の時代は右や左は各種政策や意見がワンセットになって存在していたので「思想のお勉強」をすることで理論武装ができて相手を負かせたり、レッテルを貼って相手の意見を封じる事ができました。しかし社会主義経済が消滅してマル経が全否定されると、当時の左派と言われた人たちは人権や環境を訴える以外他人のマウントを取る事ができなくなります。本来「人権や環境」は右派の人たちも重視していた事であり(ソ連や中国こそ環境汚染や人権軽視)、「だからどうした」みたいな状況で意見が噛み合わない状態が出現します。米国では左派地球市民的グローバリスト達がネオコンサーバティブ(ネオコン)と呼ばれる地球規模の資本主義経済を構築することを目指し、それが巨大資本の利害とも一致したために2000年代に入ってから大きな力を持つようになります。現在地域重視の経済を根っからの保守の人たちが「反グローバリズム運動」として展開しようとしていますが、旧来の左派の人たちは「保守や右派」とみられるのを嫌い積極的ではないように見えます。米国のトランプ政権が反グローバリズムの良い例ですが、トランプを良く言うリベラルを自任する人がいない精神的構造はこの辺にあるのでしょう。
米国リベラルの凋落
米国現地時間10月14日朝、米紙ニューヨーク・ポストは、大統領選前の「10月のサプライズ」として、バイデンの息子ハンター・バイデンのウクライナでの汚職スキャンダルに関する電子メールが、暴露されたことを報じました。 このニュースはすぐに多くの米国メディアに取り上げられ、上院国土安全保障・政府問題委員会が調査に介入することになりました。公開されたメールによると、ハンターは2015年に、父親のバイデン前副大統領をウクライナのガス会社「ブリスマ・ホールディングス」の幹部に紹介。当時、ウクライナ側の事務を担当していたバイデンは、2016年にブリスマ社の汚職事件に介入し、米国の10億ドルのウクライナ支援を保留して、ブリスマを起訴したビクター・ショーキン検察官を解雇するようウクライナに迫って脅していたとされます。それのみでなく、ハンター・バイデン氏は中国との不適切な関係も取りざたされています。しかしメジャーのマスコミは、大統領選はバイデン有利と報道するのみです。また一流の医学科学雑誌であるnatureやLancetまで、ここにきて大統領選はバイデンを応援するという医学と関係ない記事を堂々と載せるようになりました。もうなりふり構わずという感じでしょうか。医学雑誌がバイデンを支持する理由はトランプが非科学的な対応を取って新型コロナ感染症の犠牲者を増やしたということですが、根本的にすべての国民が低価格で最善の医療を受けられる欧州や日本の様な「国民皆保険制度」というシステムがない事がCovid19対策においても米国医療の最大の欠点であるのに、それに言及せずバイデンを支持すれば米国民の健康が増進すると医学雑誌が表明するとは呆れ果てた物です。「製薬会社や医療産業が怖くてとても金儲け主義医療を批判するような記事は書けない」バイデン支持を打ち出すことで協賛支援金をもっと下さい、が本音でしょう。
バイデン氏支持を表明するnatureとlancetの記事
欧米のリベラルがボロボロの状態なのですから、日本のリベラルを自任する人たちが見る影もないのは致し方ないことかも知れません。