I. 歴史は終焉したのか?
「歴史の終わり」は、フランシス・フクヤマが1988年に発表した論文をもとに1992年に書籍化された有名な文明論で、社会主義の終焉とその後の資本主義グローバリズムの基になった論説と言えます。つまり国際社会において民主主義と自由経済が最終的に勝利し、それからは社会制度の発展が終結し、社会の平和と自由と安定を無期限に維持するという仮説です(Wikipedia)。民主主義と市場経済が共産主義に勝利したことで、これ以上のイデオロギー論争は起こらないとしたことは部分的には正しいことでしたが、その後世界から戦争が亡くならなかった事実は、彼の本意とは別にその解釈に誤りがあった事は明らかだろうと思います。
II. 衝突しつづける文明
「文明の衝突」はフクヤマの師ともいえる政治学者のサミュエル・ハンチントンが1996年に著した論文で、冷戦が終わった現代世界においては、文明化と文明化との衝突が対立の主要な軸であると述べた。特に文明と文明が接する断層線(フォルト・ライン)での紛争が激化しやすいと指摘しました(Wikipedia)。世界政治において文化やアイデンティティが重大な影響を果たすようになれば、文明の境界線にしたがって世界政治の枠組みは再構築されることになる。かつてのアメリカとソヴィエトによって形成されたイデオロギーの勢力圏に代って、それぞれの文明の勢力圏が新たな断層線、フォルト・ラインを生み出し、そこで冷戦中にはなかった紛争が頻発するようになっている。1990年代以降に世界的なアイデンティティの危機が出現しており、人々は血縁、宗教、民族、言語、価値観、社会制度などが極めて重要なものと見なすようになり、文化の共通性によって協調や対立が促される、とするもので、この理論の方が現在の状況をかなり反映しているように見えます。
各民族の文明のすみ分けを示した図。日本も独自の文明圏として示されている。
III. 多様性の受容という胡乱な理屈
歴史は終焉しているのであり、世界はグローバリズムにより統一されると宗教的信念で妄信している者、あるいはその方が「利権的に都合が良い」者にとっては、各民族がアイデンティティとして多用な文化を保持し続けてグローバリズム陣営(主に西側の資本家集団)が「正義」と規定する価値観を受け入れない諸国民は「多様性を受容しない」誤った考えの持ち主と攻撃されます。一方で文化の多様性こそが諸国民のアイデンティティの基であり、グローバリズムが規定する価値観のみを正義とする方が多様性を否定しているという考え方も正しいのです。これは統一した価値観を受け入れず、諸国民独自の生き方を護ろうとする勢力を分断を煽ると責め立て、極右と表現する風潮にも現れています。この対立は、一極主義と多極主義の対立の図式と相似形であり、現在の趨勢としては経済においても多極主義(BRICSやグローバルサウスの台頭)が一極主義に勝っていると結論付けられます。
IV. トランプの勝利、ウクライナ敗北、ガザ虐殺
トランプ次期大統領が主張する米国第一主義とは、以前から説明するように米国を「グローバリズムの中心」ではなく「多極主義の一極にする」という意味です。だから米国で資本を握るグローバリストが民主党とメディアを金で支配した上で、全力でトランプ復活を阻止していたのです。ウクライナが西欧グローバリズムとロシアを中心としたBRICS多極主義の代理戦争であることは明らかですが、ウクライナの敗北は100%明らかな状況になりました。
イスラエルによるガザの虐殺は「文明の衝突」の反映でありながら、力の原動力がグローバリズムの勝ち組である米国ユダヤ層であることが問題を複雑にしています。「歴史の終焉」信奉者としては「ユダヤ・グローバリスト達が今後落ちぶれることはない」と信じていながら、文明の衝突で虐殺が起こっていることに困惑を隠せない状態なのです。ユダヤ・グローバリストもグローバリズムの終焉とともに落ちぶれる(場合によりイスラエル国家は消滅しえる)のであり、不可避である文明の衝突は諸国民の知恵と協調で調整する工夫が必要なのだという結論に同意すれば、虐殺を止める事も可能になるのです。
V. 1980年代までマル経一本だった日本の大学経済学部
私が大学生であった1980年代は、日本の経済学部は「マルクス主義経済学」を教える場所、という今から考えるとあり得ない後進国ぶりでした。学園祭などに行くと長髪の経済学部の院生や助教達が肩で風を切りながら「いかに社会主義経済が素晴らしいか」を力説していたものでした。防衛医大では一ツ橋出身の近代経済学を是とする教授(経済学会では反主流)に経済学の講義を受けていたので「マル経は若い人には魅力的だが限界がある」と言う説明に納得していました。その後のソ連の崩壊は、日本の経済学部が世界の時流からは周回遅れであったことが実証されました。
現在の日本のメディアでトランプ現象やウクライナ紛争を「グローバリズム」対「多極主義」の視点から解説したものは皆無です。日本のメディアと有識者とされる連中、メディアしか見ない日本の人達が「世界の流れから周回遅れである」状態に気づくのはいつなのでしょうか?
日本独自の年功序列と終身雇用のグローバルスタンダードとは遠い、異形の資本主義だと言われていた。
同じ意味で、最も成功した「社会主義」国の日本だと言われていた。
そして今猛烈に発展しているのは欧米先進国ではなくて、地理的に日本に近い中国韓国や台湾、アセアンなどの東南アジア諸国などで、アメリカや欧州からは遠くて、日本のODAなどで日本企業とも関係が深い。
逆に色々と揉めているのが中南米とか中東などアメリカや欧州に近い国々で、これ等は日本とは関係性が薄い国々
あの実験国家ソ連が社会主義(マルクス経済学)の本家だと思っている人が今でも多いが、異形の資本主義経済の日本の方が元祖社会主義だと解釈すると色々な不思議が簡単に解決する。
農地の売買を禁止した江戸時代と同じ方式が今の中国でこれは世界に例が無い社会主義経済。日本がグローバル資本主義経済に組み入れられた途端に短期間に自営農が大地主と小作農に変化したが、GHQのマッカーサーが農地解放で元に戻すが、これは日本共産党対策ですよ。ソ連が崩壊し日本共産党も弱体化した30年前から、順風満帆だったそれまでとは180度正反対に穏やかに死につつあるのはアメリカがソ連に代わる仮想敵国に日本を指名したと考えると謎が解ける。日本国のような残酷で奇妙なデフレ経済は絶対に資本主義では続かないのです。
資本主義で一番健全なのはソ連に近い北欧なのですが、これは実験国家ソ連の良いとこどりを行って成功したから、
カマラ・ハリスの実父のジャマイカ人経済学者がマルクス経済学の教授なのですが、貧富が絶望的に拡大した社会では共産革命しか処方箋がない。日本の復活には30年前までは大成功していた日本式社会主義の再構築しかないでしょう。
宗純さんのコメントを読んでもそう思いました。
昨日のニュースでは、とんでもない人が長官になったとしか報道されていません。何故民主党から大統領候補になれなかったかを含めて丁寧に報道すれば、グローバル金満ファシズムの全ての問題が明確になってしまうのに。
今日本のメディアはガタガタ震えながら、このままどこまで嘘で誤魔化し続けることが出来るか、戦々恐々状態の様です。ウクライナ報道も同じ。しかし腰が引けて来ているのはわかります。