2022年は2021年に比べて13万人多く日本人が亡くなり、大きな災害や戦争もないのに一体何があったのかが問題となりました。2023年4月3日におけるコロナ陽性の死亡者数累計(コロナによる死者数ではない)は7万4千人であり、2022年の超過死亡数よりもはるかに少ない数です。5類に移行してからはコロナ陽性の死亡者数の発表もなくなりました。厚労省は6月23日に2022年の人口動態統計のまとめを上梓しました。2022年の総死亡者数は1,568,961名で、2021年の1,439,856名よりも129,105名増加しました。最も死者数が増加したのは75歳以上の高齢者で、1,229,484名が死亡、これは前年の1,108,900名よりも120,584名と大幅な増加でした。
また2023年4月までの人口動態統計速報も明らかにされましたので、2022年の日本人の死亡内容はどうであったのかまとめておこうと思います。死因統計は毎年医師国家試験にも出題されるので、大学教員としての仕事の一つでもあります。転載した図については大きさなどから少し解り辛いかも知れませんが、厚労省のサイトから誰でもダウンロードできますので、興味のある方はそちらで御願いします。
I. 全体の概要
これはグラフなどを見た私個人の「まとめの評価」です。全体では死亡数が大幅に増加し、死亡増加の兆候は今年の1月まで継続して次第に収まりつつあります(それでも2021年よりも多いが)。死因はがん、老衰、心疾患が増加し、亡くなる年齢は高齢者ほど増加の傾向がありました。若い特定の年齢の人が多くなくなる傾向はないと思います。
II. 超過死亡
今年の4月までの死亡者数を追加したグラフを載せます。グラフで明らかな様に、2022年1月7月11-23年1月にかけて顕著な死亡者数の増加があり、自然に起きた変化では100%ない何かが影響したと断言できます。死亡者の増加は幸い今年の4月には落ち着いてきている事が解ります。毎月自分の病院で確認している、心肺停止で搬送される救急患者を含めた死亡者数が1月頃に比べて減少していることも実感としてあります。
昭和22年からの死亡者数統計では、人口千対においてはまだ少ないものの、死亡者数の絶対値においては戦後最大数の死亡者で、前年に対する増加も最大であったことが解ります。幸いなことに15-64歳の生産年齢の死亡者数は伸びておらず、主に75歳以上の高齢者の死亡が増加したことが解ります。
III. 死因統計
図を見て明らかな様に、がんによる死亡は増加し続けていますが、2010年頃からの心疾患(ほぼ心不全)と老衰(これも大きくは心不全)の増加が目立ちます。
増加し続けるがんですが、男性は肺、大腸、膵癌が増加、女性は大腸、肺、膵、乳がんが増加しています。罹患率としては、男性については私の専門である前立腺癌が一位ですが、死なない癌なので死因統計の上位には出ません。
IV. 年齢別統計
年齢別死亡者を5齢毎にまとめて、2019年から22年までを比較したグラフを載せますが、超過死亡が月によって大きく変わっても、亡くなる人の年齢層は高齢者ほど亡くなると言う傾向自体は変化がない事が解ります。
年齢階級別に見た死因の構成割合を示します。大きくは例年と変わらないものと思います。 若い人の自殺が目立つのは残念ですが、(III)の死因統計と同じ結論と言えます。
日本、世界の超過死亡と、新型コロナ感染症、ワクチンとの関係について以前考察しましたが、月によって死亡者数が大きく変動すること、変動とコロナ感染症の流行、ワクチン投与率が関連していそうなことが超過死亡増加解明の手掛かりになると考えます。未だ明確な因果関係は解りませんが、すぐに結果が現れない統計もあり、今後も注視してゆきたいと考えています。