同極磁石。

2010-09-28 23:57:04 | 自ら援くる者以外はその在るを神も認めず。
母の姉は本と映画が好きだと言った。妹は   何も好きではなかった。

残された膨大な下着や服のあいまにわずかな本。ひとり場違いじみた文庫が中原中也詩集で、まるで世の中がくちずさんできたかのような数篇も挟まれる。

キャッチーなくちずさみに乗りやすい面もあった母が手に入れ遺した文庫は私を拒絶した。母のように。思うに母は私のように唯捲っただけに相違ない(としか思えない)。

母はどこまでも孤独だったとは今さら言うまでもないが、誰よりもそうだったというわけではない。誰のことも好きではなかったし、自分が孤独だとも思ってはいなかった。

誰も母のことを知らない。それはあるいみすごいことだと思う。そんなことを思うのはおまえだけだと誰かに言ってほしいと思うこころが私になければ、とっくにそんけいしていただろう。
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