マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

フリーダム・ライターズ

2007年07月01日 | 映画
 生徒と先生の交流を描いた映画で、最も感動した映画が過去、現代に4本ある。

 シドニー・ポワチエ主演の「いつも心に太陽を」(67年)、ピーター・オトュール主演の「チップス先生、さようなら」(69年)、ジャック・ブラック主演の「スクール・オブ・ロック」(04年)、ジェラール・ジュニョ主演の「コーラス」(05)である。


 この4本の製作された年が、60年代末期とここ数年の現代の作品と、真っ二つに分けることができることも、今気がついた。「いつも心に太陽を」「チップス先生、さようなら」から、「スクール・オブ・ロック」「コーラス」まで、なんと、約40年間ものブランクがあるではないか!

 そして、ここに5作目の名作が仲間入りした。ヒラリー・スワンク主演の「フリーダム・ライターズ」である。

 これは、「いつも心に太陽を」に近い作品である。シドニー・ポワチエ扮する黒人教師が、白人だけが通うハイスクールに赴任する。当時の黒人教師がどういう差別を受けていたか、推して知るべしである。しかし、ポワチエはひたすら愛という武器で、生徒たちの心を掴んでいくのだ。この作品がアメリカの黒人差別が激烈化した時代に作られたことも感慨深く、意味深い。

 「フリーダム・ライターズ」もまた、背景は違えども、94年のロス暴動直後のロサンゼルス郊外のハイスクールが舞台になっている。人種が激しく対立する高校に新任の英語教師・エリン(ヒラリー・スワンク)が赴任してくる。

 この高校では、肌の色が「浅黒いか、黄色か、黒いか」で徒党が組まれ、その闘争、抗争たるものは筆舌に尽くし難い。学校に行って、一日でも無事に生きて帰れれば、それだけでめっけもんというくらい、クラスは荒廃し、暴動が止まない。

 こんな凄まじい教育現場で、エリンが思いつくのが日記帳である。生徒たちに日記帳を渡し、いつでも好きなことを書き、書きたくない時には書かなくてもいい、そんなリベラルなホームワークを与える。

 この日記帳に書かれた生徒たちの文章が画面に露見された瞬間に、絶望的だったこの映画に希望の鐘が鳴り始まる。生徒たちの家庭や社会で置かれた生々しい、痛々しい肉声の一語一語に、未熟な熱血教師エリンは、強く心を打たれる。荒んだこの生徒たちに、「今一番必要な教育は何か?」と自問した時、「これだ!」と閃くのである。

 その鍵は「ホロコースト」と「アンネの日記」にあるのだ。

 その展開は伏せておくが、「人は書くことで救われ、解放される」という哲学がこの映画の核となって強く迫ってくる。エリンという女教師が単なる熱血先生だけでなく、夫や父親との確執に悩む普通の女性として描かれている点も興味深い。その繊細な若い女性教師の心の葛藤や揺れをヒラリー・スワンクが実に人間的に上手く演じきっている。

 そして、ラストは見事。クレジットに流れる生徒たちの卒業後の人生が分かった瞬間、「フリーダム・ライターズ」という映画を2度味わうことになる。本編さながら、2度目のこの大きな感動こそ、もしかしたら、事実に基いたこの作品が真に訴え、描きたかった世界なのかもしれない。


公式サイト http://www.fw-movie.jp/

監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
主演 ヒラリー・スワンク パトリック・デンブシー マリオ
公開 7月21日 シャンテシネ他全国ロードショー
配給 UIP
2007年 アメリカ映画