マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

「チェ28歳の革命」「チェ39歳別れの手紙」

2008年11月06日 | 映画
エルネストという名前を聞いてもピンと来ない。「チェ」という響きなら、誰もがあのキューバに平和と平等をもたらした革命家ゲバラの顔が鮮明に浮き上がるだろう。

今年度、カンヌ国際映画祭でゲバラを演じたベニチオ・デル・トロが主演男優賞に輝いた待望の「チェ28歳の革命」「チェ39歳別れの手紙」が来春公開される。

私がゲバラに興味を持ったきっかけは、大先輩の作家・戸井十月さんのおかげである。

『ロシナンテの肋 ~チェ・ゲバラの遥かな旅』(集英社) 『カストロ、銅像なき権力者』(新潮社) 『チェ・ゲバラの遥かな旅』(集英社文庫) 『遙かなるゲバラの大地』(新潮社) と、キューバ革命におけるゲバラとカストロについての戸井十月さんのご著書は全て拝読してあったので、この試写を見た時に、ゲバラの世界にすんなりと入っていくことができた。

戸井さんは数年前にキューバに赴き、現在のカストロご本人とも会っている。直接そのエピソードも伺っていたので、なおさらである。

もちろん、プレス原稿「永遠の旅人・ゲバラ」は戸井さんご本人がお書きになっている。当たり前である。戸井十月さんなくして、誰がゲバラを語れようか。

哲学者ジャン・ポール・サルトルは「20世紀で最も完璧な人間」と言った。
ジョン・レノンは「あの頃、世界で一番かっこいい男だった」と言った。そして、今年アルゼンチンのサッカーチームの監督になった、紆余曲折の人生の人、天才サッカープレイヤーだったマラドーナは、自分の体に崇拝するゲバラのタトゥをしているという。

アルゼンチンの裕福な医者の子供として生まれたゲバラが、南米をバイクで旅し、アメリカの裏側である南米の悲惨な状況に遭遇し、後のキューバ革命の原動力となった傑作『モーターサイクルダイアリーズ』が、ゲバラの人生の序章ならば、今回の「チェ28歳の革命」「チェ39歳別れの手紙」は、ゲバラの人生の全てを綿密に描ききっている。

それぞれの上映時間は2時間15分。2作連続すると4時間30分の超大作であるが、スクリーンに展開するゲバラの生き様を追っているうちに、一気に時間がたってしまう。

ゲバラが28歳で革命を起こした時、私は人妻になった。ゲバラが39歳でボリビアで崇高な死を迎えた時、私は二人の小さな子供の母親だった。

ゲバラの人生に比べたら、私の人生など米粒一つみたいな小さなものに過ぎない。が、しかし、ゲバラは時空を超えて、少し老いて少し弱気になっている私に、「自分の理想に向かって生き続けること、人生は永遠の旅であること」を改めて教えてくれたのだ。


素晴らしい魅力の作品だ。


「チェ28歳の革命」「チェ39歳別れの手紙」公式サイト


【監督】スティーヴン・ソダーバーグ
【出演】ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ジュリア・オーモンド

2009年新春公開。日劇PLEXほかにて公開