『許されざる者』
熟年世代の誰もが、このタイトルで思い出すのが、クリント・イーストウッド監督主演の『許されざる者』(1992)『Unforgiven』だろう。
日本でそれをリメイクする?いったいどんな話になるのだろうか?イーストウッド監督はアメリカ西部劇の極意を描いた。日本では、どの時代を舞台にして、どんな人間を主役にするのだろうか?
あまりにも崇高な作品のリメイクは危険な企みである。例を上げるなら、「華麗なる賭け」「太陽がいっぱい」という名作をリメイクしたが、悲しいかなオリジナルを超えることができなかった。『華麗なる賭け』では、スティーブ・マックイーンに勝る俳優はいない。そして、『太陽がいっぱい』では、誰がアラン・ドロンを抜くことができようか!
そのくらい『許されざる者』では、クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマン、ジーン・ハックマンの存在感が強い。
しかし。
さすがに、世界のケン・ワタナベ。見事にクリント・イーストウッドを演じてくれました。悪役保安官になったジーン・ハックマンを佐藤浩市が見事に演じてくれました。イーストウッドの竹馬の友モーガン・フリーマンを柄本明が見事に演じてくれました。
時代設定が明治維新の北海道というのも違和感がなく、維新の影に隠れたアイヌ問題にメスを入れ、女郎たちの運命の悲しさを鮮明に描き、私は、アメリカ版よりも優れているのではないかと思った。
『フラガール』『悪人』という名作を撮った李相日監督。39歳という若さで、イーストウッド監督の哲学を見事に踏襲し、李相日版オリジナルの斬新な『許されざる者』を作り上げてくれた。
9月13日から公開
【監督】李相日
【出演】渡辺 謙 佐藤浩市 柄本明 柳楽優弥 小池栄子