子供だましの茶番だった『バットマン』シリーズに、大人のテイストと深い犯罪心理のエッセンスを加え、素晴らしい作品に甦らせたのが、『バットマンビギンズ』でメガホンを撮ったクリストファー・ノーラン監督だ。
『バットマンビギンズ』のインパクトは今でも傑作として、強く心に残っている。そして、その続編がやっと出来上がった。『ダークナイト』である。
スタッフもキャストもほとんど変わっていない。
ブルース・ウェイン(バットマン)はクリスチャン・ベール、執事のアルフレッドは超渋いマイケル・ケイン、ウェイン社の社長でバットマンの秘密兵器のシンクタンクをまたまた、超渋いモーガン・フリーマンが演じている。
そして、警部補ジム・ゴードンには同じくゲイリー・オールドマンが。ゲイリー・オールドマンが世界一好きな私なので、ゲイリーが画面に出てきただけで興奮してしまう。どちらかというと彼はイカレた悪役がお似合いなのだが、このシリーズでは家族を愛する正義感の強い警部補を演じている。これが、またたまらない魅力なのだ。
「ヒーローとして死ぬべきか、極悪卑劣な悪党として生き残るべきか」がこの作品のキーワードである。
舞台も悪党ジョーカーが蔓延るゴッサムシティ。ジョーカーと言えば、1作目であのジャック・ニコルソンが演じていた。ジャックのジョーカーはどこかコミカルなキャラであったが、今回のヒース・レジャーが演じるジョーカーは、無機質で冷酷で、まるで人間殺人兵器のように悪事の限りを尽くしている。この恐ろしさと薄気味悪さは、ジャック・ニコルソンを超えたと言っても過言でない。
ヒース・レジャーは今年の1月に自宅で変死した。28歳だった。『ブロークバックマウンテン』のあの屈折したホモ男の体当たりの演技も忘れらない。ジョニー・デップとは違った異色の演技派であったので、これからだという時に亡くなってしまった。『スタンドバイミー』で主役を演じたリバー・フェニックスの若い死と同じくらい残念だ。
『ダークナイト』の後にテリー・ギリアム監督の『 パルナッサス博士の想像力』(The Imaginarium of Doctor Parnassus)にも出演し、その撮影中に亡くなってしまったのも、実に惜しい。
まさに、死を覚悟で挑んだと言ってもいいくらい、おどおどろしく、残忍な破壊屋ジョーカーに成りきっていた。
主役はバットマンではなく、今回に限っては、明らかにヒース・レジャーであった。エンドロールで、「ヒース・レジャーに捧げる」というクレジットが流れた瞬間、泣けてきた。
ダークナイト公式サイト
【監督】 リストファー・ノーラン
【出演】クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン
2008年8月9日より丸の内プラゼールほか全国にて公開
2007,アメリカ,ワーナー配給
コメントありがとうございます!
うれしいです!おっしゃるように『バットマンビギンズ』から文学性を帯びてきましたね。
朱鷺さんの文学性を帯びてきたという表現に敬服しております。
今回の『ダークナイト』にも、文学性が流れていると思いますよ。
是非、ご覧になってね。
コメントありがとうございます!
おっしゃるように、ヒース・レジャーは『ダークナイト』で助演男優賞の声が出ていますね。
私はヒースが取ると思っています。ハリウッドは、初めて死者の怪演に敬意を表し、オスカーを天国へと届けるでしょう。
そう信じています!!!またそうあって欲しいです!!!!
76年、アメリカのテレビ局内の矛盾や汚職を描いた「ネットワーク」という作品で、ピーター・フィンチが、死後にアカデミー助演男優賞を受賞しています。
そういえば、ピーター・フィンチの怪演は見事でした。すっかり忘れていました。訂正いたします。