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大阪ガス、脱炭素メタン調達に1000億円 米国に製造拠点

2024-11-30 19:23:09 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


大ガスは米国のLNG基地を経由してeメタンを調達する方針だ(米南部テキサス州)

 

大阪ガスは脱炭素に向けた次世代の都市ガスとされる「eメタン」の調達網を構築する。原料の水素を国内より割安に確保できる米国で約1000億円を投じて製造設備などを整備し、既存のインフラを使い輸入する。

2030年に国内導入目標の6割超にあたるeメタンを確保する。

 

eメタンは水素と二酸化炭素(CO2)を合成してつくる。工場などから回収したCO2を使えば都市ガスとして燃焼した際に出るCO2と相殺され、排出量は実質ゼロとなる。

政府は30年に国内で消費する都市ガスの1%を、50年には90%をeメタンに置き換える目標を掲げる。

 

大ガスは米中西部ネブラスカ州か西部ワイオミング州にeメタンを製造するプラントを建設する。30年までに最大で年間20万トンを日本に輸入する計画だ。

 

東京ガス東邦ガスも米南部ルイジアナ州からのeメタンの調達計画を進める。都市ガス各社はオーストラリアや中東、南米などからの調達も検討している。24年度内に大ガスは国内勢で初めて事業の基本設計に入る。

現在の都市ガスの原料である液化天然ガス(LNG)とeメタンは成分が同じで、既存の輸送インフラが使える。

 

大ガスは米国で製造したeメタンを同社が出資する南部テキサス州のLNG基地にパイプラインで送り、LNG船で大阪府や兵庫県内の都市ガス供給拠点まで輸送する。

eメタンの価格はLNGの5倍程度とされ、普及には製造コストの低減が欠かせない。特に原料となる水素を再生可能エネルギー由来の電力を使って水の電気分解によってつくる場合には費用がかさみやすい。

 

大ガスが米国に建設するプラントでは天然ガスを改質する手法によって割安な水素を確保する。米企業と組み、製造時に排出するCO2は回収して地下に貯留する。

割高な再エネ電力の利用を避け、eメタンの調達コストを従来のLNGと同等の水準まで近づけたい考えだ。

 

都市ガスは水素で代替する案もあるが、全国に張り巡らされたガス管などの設備更新にコストがかかり、船での運搬も容易でない。既存のインフラを生かせるeメタンの確保に向けた投資は広がりそうだ。

 

 
 
 
 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

高橋徹のアバター
高橋徹
日本経済新聞社 上級論説委員・編集委員
 
分析・考察

日本のガス業界はeメタンを都市ガスの脱炭素化の切り札に位置づけています。

2030年から導入するには、そろそろ投資判断すべき時期に差し掛かってきます。

 

ただ安価で低炭素なLNGが世界的に再評価され、脱炭素までの「移行期」は意外に長くなるのではとみられています。

化石燃料を掘りまくれ、を政策に掲げるトランプ次期米政権下では、天然ガスの供給が増え、LNGとeメタンの価格差はさらに開く可能性があります。こ

 

の記事によれば、原料の水素はわざわざ天然ガスから改質し、別途確保するCO2と合成するようですが、それだと単純に天然ガスをLNG化するよりコストと手間がかかるだけ?のような気もするのですが...。

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日経記事2024.11.30より引用
 
 
 
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EV電池リサイクル始動 住友金属鉱山は日本で精製施設

2024-11-28 21:13:25 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、

電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)で使ったリチウムイオン電池を再利用する動きが日本で始まった。

住友金属鉱山や日本化学産業は2030年までに拠点を設け、ニッケルなどの使用済み金属を精製して新車向けに納める。資源に乏しい日本は電池向け金属の確保が喫緊の課題だ。希少金属の海外流出を防ぐ。

 

 

電池部材を手がける日化産は30年までに200億円を投じ、EVやHVの使用済み電池を破砕してできる黒い粉「ブラックマス」を再生する拠点を国内に設立する。

電池の主要部材の一つである「正極材」に使う金属だけを薬品で分離させて抽出する。精製した金属は、国内の正極材メーカー向けに供給する。

 

 

月にEV5000台分を処理

新拠点では月当たりEV5000〜6000台分のブラックマスを処理する。本格展開に向けて、26年にも福島県で実証棟(パイロットプラント)を稼働させる。

抽出した金属をどれだけ再利用できるかなどを調べて、本格運用につなげる。鉱物由来の電池材料と同等以下の価格での供給を目指す。

 

日産自動車のEV「リーフ」は10年に発売された。10年代に発売されたEVの第1世代は30年ごろに廃車を迎えるとされる。現状は国内に再生網が十分に整っていない。

 

 

日本で流通する多くのEV電池はニッケル、コバルト、マンガンなどの原料を使う。

これらの金属は東南アジアやアフリカが産出地で、日本国内では調達できない。海外に流出すれば大きな痛手になる。

 

EVの普及が進む中国では、寧徳時代新能源科技(CATL)などの民間企業が金属の処理や精製といった技術で先行する。

日化産の角谷博樹社長は「ブラックマスを正極材材料に精製できなければ、電池材料が中国などに流出しかねない」と危機感を口にする。

 

EV電池をリサイクルする市場の拡大余地は大きい。日本総合研究所によれば足元の国内市場はゼロだが、40年までに1000億円以上に成長する見通しだ。

ガソリン車からEVへの乗り換えが進み、EVが増加すれば不要になる電池も増える。電池を破砕してブラックマスの増加が見込まれる。

 

 

EV電池メーカーに金属の再生を求める規制の動きが出ていることも後押しする。欧州連合(EU)では31年までに、電池に使う金属ごとに一定の割合で再生材の使用を義務付ける。

例えばコバルトは16%、リチウムは6%以上を使用済み電池から抽出する再生材で賄う必要がある。韓国でも7月、政府がEV向けを中心とした使用済み電池の再利用を促進する方針を示した。

 

国内大手も投資を積極化している。正極材メーカーの住友鉱は26年中にブラックマスからニッケルとコバルトを抽出する事業を始める。

愛媛県にある拠点の敷地内に設備を新設し、精製して自社生産する正極材材料に使う。

 

EV電池のもう一つの主要部材である「電解液」に使う電解質の再生にも取り組む。

住友鉱がブラックマスを精製する工程で出たリチウム資源を、材料メーカーの関東電化工業に供給。電解質を精錬し、電解液メーカーに販売する。

 

三菱マテリアルは25年にも、ブラックマスから正極材材料を抽出する実証棟を約20億円を投じて稼働させる。

数年内に追加投資し、数千トンのブラックマスを処理できるリサイクル設備の構築を視野に入れる。

 

 

 

 

市場拡大に向けて、異業種が協力する枠組みも相次いで立ち上がる。「グリーンEVバッテリーネットワーク福岡(GBNet福岡)」が7月、福岡県で発足した。

トヨタ自動車九州や、AESCジャパンなどの電池メーカー、住友鉱などの電池部材メーカー、環境省などで構成。EVの新品の販売から摩耗した電池の再利用、金属を抽出して新品向けに供給する再生網のモデルケースをつくる。

 

10月にはNTTドコモや三井住友フィナンシャルグループなどが参加する「EV電池スマートユース協議会」が発足。EV電池の再利用のための法整備や電池の診断基準確立を進める。

 

 

 

電池回収網に課題

使用済み電池から金属を抽出する仕組みはできつつあるが、電池の回収ルートの構築は課題だ。「電池の回収量が慢性的に足りない」。

日産と住友商事の共同出資会社、フォーアールエナジー(横浜市)の堀江裕社長は指摘する。フォーアールエナジーは福島県浪江町にEV向け電池の再利用拠点を持つ。

 

同社は廃棄されたEVの車載電池を回収し、災害用の蓄電池などに再利用する事業を手掛ける。中古EVの多くが海外に輸出され、日本国内で電池を十分に回収できなくなれば、事業の根幹が揺らぎかねない。

「(電池を確保するために)独自にやれる対策を講じてきた。それでもEV流出が続くと電池の調達コストが上がってしまう」(堀江社長)。

 

EV電池のリサイクルを進めるには、日本国内で中古EVを流通促進する施策も必要と説く。自社では調達網拡大へHVの電池の活用を検討する。

EV電池の循環産業は自動車や電池メーカーにとどまらず多くの事業分野に影響する。金属の流出を食い止める供給網づくりが急務だ。

(郭秀嘉、落合修平)

 

 
 
 
 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
 
ひとこと解説

欧州連合(EU)は域内で流通する電池についての規制を決め、段階的に施行していきます。

2031年8月以降は電池に使う鉛85%、コバルト16%、リチウム6%、ニッケル6%についてリサイクル材を使うことを義務化、36年にはさらにリサイクル比率が引き上げられます。

決められた比率以上のリサイクル金属を使った電池ではないとEUで販売ができなくなります。 バイオ燃料の利用や原料(森林破壊につながらない)規制もそうですが、欧州で先行する規制が市場の変化を後押ししている側面があります。

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日経記事2024.11.28より引用
 
 
 
 

ウラン価格に上昇圧力 ロシア、米に「濃縮」の輸出制限

2024-11-27 22:06:29 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、

原子力発電の燃料となるウランの国際価格に再び上昇圧力が強まってきた。ロシアが濃縮ウランの対米輸出の一時制限に踏み切ったことがきっかけだ。

人工知能(AI)など電力を大量消費する技術の普及などを背景に原発が再注目され、需要が高まりつつあることも重なり、需給逼迫のリスクが意識されている。

 

ロシア政府は15日、公式ホームページ上で濃縮ウランの米国への輸出に一時的な制限を導入したと公表した。

「米国が導入したロシア産のウランの輸入禁止法に対抗しプーチン大統領の指示で実施された」とした。プーチン大統領は9月にニッケルやチタンと共にウランの輸出制限の可能性に初めて言及していた。

 

 

ウラン調査会社のUxCによると、指標となる「ウラン精鉱」のスポット(随時契約)価格は11月15日に一時1ポンド83ドルと週初比で8%上昇した。

米国はロシア産ウランの輸入禁止法を5月に成立させ、8月から発効していた。もっともロシアは濃縮ウランの生産能力で世界シェアの約4割を握り、即時発効は米国内の原子力産業に悪影響を及ぼしかねない。

 

23年12月の米国下院報告書によると米国は濃縮ウランの20%以上をロシアからの輸入に頼る。

そこで米国は28年1月まで猶予期間を設け、特別に輸入を許可。猶予期間中に濃縮ウランの「脱ロシア」を進める計画だった。

 


 

ロイター通信によると、ロシア国営の原子力企業のロスアトムは18日、全ての顧客に通常通りウランを供給しており、米国への供給は特別な免除措置を受けた上で、引き続き行われる可能性があると表明した。

ただロシア当局による免除措置が続くかは不透明感が強い。

 

米国のウラン濃縮サービス企業のセントラス・エナジーは18日、米国証券取引委員会(SEC)に対し、濃縮ウランの供給元であるロスアトム子会社が「ロシア当局からの輸出許可を取り消され、許可を再取得する必要が生じた」とする臨時報告書を出した。

セントラスは米国だけでなく、日本も含めた海外の需要家向けにもロシア産の濃縮ウランを再輸出している。

 

UxCのジョナサン・ヒンズ社長は「セントラスがロシアと米国の両方の免除措置を得ることができなければ、将来の引き渡しができなくなる。

ロシアから米国への供給が大幅に減少すれば、短期的に供給不足が生じることは確実で価格上昇圧力がかかる」と指摘する。

 

一部の米国の電力会社は、ロシア以外からの供給に頼る可能性があり、市場の需給に影響を与えやすい。

ウラン精鉱のスポット価格はロシアが輸出制限を公表した直後に急騰した後、25日時点では77ドル台に戻した。

 

年初に1ポンド106ドルと07年以来の高値に上昇した時点からは2割程度低く、市場は落ち着いているようにも見える。

ただ、ウラン市場の指標である精鉱以外の価格に目を向けると様相が大きく異なる。

 

ウランは原発で使われるまでに化合物への転換や濃縮といった工程をたどる。

転換(六フッ化ウラン)や濃縮ウランは精鉱よりもロシア産のシェアが高い。転換はウクライナ戦争開始直前の22年初比で5.4倍、濃縮は3.1倍と精鉱(1.8倍)に比べ大きく上昇している。

 

 

後工程の価格高騰は最終的に原料のウラン(精鉱)の需要増加につながり、価格を押し上げる可能性がある。

海外電力調査会の鍋島正人上席研究員は「輸出制限が長引けば、スポット価格は年初の1ポンド100ドル超の高値を上回るリスクがある」と警戒する。

 

今回の輸出規制が即座に原発の発電コスト高や燃料不足につながるわけではない。

「燃料費が原発コストに占める割合は約2割と天然ガスや石炭など火力発電の6〜8割と比べて低い」(鍋島氏)ほか、ウラン燃料は一度入れたら頻繁に替える必要がないためだ。

 

電力会社の多くは必要なウラン燃料の調達を長期契約へシフトしている。

ただ長期契約の価格は上昇傾向で、今後スポット価格が急騰すれば長期契約も一段高となる可能性がある。

 

原発は電力需要の拡大のほか気候の影響が少ない安定電源として世界で再評価が進んでいる。

今回のロシアによる規制は米国で原発の再稼働計画が立ち上がりつつあった矢先に起こった。

 

米国はインフレ抑制法(IRA)を通じ米国内の濃縮工場の新設などに27億ドルを拠出する。ロシアへの依存を減らすのが狙いだ。

(浜美佐)

 
 
 

 

 

日経記事2024.11.27より引用

 

 

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夢の「人工原油」2030年にも ENEOS・出光、実用化へ前進

2024-10-29 23:14:26 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、

夢の技術とされる「人工原油」が実用化に向けて一歩前進した。

石油元売り最大手のENEOSホールディングス(5020)が9月、横浜市で再生可能エネルギー由来の水素と回収した二酸化炭素(CO2)からつくる合成燃料の製造実証プラントを稼働させた。

 

環境負荷の低さから注目が集まるが、本格的な普及は2030年代の見通し。高コストの壁を乗り越えるための手探りが続く。

「空気中のCO2で航空機や車を動かす、そんな夢のような技術が手の届くところまで来ている」。9月末にENEOSHDが開いた実証設備の完成式典で、宮田知秀社長は胸を張った。

 

 

合成燃料は、水を再生可能エネルギーの電気で分解した「グリーン水素」とCO2を反応させてつくる。

原料となるCO2と燃やした際に出るCO2を相殺できるとの考え方で、単純に化石燃料を採掘して使用するのに比べてCO2という温暖化ガスの排出量を抑制することができる。環境への負荷を大きく減らせる技術だ。

 


 

 

 

合成燃料は合成ガソリンや合成軽油、合成再生航空燃料(SAF)の総称だ。

常温で液体のため、水素を新たに使うよりも、石油タンクやエンジン車など既存の石油製品のサプライチェーンをそのまま使えるメリットがある。石油元売りだけでなく、自動車業界やガソリンスタンドの経営者からも期待が大きい。

 

ENEOSの式典には自民党の甘利明氏も出席。甘利氏は「カーボンニュートラルのための国産バイオ燃料・合成燃料を推進する議員連盟」の会長を務める立場だ。

ENEOSが中央技術研究所(横浜市)で稼働させた設備の生産能力は1日1バレル。敷地内には水を電気分解する装置のほか、大気中からCO2を回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」の機器も設けた。足りない分のCO2や再生エネ由来の電気は外部から買って調達する。

 

同じ拠点で原料から合成燃料を生産するのは国内で初めてだという。具体的には、まず特殊な装置を使って水素とCO2を一酸化炭素と水素の混合ガスに変換する。

その後「FT合成」という製法で、液体炭化水素の一種で原油に近い成分の「合成粗油」を生み出す。

 

不純物を含む原油が黒いのに対し、合成粗油は白色だ。これがあらゆる石油製品のもとになる。合成粗油を炭素数の多寡に応じて分類・精製していくと、ガソリンやジェット燃料、軽油ができる仕組みだ。

実証でつくった合成燃料は25年4月に開幕する国際博覧会(大阪・関西万博)の関連車両で使われる予定だ。新技術を世界にも発信する。

 

 

ENEOSは今回の実証を通じて設備の性能を高めるほか、より大規模で効率的に生産するための課題を検証する。「コストをどうしたら下げられるのか、徹底的に追求したい」(宮田社長)という。

 

 


原油に近い合成粗油をつくったうえで、さまざまな製品に分ける

 

27〜28年度にも1日あたり300バレルの本格的な実証を始める計画で、40年までには同1万バレルでの商業生産を目指す。ただ、現時点で生産地点は明らかにしていない。

元売り業界では合成燃料への種まきが着々と進む。2位の出光興産(5019)は24年、合成粗油と並んで合成燃料のもとになる「合成メタノール」の事業化を目指す米HIF Global(ヒフグローバル)に約177億円を出資した。

 

ヒフは28年頃に生産を始め、30年には年間400万トンの規模にする計画を持つ。世界的に見ても合成燃料で先駆的なプレーヤーだ。

合成燃料を作るために使う再生エネの適地が豊富なチリやオーストラリア、ウルグアイ、米国での生産を検討している。日本政府もエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて約53億円を出資した。

 

出光は29年までにヒフから合成メタノールの購入を始め、世界で年間20万トンを供給できるようにする。「まずは船舶燃料としての需要を開拓する。

日本国内では合成ガソリンの普及を加速する規制がない。自発的な取り組みとして自動車メーカーと広げたい」(大沼安志バイオ・合成燃料事業課長)

 

出光は既にヒフに取締役を派遣している。合成燃料の製造に関する知見を取りこむことで、30年には北海道で年間8万トンの合成メタノールを自前でつくる計画だ。

調査会社の富士経済(東京・中央)によると、世界の合成燃料の市場規模は2050年に62兆5950億円に達する見通し。欧州連合(EU)は35年以降、合成燃料を使う場合に限ってエンジン車の販売を認めるという。規制によって需要が一気に伸びる可能性が高まっている。

 

資源エネルギー庁によると、合成燃料の製造コストは1リットルあたり300〜700円ほど。既存のガソリンや航空燃料に比べて大幅に高い。

グリーン水素の製造に必要な再生エネの高さが最大のネックだ。ENEOSも「合成燃料の製造技術自体より、原料コストを下げるのが難しい」(早坂和章・サステナブル技術研究所長)と認める。

 

国内では大規模な再生エネの適地が限られる。海外で安くつくったグリーン水素を輸入するのが本命だ。

ENEOSや出光興産はまず用途を広げて流通量を増やし、規模の経済を働かせてコストを抑える考え。5月には両社のほかトヨタ自動車(7203)、三菱重工業(7011)が合成燃料の導入に向けて協力すると発表した。

 

期待が高まる一方で、実際にビジネスを成立させるのは容易ではない。洋上風力の世界最大手、デンマークのオーステッドは8月、スウェーデンで進めていた合成メタノール工場の建設を断念すると発表。

年間で約5万5000トンを作れる設備で、建設中の工場としては欧州最大級とされていた。採算性が悪いと判断したもようだ。

 

デロイトトーマツグループの川村淳貴シニアマネジャーは「合成燃料の採算には課題が多い。CO2の削減分をどうカウントするのか世界共通のルールも定まっていない」と指摘する。

エネルギー会社は脱炭素への移行に対し、既存のインフラをなるべく生かすことを重視する。構築・保守してきたインフラを次代にも生かすことが現実解だとの自負もある。

 

出力が不安定な再生エネ電気の利用を進めるだけでは、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)の達成は難しい。グリーン水素や合成燃料を組み合わせたエネルギー源の多様化は日本の重要課題だ。

世論の理解を得て公的な支援も獲得しながら、採算に乗せる地道な努力が求められる。

(河野真央)

[日経ヴェリタス2024年10月27日号]

 

 

 

 

 
 
 
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日経記事2024.10.29より引用

 

 

 

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米国、次世代地熱発電に脚光 三菱重工など日本勢も商機

2024-10-19 19:19:19 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


米西部ユタ州でファーボ・エナジーが開発する地熱発電所(同社提供)

 

 

【ヒューストン=花房良祐】

米国で次世代の地熱発電技術に注目が集まっている。

温暖化ガスを排出しない安定電源としてバイデン政権も支援する。三菱重工業は地熱発電開発の新興企業に出資しタービンを供給。非鉄金属の大同特殊鋼は地熱発電専用の鋼管部品を開発するなど日本企業も商機を見いだしている。

 

米国は次世代の地熱発電「地熱増産システム(EGS)」の実用化を目指している。地熱発電は従来、地下の熱水・蒸気を掘り出して蒸気タービンで発電していたが、安定的に発電できる適地が少ない。

EGSは従来より2〜3倍深い地層の高温の岩盤を水圧破砕して水を注入。地熱を利用して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電する。

 

三菱重工は2月、米ヒューストンを拠点とする地熱発電スタートアップのファーボ・エナジーに少額出資した。

ファーボはシェール開発の掘削技術を応用し、従来は開発できなかった地域で地熱発電を実施する。

 

垂直に約3000メートル、地中を水平に約1500メートル掘削する。このため、地下深くに眠る熱の貯留層にたどり着きやすい。

従来の地熱発電は垂直に1000〜1500メートル掘っていた。

 

ティム・ラティマー共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞に「新技術で米国の地熱発電の開発余地は100倍になる」と話す。

ラティマー氏はじめ同社社員の半分以上はシェール業界の出身だ。

 

従来型の地熱発電は現在、米国で約400万キロワットある。新技術を使えば約3億キロワットの開発が可能になるという。

地熱は太陽光・風力のように発電量が天候に左右されず、ベースロード(基幹電源)のように安定的に発電できる。

 

バイデン政権は米国の家庭6500万軒に供給できる潜在力があるとみる。石油業界も既存の開発技術が応用できるため注目している。

ファーボの想定発電コストは1キロワット時あたり10セントという。米国の太陽光発電と比べると8割高いが、原子力発電所より1割安い。米国政府はEGSの発電コストを35年まで4.5セントに低下させることを目標に掲げる。

 

米西部ユタ州では大型原子炉1機の4割に相当する出力40万キロワットの発電所を開発中。初めての新設案件だ。

まず10万キロワット分を26年に稼働させ、三菱重工グループの発電タービン3基を導入する。残り30万キロワットを28年に稼働させる計画。

 

西部ネバダ州では地元電力を介して米グーグルのデータセンターに電力を供給する。出力11万5000キロワットで、25年にも掘削を開始する。

ラティマー氏は「日本や東南アジアでの展開を三菱重工と協議している。30年代には米国外の発電所を稼働させたい」と海外展開にも意欲を示す。

 

ファーボにはこれまで米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やシェール開発会社のデボン・エナジーなどが4億ドル(約600億円)を出資した。

素材メーカーも商機を狙う。大同特殊鋼は米シェブロンと地熱発電専用の鋼管部品を開発し、米国に投入する。

 

同社はこれまでシェール用の鋼管部品を供給してきたが、従来より深い地層を掘ると硫化水素の濃度が高く金属が腐食しやすい。新素材の合金を開発し高温下の耐食性と強度を高める。

22年度に研究を本格開始し、24年度までの3年間で研究開発費は計約1億800万円となる見込み。日本財団が一部を支援する。

 

 

25年5月までに試作品を製造し、27年にも日本の国内工場で大量生産する計画。地熱発電に関心を示すシェブロンなど石油会社への販売を目指す。