2002年3月14日、ウォルマート・ストアーズ(以下、ウォルマート:S・ロブソン・ウォルトン会長)社が住友商事の仲介によって、スーパーの西友(木内政雄社長)へ資本参加し、念願の日本進出を図ることになったと報じられました。
このニュースに接した日本のあるr通通関係者は、「ついに・・・」と絶句しました。 これによって、日本のスーパーマーケット・ストア業界は、イトーヨーカ堂(IY)グループ、イオン(ジャスコ)グループ、そしてウォルマート・西友・住友商事グループの三大系列に分かれることになり、小売りの戦国時代は一段と複雑さを増すことになりました。
この提携話は、その前年秋から密かに検討が重ねられたもので、ウォルマート社は段階的に出資比率を下げ、2007年までに最大66%の出資とし、この間に共同で新店舗の開発や商品調達、IT活用による業務近代化などを行うことが決められました。
こうしたウォルマートの動きは、単に流通業界ばかりでなく、世界の産業全体に与えるインパクトも大きいものがありました。
その理由の第一は、わずか創業40年のウォルマート社が、2001年度の総売上高2198億ドル(約29兆円)を上げ、エクソン・モービル社(石油)ゼネラル・モーターズ社(自動車)といった、いわゆるアメリカの伝統的な名門大企業を抜き去り、売上高で首位に立ったからであります。
アメリカで首位ということは、事実上の世界一。
つまり、ウォルマート社の台頭は、時代の潮流の変化を示す象徴的な出来事だったのです。
その第二は、『フォーブス』誌恒例の「世界長者番付」によれば、そのトップテンに、ロブソンやジョンなど5人のウォルトン一族が名を連ねていることであります。
第一位はビル・ゲイツ、マイクロソフト社会長で、その資産額は528億ドル(約7兆円)にのぼりますが、ウォルトン一族5人を単純に合計すると1000億ドル以上になります。
この資産額は、エクソン・モービル社のルーツである旧スタンダードオイル社を興したロックフェラー一族(約200人、85億ドル)よりも大きいのです。
きめ細かい店舗展開と運営で流通王に
このウォルマート社を起業したのは、1992年に74歳で死去したサミュエル・ムーア・ウォルトンであります。
彼のとった戦略は、他の大手スーパーと競合しない人口1万5000人前後の郊外の小都市を狙った出店立地作戦でした。「徹底的に中・低所得者層、普通の人たちをターゲットにせよ」というものでした。
もともと彼は、ミズーリ州の大学を苦学して卒業し、就職したのは当時の大手スーパー、J・C・ペニーでした。 彼はここで流通についての基礎を習得し、やがて第二次世界大戦が終わるとアーカンソー州ベントンヴィルに移り、1945年9月、安売りの小さな日用雑貨店を開きました。27歳のときのことです。
そして、1962年7月、弟と共にウォルマート社の原形となるスパーマーケットを軌道に乗せました。
当時の店舗数はわずか16に過ぎませんでしたが、1981年には店舗数330、売上高16億ドルになっていました。
しかし、同年創業のKマート社は、同時期すでに142億ドルの売上高で、全米第二位の小売りチェーンとなっていたから、ウォルマート社の歩みは同業他社と比べて緩やかだったことが分かります。
急成長を始めたのは、1980年代に入ってからであります。 この頃は大都市郊外へ進出する一方で、同業他社を次々に買収するなど、積極t的に多店舗戦略をとりました。 1991年には、Kマート社のみならず、シアーズ社の売上げをも上回り、小売業世界一となりました。
現在は、世界10ケ国に大小およそ4400(うちアメリカに約3250)以上の店舗を展開しています。 事業の発展と並行して、ウォルトン自身の富も増大していき、1984年時点で、すでに資産23億ドルと全米第二位の大富豪となっているのであります。
愛称「ミスター・サム」こと、サミュエル・ムーア・ウォルトンが率いてきたウォルマート社の発展には、いくつかの要因があります。
その第一は、先の郊外小都市を中心とした店舗展開が、当初、南部や中西部のいわゆるサンベルトを中心に行われたことです。 これがアメリカの人口重心の移動、つまり東部から南西部へと人口が移動する流れと合致したのです。
第二は、きめ細かい店舗運営を心掛けたことです。 たとえば、在庫管理にいち早くコンピューターシステムを導入し、毎週金曜日に更新される全店の在庫データは翌朝、徹底的に検討されました。
見直しが必要なアイテムが見つかれば、週明け月曜日の各店オープン時にまでに、配置の変更や価格引き下げなどを実施しました。 いわゆる「エブリデイ・ロー・プライス」(EDLP)戦略の確立です。
その一方で、会員制卸売クラブの「サムズ」を設立し、業態の多角化も進めています。
一口にウォルマートと言いますが、その店舗のスタイルにはディスカウント店、ホームセンター(日用雑貨、加工食品ほか)、大型スーパーマーケットなどがあります。
それらは各地の適正に応じた業態店として位置づけられており、その総称がウォルマートなのであります。現在の流通業に置き換えてみると、それは巨大な総合小売業という形態になります。
第三点目は、「ミスター・サム」と呼ばれた彼自身のキャラクターです。 自らセスナ機を操縦して、週の内4日は各地の店舗を回り、持ち前の人懐っこい性格で従業員を元気づけました。 こうしたことが、ひいては従業員や地元地域との円滑なコミュニケーションにつながり、成長の礎になりました。
また、従業員の意見を尊重し、株式を分配、業績連動給を導入するなど、会社の発展が従業員を豊かにするシステムを構築すたことも、ウォルマートを大きくした理由の一つです。
彼の哲学として知られる「一番偉いのはお客様、次に大切なのは従業員」という言葉が、すべてを物語っています。 そこからロー・プライス戦略も生まれています。
また、サムの暮らしぶりも、大富豪のそれではなかったようです。
豪邸とは程遠い牧舎風の家に住み。時折出かけるキジ狩りとテニスが趣味だったと言います。 マスコミなどから、「全米有数の富豪」などと呼ばれることを特に嫌がっていたそうです。
広がる消費文明と流通財閥
アメリカの場合、国内で成長を遂げた企業の大半は多国籍企業として発展するケースが多く、ウォルマートも例外ではなく、1991年にメキシコに出店したのを皮切りに、1992年にはプエルトリコ、1994年にカナダ、その翌年はブラジル、アルゼンチンなど、次々と進出していきました。
現在では、10け国に出店(約1200店)し、総売上高に占める海外シェアも16%ほどになっています。
アジア進出で注目されるのは、日本よりも中国(1996年)や韓国(1998年)への進出が早かったということであります。 中国(22店)への進出は、香港に隣接する深圳が最初で、出店と同時に商品の供給基地として中国を位置づけています。
13億人の人口を抱かえる中国は、これから大衆消費時代を迎えると考えられるだけに、世界中の流通企業が注目しています。
すでにウォルマート社に先行して、フランスのカルフール社や日本のイトーヨーカ堂も進出済みですが、それらに地元資本をを加えて、中国ではまさにこれから「流通大戦国時代」が始まろうとしています。
ただ、ウォルマート社が進出している国のすべてで成功しているとは限らず、ドイツでは苦戦を強いられています。 そうしたこともあってか、商習慣や風土が異なる日本への進出には慎重でした。 しかし、水面下では種々の動きがあったようです。
1990年代半ばには、日本の流通業界でもハイパーマーケット(巨大スーパー)構想が持ち上がり、三井物産やイトーヨーカ堂などがそれを模索する過程で、ウォルマート関係者とコンタクトをとってきた、という経緯があります。
今後、ウォルマート・西友・住友商事という三社連合に、さらに他の大手スーパーマーケットが参加する余地も残されており、その行方が注目されています。
先進ヨーロッパに見る流通富豪
ウォルマート・ストアーズ社、およびウォルトン一族が苦戦している国はドイツです。 その最大の理由が、ディスカウント・ストアを中心とする「アルディ」や独特のスーパーマーケットとして知られる「メトロ」の存在です。
アルディ社は、品揃えにこだわらず、格安で調達出来る品物をベースにしながら、ドイツを中心に10ケ国で約4000の店舗展開をみせてます。 そのオーナーは、カールとテオドール(テオ)兄弟を総帥とするアルブレヒト一族であります。
しかも前述したように、ウォルトン一族が、世界一の大富豪せあるなら、アルブレヒト一族も資産額268億ドルを持つ世界第三位の大富豪であります。
こうしてみると、時代の潮流は明らかに第三次産業、あるいは第四次産業の時代になってきています。 そのためか流通、特に一般家庭や主婦を対象とするスーパーマーケット・ストアを起業ないしは家業としているファミリーに大富豪が少なくありません。
日本でもイトーヨーカ堂を創業した伊藤雅俊名誉会長、ユニクロの柳井社長などが、その例に含まれます。
とりわけ、ヨーロッパ格国には、流通・小売り事業で富を築き上げたファミリーが多く、同じドイツにはアルディ社とは業態が異なるものの、通販・カタログ事業で、世界一の規模を誇るオットー・フェルザント者を経営するミハエル・オットー一族がいます。
日本でも同社は、住友商事と提携し、1986年に合弁会社として「住商オットー」をつくり、通販事業を展開しています。
また、ウォルマート社の進出パターンと同様に、丸紅と提携して会員制食品卸売りの分野で、日本進出を計画しているメトロ社のオットー・バイスハイム一族、さらに、通販事業を行うクヴェレ・シュケンダッツ者を経営するシュケンダッツ姉妹、スーパーマーケットを運営するエリファン・ハウブ一族などが挙げられます。
さらにイギリスでのスーパーマーケット業界を見ると、ウォルマート社の系列のアズダ社、そしてテスコ社、セインズベリー者の三強が覇を競い合っています。
デービッド・セインズベリー一族が株式を所有するセインズべりー社は、一時期低迷したものの、業績は回復基調にあります。
セインズベリー一族は、エリザベス女王、それにロンドンの一等地を保有し、不動産王の異名を持つジェラルド・キャベンディッシュ・グローブナー一族に次ぐ大富豪であります。
このように、ヨーロッパの先進国と言われる国々に次々と流通富豪が生まれています。 まさに流通分野での大富豪や財閥の数は、そのまま国の成熟度、先進度に比例する関係にあると言えそうであります。
・セインズベリー財閥(イギリス)https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/0b1c413ccedc10286ad5890696befb6d
・LVMH (ロスチャイルドGr)
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