欧州でマスク氏への警戒が広がる
【ロンドン=辻隆史】
欧州で米起業家イーロン・マスク氏が率いるX(旧ツイッター)への警戒感が強まっている。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は17日、デジタル規制に違反した疑いで進めるXへの調査を拡大すると発表した。
マスク氏は欧州政治への介入姿勢を明確にし、9日にはドイツの極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)のワイデル党首とX上で対談した。
欧州の配信の視聴者にはAfD候補への投票を呼びかけた。英国の極右活動家の支援も訴える。
EUは17日、有害コンテンツの排除などを義務付けるデジタルサービス法(DSA)に基づき、Xへの監視を強化する方針を発表した。
2023年12月にDSA違反の疑いでXへの正式な調査を始めたが、調査内容を広げる。
欧州委はXに対し、コンテンツの推奨システムに関する資料を早急に提出することなどを求めた。
EU高官はXが偽情報の拡散といった問題に真摯に対処していないと不満を募らせる。
EUでは立法機関の欧州議会の有志議員約40人が16日、マスク氏の欧州政治への介入に懸念を示す書簡をフォンデアライエン欧州委員長に送った。
デジタル規制によるマスク氏やXへの制裁は、マスク氏が関係を深めるトランプ次期米大統領からの報復のリスクを伴う。それでも極右を積極的に応援するマスク氏への対応を迫る意見が強まりつつある。
フランスではパリ市が16日の声明で、20日からXの利用を取りやめると表明した。
Xで偽情報や暴力的な発言がはびこっているとした上で「ドイツや英国など特定の国への干渉も行っている疑いがある。民主主義の基盤を揺るがす」と批判した。
「市民に情報を提供するという、公共サービスの使命を遂行するための条件をもはや満たしていない」とも断じた。ドイツの国防省はXのアカウントを原則停止し、他のSNS(交流サイト)での広報に切り替えた。
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