世界大戦の主原因は石油 パナマ運河 英国 vs 米国
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からの続き
石油業といえば儲かることに決まっていた時代にもかかわらず、どのような理由からか、英国監督油田会社は赤字続きで、株主はこれを不服とし、調査を要求しました。 同じ業界でビジネスをしているロイヤル・ダッチ・・シェルやアングロ・ペルシャン(英・イラン)石油会社は黒字続きなのに、なぜ英国監督油田会社だけが赤字を出すのか? この疑問に対する答えは、次に述べる裏事情がありました。
アングロ・ペルシャン石油の支配人、ダンカン・エリオット・アルベスは、カナダで英国監督油田会社の設立に奔走したといわれています。 米国石油の敗退を呼号したエドウィン・マッケイ・エドガーは、同会社の評議委員会の政府代表でした。 その他の評議員も政府の任命であったことから、この英国監督油田会社が、多分に政治色を帯びた会社であったことが分かります。
そして、その営業方針そのものも明らかに政治的色彩を持っていました。 例えば、暴露されたところでは、英国政府は同会社で生産した石油は如何なる「事情があっても、敵の米国のロックフェラー系スタンダード石油に売却してはならないと厳命していたといわれています。
また、同会社が買収した土地には全然石油の出ないところが多く、これを見ても、石油の仮面をかぶって戦略上重要なばしょを買収していたということができます。 商業的側面よりも政治的側面が、この英国監督油田会社の活動を支配していたのです。
同会社が赤字を出して、株主の不平・不満を買ったのも当然な結果でしょう。株主の不平に対しては、同会社も一歩も譲らず、遂にベネズエラにおける石油の一部をスタンダード石油に売却することも許可しました。 そして、そのヴォディング・トラストの組織は解消しました。
同会社の営業方針はあくまでも敵国主義的で、排他的な大英帝国の政策を代行することでなければならなかったのです。 英国監督油田会社は、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタ・リカ、パナマ、英領ギアナ、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、エクアドル、トリニーダ島の諸地方で、借地権獲得に躍起となり活躍しつづけていました。
地理的に見れば、すべてパナマ運河を中心としていることは一目瞭然です。しかも、米国海軍の作戦家が指摘したように、これらの租借地のほとんど全てが海岸か海岸に近いところから、戦時の便宜を考慮したものであることは明らかです。 これについて、「世界石油争奪」の著者、デ・ラ・トラメリは次のように記しています。
『英国が大西洋及び太平洋沿岸に租借地を選んだのは、英・米間に戦争が勃発した時の準備であったことは明白である。 何故ならば、たとえ日本艦隊の援軍があったとしても、英国海軍は恐らくパナマ運河を占領することは出来そうにない。 ならば、その艦隊は、マゼラン海峡を迂回する廻り道をせずに、燃料庫を充たすことのできる位置にならなければいけなかったのである』
英国監督油田会社は、着々とその政策を進めていきました。その所有する地下資源が豊富であるのにもかかわらず、極めてわずかの石油しか採取せず、将来のために保有しておく方針だったのです。 1927年度における生産高はわずかに250万バレルで、赤字を続けていました。 しかし英国海軍省は、この損失を補なって余りある利益に満足していました。
しかし、英国海軍省はこの英国監督油田会社だけでは満足せず、他の会社も巻き込んで運河地帯付近に作戦基地を獲得するために奔走しました。 パナマの南に横たわるコロンビア共和国が、英国オイルマンの活躍の舞台となったのです。いや、オイルマンの仮面をかぶった英国政府官史といった方がよいかもしれません。
アングロ・ペルシャン(英・イラン)石油会社がこの国で活動を開始しました。 アングロ・ペルシャン探検隊は警備隊を雇って、野蛮なインディアンが住む奥地深く入っていきました。案の定、インディアンはその荒野を守るために抵抗したので、探検隊は地理的には何ら得ることがなく引き揚げねばなりませんでした。
しかし、彼らは決して無為に撤退したのではなく、狡猾にも自分達は米国の石油密使であると宣伝。 この宣伝が効いて、これから以後、米国の開発権漁りの連中は、同地方に入って行けなくなってしまいました。
1927年、ヘンリー・アーヴィング・フレデリック・エイツという英国紳士がコロンビアに上陸。彼は英国陸軍軍人で大佐にまでなった人物で、当時はアングロ・ぺルシャン(英・イラン)石油会社の支配人でした。彼は各種の特権や特許を持った外交官としてのパスポートを持っていました。彼は英国政府のスパイでした。
エイツ大佐は海抜5千フィートのコロンビア国首都ボゴタに到着しました。 この地方には石油は産出しませんでしたが、石油利権屋はうようよと集まっています。 英国公使館では、この密使のために、万全の準備をして待っていました。
栄光公使館だけでなく、コロンビア政府も彼を持っていました。 そしてエイツ大佐が閣僚を訪問した時、極めて友好的に迎えられました。 従って、アングロ・ペルシャンに対する石油開発権譲渡の申し出は、好意をもって審議されることとなりました。
大佐の希望するところは、パナマ国境に近い広大な国有地の独占採掘権を50年間獲得することでした。 そして、彼の要求は受け容れられました。
エイツの開発権に関する契約は誰が作成したのか分かりませんが、極めて巧緻を極めたものでした。 各項目にはそれぞれ付随的な契約が書いてあり、あらゆる部門の権利を獲得しています。 そんからくりは非常に巧みにできているので、一見、重大でなさそうに見えました。
この契約は、各種の付随的事業を興し、投資し、かつ『鉄道もしくは類似の交通機関または重要なる交通機関を建設』する権利をエイツ大佐に賦与していました。
子の巧みな言い回しによって、エイツ大佐すなわち、アングロ・ペルシャン石油会社、さらにいえば英国政府は、パナマ運河の南に第二のパナマ運河を開く権利を得ました。
それは、決して夢物語ではなく、エイツの得た借地は運河開削に最も適した地域を含んでいました。コロン地峡の東部にあるダリエン湾にアトラト河が注いでいますが,この河の水源は太平洋に近いところにあり、その支流は更に太平洋後の近くにありました。
しかも、この河の大部分は舟行に適していたので、専門家の言うところによれば,河の深さを深めつち太平洋まで開削していけば、パナマ運河以上の運河が完成し、太平洋とカリブ海を結ぶことができるといいます。
次の投稿に続く、次の投稿はパナマの覇者です。
(参考 本件、石油の話、今までの投稿)
世界大戦の主原因は石油 パナマ運河 英国 vs 米国
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