洋上液化天然ガス(LNG)プラントの完成予想図(デルフィン・ミッドストリーム提供)
【ヒューストン=花房良祐】米国で初めての洋上液化天然ガス(LNG)プラントが2027年にも生産を開始する。
商船三井が出資する米エネルギー会社デルフィン・ミッドストリームが事業費約52億ドル(約7500億円)のプラント2基について年内にも事業化を目指す方針を明らかにした。
陸上型に比べて環境への負担が軽く、低コストな海上型でLNGの生産を増やす。商船三井も運営などで参画する。
デルフィンのダドリー・ポストン最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材に応じた。米国では人手不足が深刻で建設現場の人件費が高騰している。
洋上プラントなら人件費が比較的低いアジアの造船所で建造してから現場までえい航できるので「陸上より建設コストを10〜15%削減できる」とポストン氏は話す。陸上型に比べて環境への負担が軽く、許認可の手続きが進めやすい面もある。
洋上LNGプラントはマレーシアやオーストラリア、モザンビークなどで数基が稼働しているだけで世界的に珍しい。
米南部ルイジアナ州沿岸に洋上プラントを複数設置し、本土で生産したシェールガスをLNGに加工、欧州とアジアに輸出する。1基あたり年産約350万トンで、1基目はほぼ販売先が固まった。
2基目についても顧客の電力・ガス会社と長期契約を交渉中。日本企業とも接触しているという。韓国・サムスン重工業と米エンジニアリング会社ブラック・アンド・ビーチが設計や建造を手掛ける方向だ。
ポストン氏は「商船三井の洋上設備のノウハウに期待している」と話し、プラントの運営・保守で連携する考えを示した。
商船三井はLNG購入企業との用船契約も狙う。出資比率は明らかにしていないが、商船三井はこのほどデルフィンへの少額出資を決めた。
デルフィンは3〜4基目のプラントも計画しており、28〜29年の生産開始を目指している。すべて完成すれば4基の年産能力は計約1300万トンとなり、大型の陸上プラントに匹敵する。
日経記事 2023.08.16より引用