ホワイトハウスで記者団の質問に答えるスティーブン・ミラー大統領次席補佐官(1月28日)=AP
【ワシントン=飛田臨太郎】
トランプ第2次米政権が始動し、不法移民対策で非人道的にも映る打ち出しが相次ぐ。
人々に恐怖心を植え付け、米国に越境・滞在しようとする人の意欲をそごうとしている。「恐怖戦略」を練る影の司令塔は39歳の若さで大統領次席補佐官を務めるスティーブン・ミラー氏だ。
「ほぼ全ての政策がミラー氏を通る」
キューバにあるグアンタナモ米海軍基地。トランプ政権は4日、米国内で拘束した不法移民の同地への送還を始めた。
2001年の同時テロ後、テロに関与したとされる容疑者を送り込んできたグアンタナモの収容所は、残酷な拷問や劣悪な環境で世界から批判を浴びてきた。
トランプ大統領は3万人を送り込むと表明。長年の悪名を逆手にとって、恐怖心をあおる。全米の主要都市で不法移民を逮捕・拘束する様子は米メディアをわざわざ呼び寄せて宣伝している。
戦略を立案しているミラー氏は「今のホワイトハウスで絶大な権力を持っている」(米紙ニューヨーク・タイムズ)。
ワシントンの保守系シンクタンクの1人は「ホワイトハウス内に大きな部屋をあてがわれ、政策決定で最もトランプ氏に近い。ほぼ全ての政策がミラー氏を通ってからトランプ氏にいく」とみる。
情報漏洩を嫌うトランプ氏に気をつかい、メールを使わず、文書を残すこともしないという。米メディアはグアンタナモの計画は米国防総省の担当者に直前まで知らされていなかったと報じた。
ミラー氏は31歳だった16年大統領選挙からトランプ陣営に入り、演説内容を書くスピーチライターになった。
共和党のスタッフだったが、過激な思想の持ち主だとして主流派から敬遠されていた。
第1次政権のホワイトハウスでも移民政策を主導した。不法移民の親子を別々に収容する戦略を考案した。子供が泣き叫ぶ音声や金網に囲まれた収容施設の様子は米メディアやSNSで大きく取り上げられた。
トランプ政権の恐ろしさは世界に浸透した。恐怖戦略を通じて、入国しようとする人の数は減少した。結果的に、第1次トランプ政権が国外に強制送還した人の数は、民主党政権のオバマ政権よりも年平均でみて大幅に少なかった。
ミラー氏は今回も当時の「成功体験」の再現を狙っている。第2次政権の始動早々に世界向けに恐怖を発信し、不法移民を抑止すれば、対策に必要な莫大な予算や人員を抑えることができるともくろむ。
「わが世の春」はいつまで続くか
移民の人権を無視するかのような案を次々と考えるミラー氏とはどのような人物か。ユダヤ系で、リベラルな有権者が多い西部カリフォルニア州サンタモニカで育ったが、早くから保守的な思想を固めた。
高校生時代の生徒会選挙で反移民の物議を醸す発言をして校内で有名になった。当時の同級生がミラー氏を取り上げたドキュメンタリーを作ったほどだ。
幼少期に一時、父親のビジネスがうまくいかず経済的な苦境を味わった。同時に1990年代のカリフォルニアには不法移民排斥の風潮があり、ミラー氏の思想形成に影響を与えた可能性がある。
高校時代から、後にトランプ氏の「MAGA(米国を再び偉大に)」(Make America Great Againの頭文字)運動を支援する保守思想家らとつながりを持つようになった。野党・民主党はミラー氏を「白人至上主義者」と非難する。
ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は24年の選挙中の非公式会合で「ミラー氏にすべてを任せたら、米国には1億人しか住めず、全員がミラー氏のような(白人の)顔になるだろう」と冗談めかして発言したという。
トランプ氏は不法移民対策を政権初期の最重要課題に据える。メキシコやカナダへの関税を引き上げるとの脅しは、国境政策での協力を迫るためだ。大統領選勝利の主因となった不法移民排除の公約実現を最優先に動く。
移民政策を主導するミラー氏の「わが世の春」がホワイトハウス内で長く続くかは、はっきり見通せない。
トランプ氏はミラー氏ほどは移民に強硬な思想を持っていないとされ、市場の反応にも敏感だ。労働力が減少すれば米経済を傷つける。
第1次政権で導入した親子を引き離す施策は米世論から厳しい非難が巻き起こり、最終的に撤回した。26年の中間選挙に向け、トランプ氏は経済や世論の目配せもする。
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。
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慎泰俊五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
分析・考察
ミラー氏自身も、1900年代のユダヤ人排斥運動によりロシアからアメリカに逃げた移民の子孫であるのに、本人がこのような政策を主導するのはなんとも皮肉なものだなと思いました。
見せしめの効果を最大化させるためとはいえ、親と離れ離れになった子どもが泣き叫ぶような政策をとるのは、なかなか理解に苦しみます。
日経記事2025.2.5より引用
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典型的な、コンプレックスの塊の Poor White(貧困白人)ですね。 完全に精神が病んでいるのも写真からうかがえます。