ガーランド司法長官はロシアによる選挙介入の狙いについて「大統領選でロシアが望む結果を確保することだ」と断定
=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
米司法省は4日、11月の米大統領選で意中の候補の勝利を狙ったロシア政府の指示を受けて偽情報を流布させた同国営メディアの職員を起訴したと発表した。
ロシアが返り咲きを期待する共和党のトランプ前大統領が有利になるよう工作した可能性がある。
ガーランド司法長官は4日の声明で「ロシアのプーチン大統領の側近は米大統領選に影響を与えるキャンペーンの一環として、偽情報と国家主導のシナリオを宣伝するようロシア企業に指示した」と断定した。
ロシア側の狙いについて「クレムリン(ロシア大統領府)が作成した内部計画の文書によれば、大統領選でロシアが望む結果を確保することだ」と記した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国の情報機関はロシア政府が民主党のハリス副大統領よりトランプ氏の勝利を望ましいと考えていると分析している。
プーチン氏の指示で広報・宣伝を担うロシア企業を通じ、不正目的で取得したドメインや捏造(ねつぞう)したインフルエンサーなどを使って人工知能(AI)が生成した偽の話をSNSに流した。司法省によると、米国の特定の層や地域を標的に、選挙戦に影響を与えようと画策した。
司法省によると、起訴されたロシア国営対外発信メディア「RT(旧ロシア・トゥデイ)」の職員が米南部テネシー州の企業に1000万ドルを支払い、2023年11月頃から約2000本の英語動画を動画投稿サイト「YouTube」や動画共有アプリ「TikTok」やインスタグラム、X(旧ツイッター)で拡散させた疑いがある。
YouTubeだけで1600万回以上が視聴された。動画には移民やインフレなど大統領選の争点になっている話題のほか、外交問題にも触れている。司法省は「大半がロシア政府が公言する目標、米国内の分裂を増幅させるよう仕向けられている」と断じた。
米司法省などは、ロシアが侵略を続けるウクライナへの米国の関与を低下させる狙いがあるとみる。
プーチン氏は、ウクライナ支援に後ろ向きな発言を繰り返すトランプ氏が大統領選で勝つのを望んでいるとの見方がある。
米財務省は4日、RT編集長ら10人と2団体を制裁対象に加えた。米国のインフルエンサーに近づいたり、投票所の場所についての偽情報を流すためのSNSにボット(自動投稿プログラム)のアカウントを作る調整をしたりした。
米情報機関は11月の大統領選への選挙介入に関し、ロシアを「最も活発な外国の脅威」と解析する。中ロは生成AI(人工知能)やビッグデータ分析を駆使して標的を絞り込むなど、介入の脅威が高まっていると警戒を強めていた。
米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は5月、連邦議会の公聴会でロシアの狙いに関し「米国内の分裂を助長し、(ロシアが侵略を続ける)ウクライナへの西側諸国の支援能力を弱めることにある」と明言した。
ロシアは16年の米大統領選にも干渉し、民主党のヒラリー・クリントン氏の敗北とトランプ氏の勝利に向けて工作した疑惑がある。
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こうした報道がやみませんね。嘘情報ももちろんですし、口コミと思わせて政治的宣伝をおこなっている訳ですから、典型的なステマです。
特にAIを使うと従来のステマより厄介なのは、安価で発信量を何千倍にも増やせることでしょう。
ということは、少人数でオペレーションできる。身元を隠して摘発を逃れやすくなります。
ステマに限らずAIのこれを止められないと、社会の意思形成が決定的に害されるか、あるいはSNSという場じたいが荒れすぎて、使われなくなる恐れがありますね。
当面の対策はAI生成にはそうラベリングするよう義務付けることで、世界の議論はそこに向かっています。ただ、従わない個人や国が出ますから、課題ですね。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2024.09.05記事より引用