半導体株、反転のカギは「2ナノ」　製造装置に脚光再び　　点検・半導体株㊦　（日経2025.2.21）

ラピダスは27年に2ナノ製品の生産を目指す

半導体製造装置株に再び脚光が当たり始めた。2025年から本格化する回路線幅を2ナノ（ナノは10億分の1）メートルに微細化するための設備投資に加え、トランプ米大統領が推し進める半導体生産の米国回帰の追い風が吹いているからだ。

「データセンターとスマートフォンに後押しされ、2ナノの今後2年間の需要は3ナノや5ナノを上回るだろう」。

台湾積体電路製造（TSMC）の魏哲家・董事長兼最高経営責任者（CEO）は1月16日に開いた決算説明会で、2ナノと呼ばれる最先端半導体を25年後半に量産する方針を強調した。

2ナノを実現するには、これまでの3ナノとは半導体回路の構造を大きく変える必要がある。

「技術進化で製造が複雑になる分、投資規模も増える」（アセットマネジメントOneの池田研亮ファンドマネジャー）。足元で注目されている人工知能（AI）向けは、これまで利用してきた半導体回路の生産ラインでも対応できるため、製造装置需要は限定的だった。

韓国サムスン電子も25年に2ナノの量産を計画する。米インテルも微細化を進める見通しなほか、日本でもラピダスが2ナノを27年に生産することを目指しており、設備投資が期待される。

ニッセイアセットマネジメントの山本真以人チーフ・アナリストは「半導体株の中で製造装置は、これまでよりも選ばれやすくなる」と話す。

製造装置株は米国の対中政策に振り回されてきた。高性能半導体向け製造装置の対中輸出禁止が打ち出されると、中国側の駆け込み需要が拡大し、製造装置株は急騰した。

東京エレクトロンの株価は24年4月に上場来高値（4万860円）を更新、オランダのASMLホールディングや米アプライドマテリアルズも7月に最高値を付けた。

その後は中国販売比率が高いことが逆に重荷となり、AI向け半導体を手掛ける米エヌビディア株に大きく水をあけられてきた。

もっとも、中国の新興AI「DeepSeek（ディープシーク）ショック」以降、半導体株全体が下落している中、米ラムリサーチが12%上昇し、ASMLも1%高と底堅い。2社の共通点は2ナノの生産準備が進むと手掛ける製造装置の需要が増える点だ。

そんな状況は半導体の国際団体SEMIの製造装置の市場予測にも表れている。

SEMIによると、25年の製造装置の世界販売金額は1215億ドルと前年比で8%増える見通し。中国需要が顕著だった24年（7%増）よりも成長が加速する。中国比率は24年の43%から31%に大幅に低下するものの、全体では市場拡大が続く。

「MAGA（米国を再び偉大に）」を掲げるトランプ米政権の半導体政策の影響もある。

11日にバンス米副大統領がAI半導体の米国内生産を促す姿勢を示すと、米インテルや米グローバルファンドリーの株が急騰した。

TSMCは米国内にも最先端の半導体工場を建設しており、2ナノでも 25年中に製造装置の搬入を始めるとみられる。

「米国ではこれまでは最先端工場を建設してこなかった分、台湾と比べると、歩留まりが落ちそうで、製造装置がより多く必要になりそう」（ニッセイアセットの山本氏）

「2ナノなどの最先端品の売上比率が高いASMLや半導体生産の米国回帰の恩恵を受けやすいラムリサーチなどは緩やかではあるが、株価が反転していく期待が大きい」。東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは指摘する。

戦略物資である半導体の主導権は誰が握るのか。国家間の競争や対立が半導体株相場を揺さぶる状況は今後も続きそうだ。

大越優樹、桝田大暉、井沢ひとみが担当しました。

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日経記事2025.2.21より引用

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