ボッシュはリストラ計画を拡大する(独南西部シュツットガルトの同社研究施設)
【フランクフルト=林英樹】
自動車部品大手ドイツのボッシュは22日、今後数年間で、全従業員の1%に相当する最大5500人の従業員を削減すると発表した。
電気自動車(EV)の販売不振で、主要顧客である欧州自動車大手の業績が悪化したため。削減する5500人のうち、3分の2超の3800人はドイツ国内の従業員が対象となる。
ボッシュは2月、2027年末までに3500人を削減すると発表していた。想定以上に欧州車産業が悪化しており、「EV向け部品の受注が大幅に減り、運転支援システムも予想ほど需要がない」(同社)として追加のリストラを決めた。
ボッシュは非上場企業。具体的な従業員の削減数などは今後、労働組合に相当する従業員代表との交渉で決めるとしている。23年の労使合意で独国内の工場で働く従業員は27〜29年まで雇用が保障されている。
ただフォルクスワーゲン(VW)は24年9月、29年までの雇用保障協定を破棄しており、ボッシュもこれにならう可能性がある。
ボッシュは人員削減のほか、従業員の労働時間短縮も検討する。25年3月以降、独国内の拠点で働く一部の従業員の勤務時間を週38〜40時間から同35時間に引き下げる。独最大の産業別労組IGメタルは「2300人の従業員が最大15%の減給となる」と試算する。
欧州車大手の業績悪化の影響は、他の車部品大手にも波及している。独シェフラーは5日、全従業員の4%にあたる4700人を欧州全体で削減すると発表した。欧州にある5工場のうち2カ所も閉鎖する。
独ZFは28年までに独国内で1万1000〜1万4000人を人員削減すると明らかにした。
別の視点
独車産業の雇用崩壊が日本自動車産業でも起こり始めているか。
ドイツと日本を除けば、全世界で新車販売に占めるEV構成比は上昇し続けている。独日のエンジン車に関わる従事者の雇用が中国車の世界拡販に伴うデフレの波に破壊されている一方、中国EVメーカーではAIロボットの工場導入が進んでいる。
中国が牽引するEVシフトの中で、世界全体で自動車産業の雇用が消滅し始めているのではないだろうか。
成長産業の半導体や再エネでは雇用が創出され、成熟産業の車産業では労働力が割高なヒトからAIに置き換わっていく。
日本も車産業の雇用が消滅し始めたドイツの二の舞となる可能性があるが、日産で遂にそれが始まったような気がする。
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分析・考察
ドイツはこれまでロシアからの安いエネルギーによって競争力を確保してきたが、それも対ロ制裁によって難しくなり、中国市場に依存して、そこでブランド力を活かして市場を確保してきたが、それもEVシフトが進む中で、中国ブランドのメーカーに勝てなくなってきている。
ドイツの自動車産業はある種の隘路に入っていると思うが、日本の自動車産業はEVシフトが遅れたことで、ハイブリッドに固執したことが怪我の功名となっている。
しかし、これとていつまで続くかはわからない。果たして今後日本の自動車産業はどこに向かっていくのだろうか。
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日経記事2024.11.23より引用