25日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末比の上げ幅を700円超に広げて節目の3万9000円を上回る場面があった。
最高値を更新する米国株を追い、日本株も戻り歩調を強めている。足元では3月期決算企業の中間配当の支払いが始まり、12月上旬にかけてピークを迎える。
日本企業の株主還元を強化する姿勢を反映し、配当総額は8兆円を超える見通しだ。すでに再投資に回った分を除いても7兆円規模にのぼるとみられ、今後の株高を後押ししそうだ。
日経平均は前週末比396円高で始まった後、株価指数先物への断続的な買いが現物株を押し上げ、上げ幅は770円に迫った。
米財務長官に投資ファンド経営者のスコット・ベッセント氏が指名されたのをきっかけに米長期金利が低下。日本時間25日午前の米株価指数先物の上昇が波及して幅広い銘柄に買いが入った。前引けは584円高の3万8868円だった。
日本株の年末ラリーに向けて、株式需給面の支援材料が配当再投資への期待だ。QUICKによると、東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業の9月末の配当総額はおよそ8兆2000億円にのぼる。
東京証券取引所による「株価や資本コストを意識した経営」の呼びかけから、日本企業は配当や自社株買いの拡充で投資家に応えてきた。これによって膨らんだ配当金が11月下旬から12月にかけて投資家の手元に届く。
今週は26日にトヨタ自動車(約5200億円)、29日にNTT(2100億円)などが中間配の支払いを始める。ピークとなる12月の第1週には5兆6000億円が支払われる見通しだ。
もっとも機関投資家の一部はすでに再投資を済ませている。配当込みTOPIXをベンチマークに運用しているファンドは、配当落ちによるベンチマークとの乖離(かいり)を避けるために9月末の配当落ち日前後に株価指数先物を買って手当てしている。
市場ではこのパッシブファンドによる再投資分が1兆2000億円あまりと試算されている。すなわち差し引き7兆円分が残りの投資信託や個人投資家などにわたり、再投資に向けた待機資金となる。
フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは「配当金が全て株式に再投資されるわけではないが、年末株高に向けた需給上の支えになり得る」と指摘する。
企業による自社株買いも旺盛だ。東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストによれば、11月の自社株取得枠の設定が前週末22日までの累計で2兆5000億円を超えた。自社株買いが海外勢の売りを吸収する構図が続く。
東海東京の鈴木氏は「中間配が株買いでなく個人消費に回ったとしても、国内企業の収益を押し上げる要因になり株式相場にプラスだ」と指摘する。
海外勢が休暇に入る年末は取引参加者が少なくなり、株式市場で国内の個人の寄与度が高まる。配当再投資の資金流入とともに、これから本格化する年末商戦で消費の底堅さが確かめられれば、いったん遠のいた日経平均の4万円に再び近づくかもしれない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹〕