【ドバイ=福冨隼太郎】
イスラエル軍は1日、イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと発表した。大半は撃墜されたとみられる。
イランによるイスラエルへの直接攻撃は4月以来、2回目。イスラエル軍報道官は反撃を示唆しており、中東の緊迫の度合いは一段と高まった。
商都テルアビブなどで空襲警報が出され、市民には避難の指示が出された。イスラエルメディアによると、イスラエル軍はイランから約180発の弾道ミサイルが発射されたとし、その大半を撃墜したと明らかにした。
イスラエル軍報道官は1日夜「この攻撃には結果が伴うだろう。我々が選んだ時と場所で対応する」と述べ、反撃する可能性に言及した。攻撃による被害はごくわずかだったとの見方も示した。イスラエルメディアが伝えた。
米メディアによると、イスラエルのネタニヤフ首相は同日、「イランは今夜大きな間違いを犯した。代償を払うことになる」と語った。「我々を攻撃するものは誰であっても、我々が攻撃する」とも述べた。
イラン革命防衛隊は1日の声明で、イスラエルを弾道ミサイルで攻撃したと明らかにした。イスラム組織ハマスのハニヤ前最高指導者やレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ指導者のナスララ師らが殺害されたことへの報復だと主張した。
イスラエル側に「軍事的に反応すれば、壊滅的な攻撃に直面することになる」と警告した。
米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は1日の記者会見で、イスラエル国内での死者や軍事施設の被害は確認されていないと説明した。一方、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のエリコでパレスチナの民間人が死亡したとの報告を受けたと話した。
イスラエルがイランへの報復に出る可能性を問われ「予断を持って発言するのは控えたい。イスラエルと綿密に協議したい」と述べるにとどめた。「これはイランによる重大なエスカレーションだ。イスラエルと歩調を合わせ、この攻撃で死傷者が出なかった状況をつくり出せたのも重要だ」と唱えた。
イスラエル軍は9月下旬以降、イランが支援するヒズボラへの攻撃を強め、指導者のナスララ師を殺害した。10月1日未明には2006年7月以来、約18年ぶりにレバノン南部に地上侵攻した。
7月にはイランの首都テヘランで、パレスチナ自治区ガザでイスラエルと戦闘を続けるハマスの指導者だったハニヤ氏が殺害された。イランはイスラエルが実行したとして報復を宣言したが、2カ月以上が経過しても具体的な報復を保留していた。
イランは4月、シリアの首都ダマスカスの公館攻撃に対する報復として、約300のドローン(無人機)やミサイルを発射した。イスラエルや米国などは攻撃の大半を迎撃し大きな被害は出なかったが、イランがイスラエルを直接攻撃したのは初めてだった。
その後、イスラエルはイラン中部イスファハン州を無人機で攻撃。以降は双方が抑制するかたちで両国による大規模な衝突は回避された。
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イランによる今回のミサイル攻撃は、今年4月のそれと重なって、筆者の目には映る。
同胞が殺害されたことへの報復措置として軍事行動には出るものの、それはデモンストレーションあるいは国民の不満のはけ口という色彩が強く、イスラエルの損害が軽微にとどまることは当初より織り込み済み。
4月のケースと同様、イスラエルによる対イラン報復攻撃も今後予想されるが、両国が全面戦争に至るような事態の一段の悪化までは避けられると筆者はみている。
イスラエルの強硬姿勢は、イランの「受忍限度」を試すようなものであると同時に、同国のネタニヤフ政権が延命を図っていることによるもの。
両国の国民が全面戦争を望んでいるわけではないだろう。
イランはテヘランでハマスの指導者であるハニエが殺害されたことに対して報復する権利を保留するという立場でいたが、ヒズボラに対する度重なる攻撃とナスララ師の殺害などを受けて、イスラエルとの戦いは避けられないと判断したのであろう。
これによってイスラエルのレバノン侵攻を止めることが出来るかどうかはわからないが、少なくとも4月の時のように、限定的な攻撃とは限らず、これからイランを巻き込んだ長い戦いの始まりなのかもしれない。
イスラエルはおそらく大規模に報復するであろうが、その戦いの落としどころや、終わりを設定することは極めて難しい。
ハマスやヒズボラとは違い、イランを殲滅させるにはミサイルだけでは不十分。
イスラエル軍は2024年10月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、イスラエルと国境を接するレバノン南部で「限定的」な地上攻撃を始めたと発表しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。
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日経記事2024.10.02より引用