<体調を崩しがちな季節には、何を食べるといいのか。体内のサビを防ぐ野菜の効果的な食べ方を「野菜を育むプロ」が伝授>
関東で大規模農家を経営し、「野菜を育むプロ」を自称するしんさんが、疲労と便秘、胃腸の不調の解消に適した野菜を解説する──。
※本稿は、しん(野菜を育むプロ)、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部(監修)『農家が教えたい 世界一使える野菜の教科書 おいしくて体にいい選び方&食べ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「活性酸素」の増加が生活習慣病の誘発要因に
私たちの体の燃料はたんぱく質・脂質・糖質です。これら3大栄養素にはカロリーがあり、体のあらゆる機能は3大栄養素のカロリーを体内でエネルギーに変える(代謝する)ことで成り立っています。
野菜に豊富に含まれる「微量栄養素(ビタミン、ミネラル)」にはカロリーがありません。
しかし、たとえば「ビタミンB1は糖質代謝を促進する」というように、非常に複雑な代謝プロセスには微量栄養素が必要不可欠です。
その働きがなければ、カロリーをとっても体内でうまくエネルギーに変換されず、元気に活動できなくなってしまうでしょう
それだけではありません。体内では常に「活性酸素」という物質が発生しています。
俗に「サビ」とも言われますが、活性酸素は細胞を酸化させ、血管の劣化や肌の衰えといったあらゆる老化現象を促進します。ひいては生活習慣病の誘発要因にもなります。
「微量栄養素」が体内のサビを防ぐ
そんな厄介な活性酸素を除去するために重要な役割を果たすのも、微量栄養素です。3大栄養素・ビタミン・ミネラル・食物繊維と並び「第7の栄養素」と呼ばれるフィトケミカルも同様です。
みなさんは「ビタミンCはアンチエイジングに効果的」「目の健康にはアントシアニン」なんて聞いたことはありませんか?
これもビタミンCやアントシアニンが強力な抗酸化物質だからなのです。
野菜にはエネルギーとなる3大栄養素を多く含むものは少ないのですが、さまざまな症状の改善に効果的な微量栄養素を豊富に含むものはたくさんあります。
つまり日々野菜をたくさん食べるほどに、美しく健やかな体が作られるということ。ごはんや肉・魚はしっかり食べながら、野菜もたくさん取り入れていきましょう。
ごぼう、オクラ、アスパラガスは “腸活野菜”
症状:便秘
便秘とは、便を押し出す腸のぜん動が減っていることで排便が滞っている状態。また、腸内の水分不足でも起こりやすい症状です。
水分をしっかりとったうえで、便の形成やぜん動を促してくれる野菜を意識的に食べることが、お通じの改善に直結します。
食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、両方とも便秘解消には欠かせません。
不溶性食物繊維は、腸内に溜まった食べかすや老廃物など体内の不要物を絡め取り、十分な量の便を形成しますが、だからといって不溶性食物繊維ばかりとっていると、むしろ便が硬くなって詰まってしまう恐れがあります。
そこで必要となるのが、ぜん動を促して排便を起こりやすくする水溶性食物繊維です。ただし、水溶性食物繊維のほうが多い野菜はないため、不溶性に偏りすぎていない野菜をとることが便秘解消の有効策となります。
その意味で、ごぼう、オクラ、アスパラガスは、どれも優良な “腸活野菜” の1つ。また、アスパラガスとごぼうには腸内の善玉菌のエサになるオリゴ糖も含まれています。
腸の健康を握っている善玉菌がオリゴ糖を食べて増殖することで腸内環境を改善、便秘の解消にも役立ちます。
オクラ×納豆は最強の組み合わせ
■便秘解消! おいしくて体にいい野菜料理
オクラ納豆
発酵食品は腸内環境の向上に役立つ「プロバイオティクス」の1つ。
納豆も発酵食品なのでオクラ×納豆=食物繊維×プロバイオティクスの “ネバネバコンビ” で、便秘を撃退しましょう。
小口切りのオクラと納豆、細かく刻んだオクラとひきわり納豆など、好みの食感で。
アスパラガスとごぼうのサラダ~ヨーグルトドレッシング~
アスパラガス、ごぼうにヨーグルトのドレッシングを合わせれば、食物繊維×プロバイオティクスの「腸活サラダ」に。
水溶性食物繊維を極力多くとるには、アスパラガスは「蒸す」もしくは「レンチン」がいいでしょう。
症状:胃腸の不調
胃腸の不調とは、胃酸が出すぎている、腸内環境が荒れているといった原因で、胃痛や胃もたれ、むかつき、お腹の張りやガスが生じている状態。胃を保護して働きを助ける野菜や腸内環境を整える野菜を食べて、疲れた胃腸を労ってあげてください。
■キャベツ
胃酸は食べものを消化・吸収する際に不可欠なものですが、分泌されすぎると胃の粘膜を傷つけ、痛みやむかつきの原因となります。
そこで胃の保護に役立ってくれるのが、ビタミンU、その名も「キャベジン」と別称される栄養素。キャベツに多く含まれるビタミンUには胃酸の分泌を抑えて胃粘膜を保護するほか、腸を整える作用があります。
ただし水溶性で熱に弱いため、健胃・健腸効果を得たいならキャベツは生で食べましょう。
大根は煮るよりも生がおすすめ
■大根
大根に含まれる「ジアスターゼ」という成分は、消化を促すことで健胃の助けになる消化酵素。ただし熱に弱く、おでんや煮ものなど大根を加熱する料理ではほぼ失われてしまいます。
また、ジアスターゼは大根の皮にも多く含まれていることから、生で皮ごと大根おろしや大根サラダなどにするのがベスト。時間が経つごとにジアスターゼは減少していくため、大根をおろしたり切ったりするのは食べる直前にしましょう。
■にんじん
少し健康意識が高く栄養にも詳しい人なら、にんじんというと「βカロテンが豊富」というイメージが強いかもしれません。
でも実は、にんじんは食物繊維にも富んでいます。不溶性・水溶性ともに含まれているため、にんじんには優れた整腸効果があると言えるのです。
整腸効果を得るならジャガイモは冷ます
■じゃがいも
茹でる、蒸すなど加熱したじゃがいもを冷やすと、熱によって柔らかくなったじゃがいも中のでんぷんが、ふたたび結晶化して「レジスタントスターチ」という形態に変化。
レジスタントスターチは腸内の善玉菌のエサとなることで、腸内環境の正常化に役立ちます。
■健胃健腸! おいしくて体にいい野菜料理
千切りキャベツと大根のサラダ
キャベツと大根には食物繊維も含まれているので整腸にも効果的。酸味のきいたドレッシングなら、胃もたれやむかつきがあってもさっぱり食べられます。
にんじん入りポテトサラダ
熱々ほくほくのじゃがいも料理もおいしいのですが、レジスタントスターチの整腸効果を得るなら、加熱後に冷やして食べるポテトサラダが最適。にんじんも加えれば、食物繊維を増強した整腸ポテサラに。
しん(野菜を育むプロ)、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部(監修)『農家が教えたい 世界一使える野菜の教科書 おいしくて体にいい選び方&食べ方』(KADOKAWA)(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
NEWSWEEK記事2025.2.22より引用