【メキシコシティ=市原朋大】
メキシコ政府が国家を挙げて電気自動車(EV)を独自開発する構想を打ち出した。小型EV「Olinia(オリニア)」の想定価格は9万〜15万ペソ(69万円〜115万円)。
シェインバウム政権最後の年にあたる2030年の市場投入を目指し、産学の総合力を結集する。
26年サッカーW杯に合わせて試作車を投入する(「オリニア」開発を発表するシェインバウム大統領)=大統領府
2026年6月11日、アステカスタジアム(メキシコシティ)で開催される北中米3カ国共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)開幕戦で、メキシコ代表選手がオリニアに分乗してさっそうとピッチに登場する――。
メキシコ政府が描く青写真では、1年半後にはプロトタイプ(試作品)が完成していることになる。
メキシコ政府は25年、開発プロジェクトに2500万ペソ(約1億9000万円)の予算を計上した。車種は小さい順に「個人の移動」「近隣の移動」、荷物配送用の「ラスト1マイル」の3種類で、最高速度や航続距離、急速充電の所要時間などは明らかにしていない。実際、メキシコにとっても多くが未知の領域といえる。
オリニアはナワトル語で「移動」の意味。メキシコでは人口の約7割が都市部に住み、うち8割の移動距離が1日30キロメートル未満にとどまるという。プロジェクト担当のロベルト・カプアノ氏は「何百万人ものメキシコ人男女の手の届く範囲で実現できる」と、低価格による爆発的な普及に自信を見せた。
最高速度を時速85キロメートルに抑え、都市部での利用に特化している(メキシコ初の国内開発EV「サクア」)
首都メキシコシティでも少しずつ目につくようになってきたEVは米テスラ派と、中国・比亜迪(BYD)派にほぼ二分される。
ただ、北部国境地域を除けば最低賃金が日給300ペソ(2300円強)未満にとどまるメキシコでは依然、EVは高根の花にとどまるのが実情だ。
最低価格はテスラが68万ペソ弱、BYDが36万ペソ弱。往年の大ヒット車、日産自動車の「Tsuru(ツル)」がいまだに走るメキシコでは充電インフラの普及遅れもあり、EVが選択肢に入ってこない。
24年のプラグインを含むハイブリッド車(HV)、EVは全体の約8%にとどまり、純粋なEVはそのうちの14%に過ぎない。
メキシコシティ市長時代から「脱炭素」を得意分野としてきたシェインバウム大統領にとって、EV普及が遅れている首都周辺の現状はブルーオーシャンにも映る。
メキシコ発のEVには先駆者がいる。2017年にプロトタイプを発売したZacua(サクア)は部品の60〜70%がメキシコ製で、価格は60万ペソ弱。最高速度を時速85キロメートルに抑え、都市部での利用に特化するというコンセプトも重なる。オリニア開発の生産拠点もサクアと同じプエブラ州に設けられる予定だ。
メキシコ国内の自動車生産台数は2024年、7年ぶりに過去最多を更新した。日米欧の自動車メーカー大手がメキシコを世界の工場と見なす一方、メキシコメーカーに対抗馬は見当たらない。
「すべて国内で開発、設計、生産する」(シェインバウム大統領)という野心的な計画がまもなく本格的に動き出す。
日経記事2025.2.7より引用
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EV小型車のコンセプトは正しくて、EUも道路事情の関係から、元々は小型車をイメージしていた。
EV大型車の場合、全固体電池の開発にまだ時間がかかる。 小型車なら、現在のリチウムイオン電池で十分であり、開発を待つ必要も無い。
特に日本では、深夜の電気料金は1/3となり、家庭の駐車場で安価に充電できる。
自動車産業での主流は、あくまでもガソリンの中古車であり、EVは元々小型車をイメージしていた。