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ドイツ銀行「欧州の株式上昇率、2025年は米国上回る」

2025-02-06 04:53:10 | 世界経済と金融
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ドイツ銀行欧州株式・クロスアセット戦略責任者、マクシミリアン・ウレア氏
 
「US Exceptionalism(例外主義)」――。混沌とする世界経済の中で、自国第一主義を掲げるトランプ政権。米国の例外的な強さは今年のキーワードだ。そんな中、ドイツ銀は欧州株の意外な強さを主張する。欧州株式・クロスアセット戦略責任者、マクシミリアン・ウレア氏に背景を聞いた。
 
 
 

――2025年は欧州株が米国株をアウトパフォームすると見ていますね。

「24年は突然のフランス総選挙や英国で政権交代があり、ドイツ経済は低成長という不安定な環境にあった。こうした状況を投資家は米国と比較し欧州株の懸念材料と捉えた。

一方で米国は11月に大統領選挙を控え、市場ではトランプ氏の勝利や共和党が上下両院を制した場合、欧州株に悪材料となるが、米国株に追い風になるとの見方が固まってきていた」

 

「投資家の米国志向が強まったが、その一方的なポジショニングは米大統領選の前から始まり、実際には米大統領選当日にピークに達したと見ている。

つまり、市場はすでにトランプ政権誕生の追い風と欧州が抱える多くの問題を織り込んでいる」

 

「もっとも欧州が抱える問題は実際には改善している。ドイツで突然実施されることが決まった2月の総選挙を市場ではポジティブに捉えている。

結果に関わらず、ドイツの財政支出の拡大につながる可能性が高いと考えている」

 

 

――具体的にはどのように財政拡大が起こるのでしょうか。

「3つの道筋で実現の可能性がある。財政支出の構成が社会支出から失業対策に変わる。または支持率で首位に立つ最大野党のキリスト教民主同盟(CDU)などが求める財政拡大を妨げている『債務ブレーキ』の改革が進む。

もう一つのオプションがウクライナでの戦争開始時に設立した1000億ユーロ(約16兆円)の基金のオフバランス化だ」

 

「これら3つの要素が組み合わさる可能性は非常に高い。つまり、財政支出が増え、ドイツ国内の投資と成長を支える可能性がある。欧州最大経済国の改善は欧州のセンチメントにとってポジティブだ」

「欧州では昨年の夏ごろから(経済指標を市場予想と比較した)サプライズ指数が改善傾向にあり、実体経済も上向いている。そして中国は25年度に前年より約10%多く財政支出すると見ており、これは無視できない規模だ」

 

「金利環境も依然として米国は欧州を上回っており、欧州株のリスクプレミアムは米国よりも優位な状況にある」

 

 

――各国主要市場別やセクターで見るとどうでしょうか。

「各国の経済状況を理解することは重要で、これが市場の誤解を生みやすい点だ。我々は過去2年間、独株価指数DAXに強気な姿勢で臨んできたが独経済の低成長が続くなか反対意見も多かった。

しかし実際には2023年初頭から50%上昇したDAXは、イタリアに次いで最もパフォーマンスの良い指数だった」

 

「DAXに採用されるようなドイツ企業は、ドイツ国内で販売するよりも米国への輸出が多い。構成銘柄を見ても例えばソフトウエアのSAP。昨年はこの1社がDAXの上昇率に8%も貢献した」

「イタリアでもウエートが最も高いのは金融。金利高の恩恵を受けてきた。英国もヘルスケア業種の割合が高く。非常にバランスの取れたセクター構成となっている。

 

ボラティリティーも低い。中国からのポジティブなニュースがあれば高級消費財へのエクスポージャーが恩恵を受ける」

 

 

――ドイツでは歴史的に政治の変化や改革が成長の引き金となったと指摘しています。市場が期待している改革の分野はどのあたりでしょうか。

「現時点では景気刺激策に対する漠然とした期待にとどまっているが、例えば自動車産業が挙げられる。

自動車産業への支援を強化すべきだとの声があるがまだ臆測に過ぎない。自動車産業はグローバルな産業であるため、自動車産業への刺激策はその一部分にしか役立たないかもしれない。

 

2月の総選挙後にドイツで成長に向けた推進力が生まれ、3月に中国の十分な景気刺激策の発表があればそれが引き金となり状況が変化してくだろう」

 

 

――長期的な視点で見た場合、欧州地域でロシア産の安価なガスを利用し、中国市場で販売するというドイツ経済の基本モデルは崩壊しているように見えます。

「長期的にエネルギー価格を下げることについて多くのアイデアが検討されている。エネルギーへの課税を減らすというアイデアもある、実現すれば効果的だろう」

「中国に関しては、完璧な解決策を見いだすのは難しいが、米国の力強い成長は中国への輸出減をカバーしてきた。

 

ある地域の輸出が減る中で別の地域に輸出をシフトさせている。ドイツ経済を単にエネルギーを輸入して中国へ輸出するモデルとして見るのは一面的で状況はもっと複雑だ」

 

 

投資妙味、コンセンサスの裏側に(記者の目)

世界の金融各社の2025年の市場見通しで「米国1強」という結論には容易にたどり着く。各社の公式見解である「ハウスビュー」では欧州株の上昇を控えめにみるが、実際欧州市場関係者に話を聞くと意外に強気な声は実は少なくない。

ここ数年は特に年初時点の市場のコンセンサスは大きく裏切られてきた。

 

1年前の24年初め。インフレを克服しつつあった米国で米連邦準備理事会(FRB)は年6回程度の大幅な利下げが見込まれていたが、実際には年後半の3回にとどまった。

世界の金融市場はコンセンサスが修正される過程で年央には米国経済の減速懸念から日経平均株価が4000円も下げる「ショック」にも直面した。

 

ドイツ銀のウレア氏に欧州強気シナリオのリスクを聞くと「中国の政策が期待外れに終わること、ドイツの連立協議が長引く」点を指摘した。

「もう一つ、あまり懸念していないが、欧州金利が長期間高い水準で推移すること」も付け加えた。

 

強気シナリオの前提もまた疑う必要もある。25年に4回程度と見込まれている欧州中央銀行(ECB)の利下げもまた市場のコンセンサスだが、インフレ懸念の強弱を見ながらこのシナリオも定期的に点検が必要だ。

硬直的に「米国株一辺倒」シナリオに安住することは資産分散や他の資産の上値を取り込めない点でリスクを抱える。投資妙味はいつもコンセンサスの裏側に隠されている。

(ロンドン=山下晃)

 

 

Maximilian Uleer キャリアの大半をマルチアセット・ポートフォリオ・マネージャーとして過ごす。現職の前はドイツ銀行トータル・リターン戦略グループを率いた実務派。マーストリヒト、マドリード、ロンドン、ベルリンで学び、仏ビジネススクールのINSEADでエグゼクティブMBAを取得。
 
 
 
 
 
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日経記事2025.2.6より引用
 
 
 


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