図書館の子供書籍でこんな本があった。
タイトルは「到着しました!」。四人の子供たちがドイツに移住してからの一年の様子を描いたものだ。
裏表紙をちらりと読んでぎょっとした。「Fukushima」という語を見つけたから。
ゆなちゃんは福島から引っ越してきてデュッセルドルフに住んでいるそうな。
他の三人はシリア、エジプト、コソボからだ。どの国も政情不安定か貧しいか、あるいは更なる高収入を求めてドイツ移住を希望する人々が多い国だ。
そのなかに日本人が取り上げられているのはちょいと嫌な気持ちにならざるを得ない。
とにかく、借りて読んでみた。
著者はドイツ人のようだ。
ハンナ・ショット
驚いたことに、かなり正確に日本人の特質などが表現されていた。綿密な取材をしたのだろうか。
西洋人の勝手な想像の日本人像、ではない内容で感心した。
ゆなちゃんは原子力発電所の事故のせいで、両親とドイツに移住してきたらしい。
実在の人物なのだろうか。著者の想像なのか。事故後しばらく外国に避難している人々がいて、私の住まい周辺でもそういう日本人家庭があったと記憶している。
この本の内容では、一時避難ではない。
福島ではレストランを経営していた料理人のお父さんで、ドイツ入国してから早速仕事探しをしていたようだ。
ドイツ人配偶者でもなく、企業で採用が決まっているわけでもない人が外国入国後すぐに労働許可が下りるのは難しい。
一年後、彼は料理人として採用が決まった。
その一年間、この一家はどういう滞在許可で暮していたのかしら、などと突っ込みどころ満載・・・とか書いてみたりして。
もしかして、福島事故難民枠のようなものがあったのだろうか?
っていうか、この話、フィクション?ノンフィクション?
挿絵も素晴らしい。
ゆなちゃんが「リス」のドイツ語がとても発音が難しい、と言っている場面があり、そこの描かれているリスの挿絵は日本の漫画風。
フォルカー・コンラートさん、もしかして、日本漫画ファン?
日本人にとってぎょっとするのは、今上天皇のスーツ姿挿絵が入っていることだ。
特徴がよく捉えられて上手なのだが、日本人の感覚では現在活躍している天皇や天皇一家のイラストや漫画の存在はあってはならない、というものがある。(わたしだけ?私は特に天皇ファンではないの。一般的な感覚を持っていると思う)
その頭の部分に解説が入っている。「天皇は王冠を被らない」
それって、欧州の男性王族たちも式典以外は被らないでは?特に背広だと合わないし。
このように、子供向きの本だけれど、とても興味深い部分があって、読んでみてよかった。
ドイツ語中級者に楽に読めるドイツ語で書かれている。
日本で手に入れることができるかしら?ドイツにお住まいの方々には是非一読をお勧めしたい。