正月に入って「漱石の思い出」を手に入れ一読した。
妻夏目鏡子が口述したものを長女の夫である北岡譲が記録・編集したものである。
当時の先生としては破格の給与を貰いながら、養父などからの無心を受け借金や質屋通いをすると共に、有名な漱石自身の
癇癪によるDVや何度も三行半を突き付けられるなど苦労は相当なものだったようだ。
「猫」や博士号辞退のいきさつ、反射神経が鈍感だったこと、寝る前に怖い話を聞くのを嫌がったことなどは面白かった。
また、胃腸が悪い時には頭の具合が良かったというのも不思議である。
『いろんな男の人をみてきたけど、あたしゃお父様が一番いいねぇ』と言う通り、苦労に耐えた人生が赤裸々に生々しく
書かれているけれども底流には漱石に対する大変深い愛情が伺える。
それにしても、せめて後数年でもいいから長生きして欲しかった。
あれだけの功績を残しても、尚かつ惜しい人である。
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