Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

この夏の本

2024-08-22 16:40:47 | 

厳しい暑さの続く今年の夏。

こんなにエアコンをつけている夏ってかつて記憶にない。

朝、寒暖計で30℃を超えているのはもはや当たり前で、30℃に赤い線が届いていないと今日はちょっと涼しい、と思ってしまう。全然、涼しいわけないのに。

そんな酷暑の夏に読んだ本、3冊。

誕生日のアップルパイ』 庄野千寿子 夏葉社

「幸せな書簡集」という帯を巻いた作家・庄野潤三を支え続けていた夫人・庄野千寿子さんが長女夏子さんへの書簡集のこちらの本。

読んでいると、そこに書かれたたくさんの料理、そして夏子さんへの感謝の言葉に溢れた手紙に静かな感動が湧いてくる。

庄野潤三さんの作品のような家族のつながりの姿に、彼の作品を思い、この家族あってこその作品なのだとも改めて思う。

一日一日を大事に生きること、色々なことが起こる毎日だけれど、でもすべてを大切に受け止めること、その連続が生きていくことなんだなとこの書簡集を読んでいると素直に感じる。

読み終わり、本のカバーを外してみた時に思いがけない一文に気付き、ドキドキした。

家守奇譚』 梨木香歩 新潮文庫

7月の終わり、所用で上京してきていた友人と久しぶりに会って愉快なひと時を過ごした。

彼女は午後から仕事なので、午前中に宿泊していたホテルのロビーで待ち合わせまだ早い時間だったので自由学園明日館までぶらぶら歩き喫茶室でお茶をし、それから池袋に戻ってランチを食べた。

積もった話を呼吸する間も惜しいようにお喋り。

こっちの話からあちらの話、と話題も次々出て、その中でサルスベリの話が出た。

私は関東で暮らすようになってサルスベリを目にすることが多くなった、という話をした。

子どもの頃、サルスベリはお寺で咲いているのを見るのが多くて庭木で見かけるのはまれだったという記憶があるという話をしたら、彼女がサルスベリと言えば・・・と紹介してくれたのがこの梨木香歩著の「家守奇譚」だった。

読んでいると、その景色が目に浮かんできて、この世の隣にあるこの世とは違うもう一つ別の世界に迷いこんで、迷うことが楽しい。

こっちとあっちと・・・。

朝のあかり』 石垣りんエッセイ集 中公文庫

「朝のあかり」という題の詩人・石垣りんさんのエッセイ集。

思わず背筋をピンと伸ばして、石垣りんさんの詩作に対する覚悟、その地に足をつけた生活、まさに「凛」とした人間の姿がエッセイの中から浮かび上がる。

暑い夏の読書時間に爽やかな風が吹き抜けて、この本に出会えて幸せだ、と思う。

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オリーブの実

2024-08-13 22:08:40 | 自然

毎年、花は咲くけれどなかなか実がならなかったオリーブの木に今年は幾つか実がついた。

それが段々大きくなってきて嬉しくて仕方ない。

大きくなってきた実の上にパラパラついているのは小さなままの実たち。  

 

下の方にも大きくなっている実に気付き嬉しくなる。

上の方にはこれからひょっとしたら大きくなるかもしれないオリーブが一つ。

 

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夏の日、上野で。

2024-08-08 22:32:45 | 展覧会・建築・器

思いがけず、ぽつっと空いた夏の日。かねてより見たかった西洋美術館で開催中の『内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙』に上野に出掛けた。

会場:国立西洋美術館 企画展示室

会期:2024年6月11日(火)〜8月25日(日)

開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は9:30~20:00)
※入館は閉館の30分前まで

入場料:一般1,700円、大学生1,300円、高校生1,000円

2019~2020年度に3期にわたって開催された小企画展の2期、3期の展覧会で内藤コレクションに初めて接し、その作品の一葉一葉に感激し深く感銘を受けたことはいつまでも忘れられない鮮烈な思い出となって心に残っている。

そして同時に数十年にわたって収集したコレクションを一括してこの国立西洋美術館に寄贈された内藤裕史氏に感動した。

そのコレクションの大多数が一堂に展示されるという『内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙』が8月25日まで開催中で見に行くのを楽しみにしていた。

記事⇒内藤コレクションⅡ内藤コレクションⅢ

過去の内藤コレクション展の1番目『ゴシック写本の小宇宙— 文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵』は見損ねてしまっていたので、この展覧会でその折に展示されたものも見られると期待もした。

印刷技術のなかった中世ヨーロッパで薄く加工された獣皮紙に、すべて人の手によってテキストを筆写し、ただそれだけでなく中には余白に美しく華やかな装飾として彩飾が施されたものも多く、それらの前に立ってその一葉一葉を見ているとそこに込められ費やされた労力、時間、アイデアの膨大さに圧倒される。

暗い修道院の一室で一心不乱に羽根ペンを動かしている背中が見えるよう、などと妄想を膨らませてみる。そしてまた、こういう豪華な写本を作成した教会、また王族・貴族といった人々の財力についても想像してしまう。

これだけのコレクションを一堂に見られるとは、まさに宝物のいっぱい詰まった箱の中をのぞいたよう!

作品の保存のためだろうと思うが、冷房が効いていて展示室の中は酷暑の夏を忘れ、寒くなるほどだったが、気持ちは美しいものを堪能した喜びに満たされた。

この展覧会でも一部の『撮影禁止』作品を除き、撮影できるようになっている。

思わずへへっと笑ってしまうような獣皮紙の隅に書き込まれた人の顔、鳥、魚、動物などがあるかと思えば、その時代の遠近法で描かれた風景、その時代の植物、装飾の数々に魅了された。

  

こんな風に修道士たちが写本を書架において楽譜を指し示しながら聖歌を歌っていたんだなあ。

おっ、楽器たち~♪

   

真面目な風で、でもなんとなく笑っちゃう。

  

色んな人、動物たちが次々登場。

  

こんな鳥が歌い、花が咲き、そして人々の向こうに広がるその当時、中世の風景。

    

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