本の名前はつとに有名で勿論知っている、著者の名前も知っている、登場人物の一部の名前も聞いたことがある、他の文学作品でも目にしたことがある、しかしその書物を未だかつて読んだことはない、という代表作が私にとってはダンテの『神曲』である。
何の本だったかはもう忘れてしまったが、その中にイタリアの鍜治場職人が仕事をしている時にこのダンテの『神曲』の中の詩を暗唱しながらトッテンカンと仕事をしているという描写を読んで、市井の人々の間にもそんなに深くしみわたっているのかと吃驚したことがあった。
それ以来、これはいつか読んでみたい本、読むべき本の中の一冊になっていた。
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『神曲』(しんきょく、伊: La Divina Commedia)は、13世紀から14世紀にかけてのイタリアの詩人・政治家、ダンテ・アリギエーリの代表作である。
地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部から成る[1]、全14,233行の韻文による長編叙事詩であり、聖なる数「3」を基調とした極めて均整のとれた構成から、しばしばゴシック様式の大聖堂にたとえられる。イタリア文学最大の古典とされ、世界文学史にも重きをなしている。当時の作品としては珍しく、ラテン語ではなくトスカーナ方言で書かれていることが特徴である。~Wikipediaより
しかし、相当な覚悟がないとページが開けないなあ、と思っていたところ、河出書房新社から刊行が始まった『須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修』の第1冊目が『神曲 地獄篇: 第1歌~第17歌 』と知り、思い切って読んでみることにした。
本の紹介には
<大詩人ダンテが著した、世界最大の古典『神曲』が須賀敦子と藤谷道夫の師弟共訳による新訳で新しい世界を開く。驚くべき新解釈満載! >
とある。
ページを開くと歌があり、そのあとに詳細な注釈が各歌毎に続く。
これは読み方にも注意せねばと思う。というのは、注釈が膨大で読みでがあるので、それを読んでいるうちに「はれ?何を読んでいたのだっけ?」と思うこと度々なのだ。
それでここは、とにかく一度歌を読んでから、また戻って細かく読み直しつつ、読み進めるようにするべきなんじゃないかと思い始めた。
迷いながら恐る恐る深い森の中に足を踏み入れたような気がしている。
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神曲 地獄篇: 第1歌~第17歌 (須賀敦子の本棚 1) (須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修)
ダンテ (著), 須賀敦子 (翻訳), 藤谷道夫 (翻訳)
河出書房新社
内容紹介
須賀と愛弟子の共同作業が結実した
画期的な新訳版『神曲』誕生!