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公式サイト
2007年/ドイツ・オーストリア/96分
原題:DIE FALSCHER
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
出演:カール・マルコヴィックス、デーヴィト・シュトリーゾフ、アウグスト・ツィルナー、マルティン・ブラムバッハ、アウグスト・ディール
これも『新所沢パルコ開館25周年記念スペシャルセレクション』Let'sシネパークで鑑賞。観客もかなり多くまた男性が多かったのは、やはり題材とアカデミー賞外国語映画賞受賞という作品だったからだろうか。素晴らしい作品だった!
第二次世界大戦中のユダヤ人収容所での話ということでその重さについては覚悟していたつもりだが、やはり重くそして重厚な作品だった。特に絶望的な状況の中で「何としても生きること」「生き抜くこと」というメッセージが通奏低音のようにずっと作品中に鳴っていて、それが観ていてひしひしと伝わってくるのだ。
私は「ベルンハルト作戦」について全く知識がなかったので、『この話が実際に強制収容所で贋造(がんぞう)に携わった印刷技師アドルフ・ブルガーの著書「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場」を原作としフィクションを加え映画化された(公式サイトより)』と知り、実際この作戦が成功していたら世界はどうなってしまっていただろうか、と戦慄が走った。
そしてこの作品の中で果たす音楽の役割、それが収容所内でどう使われていたかについてはより深く衝撃を受けていた。
この作戦に協力させられて収容所内で贋札作りにいそしむ彼らに余計な音が耳に入らぬようにと・・それは壁一つを隔てたところにいる彼ら以外のユダヤ人たちの出す音についてである・・音楽が流されているのである。この作品では流されていた曲は全て歌曲、聞いていた限りイタリア語だった、それは同盟国だったから?それともこの中では妙に明るく、もっと言えばあっけらかんと響くから?それは時に辛すぎて耳をふさぎたくなる。特に「マリア・マり」は何度か流れ、その曲に抱いていたイメージとのギャップが苦しかった。そして予告編で耳にしていた「星は光りぬ」はオーケストラ伴奏だったのだが、作品中では謝肉祭の出し物の一つとして無伴奏で歌われるのだ。なんという歌だったろう!
音楽は音楽なのに、その持つ両面が鮮やかに対比させられ、諸刃の剣として目前に突きつけられる。
そしてもう一つ、作品中でタンゴが効果的に使われていたのも印象に残った。