いつものように本屋大賞関連の本を探していたんだけど、今回はまだ読んだことのない作家さんの小説をということで選んだのが、原田マハの『キネマの神様』。
同作家の2013年本屋大賞の第3位だった「楽園のカンヴァス」をとも思ったんだけど、ルソーやピカソとか美術の世界の話でなんだかちょっと取っ付きにくいということで、いかにも映画好きが食いつきそうな本作をチョイスする。
ビルの管理人をしている父が心筋梗塞で入院してしまったため、代わりをすることになってしまった娘の円山歩39歳独身。
今日も薄暗い管理人室にこもり、もてあます時間をDVDでの映画観賞に費やしている。
つい最近まで国内有数の再開発企業「アーバンピーク東京」で、課長として都心部にシネコンを作るプロジェクトを中心となって推し進めてきた歩にとって、身に覚えのない噂による辞職は突然やってきた。
そんな十七年間務めた会社を辞め、途方に暮れていた歩のもとに、ある日突然思いがけないところから仕事のオファーが舞い込んでくる・・・。
管理人室で映画好きの父親の、今まで見てきた映画の感想を書いたノートを読んだことから始まる奇跡のようなお話。
映画好きの人たちすべてにそそがれる、キネマの神様からの柔らかく心地よい光に身を委ね、ただただ映画が好きでよかったと思わせてくれる物語。
登場人物のほとんどが映画が好きという、夢のような環境の中で語られる、様々な映画の批評がどれも素晴らしく、つたないながらも同じようにレビューを書いているものにとって、書き続ける動機を改めて自分で実感できる幸せの、なんと嬉しいことか。
そして世代を超えて愛され続ける総ての映画作品が、たまらなく愛おしくなってくる。
ほんとに映画っていいよなあ(^^)
そして後半で訪れるクライマックスでは、ぼろ泣きの衝動が押し寄せる。
2,3行読んでは本から目を離し、流れ出しそうになる涙をこらえ、しばらくインターバルを置き、また本に目を移し2,3行読んでは本から目を離し、けっして電車の中にいる人に泣いてる顔を見られないようにという行為を繰り返すはめに。
これもう反則だよ(^^;)
そしてあっという間に読み終えて感じるのが、嘘みたいだけどキネマの神様の存在。
なにが凄いかって、後半の一番盛り上がるところを読んでいるとき、まさにiPodから流れてきた曲が、パーシー・スレッジの「男が女を愛するとき」だった。
「ジャージ・ボーイズ」を観た後に録った「60's 洋楽ヒッツ」の中に偶然入っていた一曲。
このタイミングでどんだけいい曲流してくれるんだよ。
しばらくは何かちょっとしたことでもいいことがあると、神様のご加護だなんて思ってしまう自分に笑ってしまう。
「キネマの神様、これからも素敵な映画をいっぱい見せてくださいね」