ブリットの休日

大好きな映画や小説の感想や日々の他愛ない話と、
聴神経腫瘍と診断された私の治療記録。

青山 美智子『ただいま神様当番』あらすじと感想

2024年05月19日 | 本(小説)


 偶然神社で猫に出会ったことで幸せの歯車が回り出す、青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で 』に続いて、『ただいま神様当番』を読む。

今回も現状に行き詰まりこじれたOL・小学生・高校生・大学非常勤教師・零細企業社長の5人の登場人物たちが奏でるオムニバス仕立てです。

 この5人に共通していることは、朝同じ時間のバスに乗るためにバス停に並ぶこと。

物語はある朝、一番にバス停に来るとバス停の台に落とし物があるのを発見する。

それは今その瞬間一番自分が欲しいもので、それぞれの主人公たちは誘惑に抗えずその落とし物を持ち帰ってしまう。

そして翌朝目が覚めると、腕に大きく「神様当番」という文字が書き込まれていてる。

何事かと呆然としているなか、部屋に見知らぬ小さなおじいさんが座っていて、いきなり「お当番さん、みーつけた!」と言ってくる。

おじいさんは自分は神様なので、お願い事を聞いて欲しいとねだり、それぞれに「わしのことを、楽しませて」とか、「わし、最高の弟が欲しい」などの難題をふっかけ、出来なければその「神様当番」の文字はずっと消えないと言う。

5人はそれぞれ戸惑いながらも、神様の願いを叶えようとするが・・・。

 猫に続いて、今回は本当に神様が出てきます(^^)

一見駄々っ子のように主人公たちに願い事を要求するうえに、時には体に入り込んで勝手に体を操ったりまでもしてくる、とんでもな神様。

それでも後から想えば、すべてそれは自分の心の声、自分が欲していたモノだと次第に気づかされていく。

 それぞれ5人のストーリーの中で、私のお気に入りはイギリスから日本語の美しさに憧れて、ある大学の非常勤教師としてやってきたリチャード・ブランソンの話。

受け持ったクラスの生徒たちはことごとくやる気がなく、言葉遣いも自分が思っていた美しい日本語ではなく、「ぶっちゃけマジ無理」とかよく分らない若者言葉にも失望するリチャード。

そこで神様の願いは、「わし、美しい言葉でお話がしたい」。

 主人公がイギリス人ということで、リチャードが最初に腕に書かれた「神様当番」という文字を見て、思わず「・・・So cool・・・」とつぶやいたり、神様とのやりとりも他の4人と全く違うリアクションがとにかく面白く、この願い事も抽象的でどうかなえるのか予想がつかなかった。

そしてたどり着いた先の”スピークとトーク”

素敵です(^^)

 青山 美智子さんが紡ぐ物語の結末は、最後には必ず主人公たちに幸せをもたらす。

そう、その結末は確定なんです。

そんな予定調和的なストーリーに、私はなぜ惹かれるのか。

安定した心地よさも素晴らしいが、それは読後に改めて自分の心の声に耳を傾け、今自分が本当にやりたいこと、自分に必要なことを考えさせられ、そんなことを考えている自分にエールを送っていることがなによりも楽しいから(^^)

 ただねえ、今回男子高校生が主人公で、神様の願い事は「わし、リア充になりたい」という話があるんだけど、ツイッターだけの関係だった女子高生とのキュンキュンするほどの恋バナで、さすがにこの年になってこんな話を読まされるのはキツいなって思ってしまった(笑)

 さあ、次は何を読もうかな(^^) 





サム・クック『Twistin’ the Night Away』

2024年05月12日 | 音楽


 親知らずを抜歯して一ヶ月がたった現在、完全に痛みはなくなったので、今回はまたお気に入りの曲を紹介します(^^)

 つい先日、久しぶりに『インナースペース』という映画を観たんだけど、その中で使われた曲がとにかくご機嫌で、今毎日聴いている。

その曲が、劇中マーティン・ショート演じる気弱な青年ジャックが、突然ハイテンションで踊りまくるときに流れる、サム・クックの『Twistin’ the Night Away(ツイストで踊りあかそう)』。

サム・クックが1962年に発表した大ヒット曲で、またまた60年代のソウルミュージックがお気に入に(^^)

「インナースペース」のエンディングでは、サム・クックからロッド・スチュアートに代わり、よりワイルドな曲調になり、さらに気分が上がるんだよねえ。

 他にもたくさんのアーティストたちにカバーされた名曲なんだけど、日本ではトータス松本がカバーしていて、なんとジャケットの写真までサム・クックとそっくりに作ってて、思わず笑ってしまった。

サム・クックをリスペクトし、ノリノリで軽やかに歌うトータス松本の「ツイストで踊りあかそう」も、また素晴らしいです。

 月曜日から仕事だと、ちょっとブルーになっている人たちにぜひ聴いて欲しい曲です(笑)

 また、「インナースペース」でデニス・クエイド演じるタックと、メグ・ライアン演じるリディアの思い出の曲として、サム・クックの曲がもう一曲、『Cupid』が流れるんだけど、この曲も素敵な曲です(^^)


青山 美智子『猫のお告げは樹の下で 』あらすじと感想

2024年05月05日 | 本(小説)


 青山美智子さんのデビュー作『木曜日にはココアを』に続く第2作目『猫のお告げは樹の下で 』を読む。

とにかく読後の安らぎと幸福感が素晴らしく、以降続けて彼女の作品を追っかけることになりました(^^)

 物語はオムニバス仕立てで、現状に息詰まってる人やこじれた人が登場し、何かに引き寄せられるようにある神社を訪れます。

人気もあまりない神社だけど、境内は綺麗に掃除が行き届いており、拝殿から少し離れたところに大きな”タラヨウ”の樹があり、その横にあるベンチにみな腰掛け一息つく。

そこでふと何かの視線を感じそちらを向くと、一匹の黒い猫が目に入る。

”みくじ”と呼ばれるその猫に、登場人物たちはなにげに悩みを語りかけると、みくじはいきなり樹の周りを凄い勢いで回り始める。

何事かと驚いていると急に走るのを止めて、とん、と樹に左足をかける。

すると頭上から一枚の葉っぱがヒラヒラと落ちてくる。

拾い上げて見たその葉っぱには”ある言葉”が刻まれていた。

それは悩みを抱える人たちへの、みくじからの”お告げ”。

 失恋から立ち直れない美容師の若い女性に、中学生の娘ともっと仲良く話がしたい父親や、転校してきた学校でクラスメイトとなじめない小学生など、7人が登場する。

そしてそれぞれがみくじからタラヨウの葉に書かれた”お告げ”を受け取り、7つのストーリーが展開する。

お告げを受け取った人たちは、戸惑いながらもその意味を考えることで、滞っていた現状が静かに動き出していく。

 それぞれが抱える誰にでもあるだろうごく身近な悩みに、読んでいる方は自然に共感し、その先に待つ幸せの予感を感じていく。

読み進めていくうちに、自分が今抱えている悩みさえも、主人公たちと一緒に薄れていくような安らぎを感じ、柔らかな木漏れ日を受けているような心地よさに、心が温かくなっていく。

どんなに悩んでいても、自分を取り巻く状況は変わることはなく、まず自分が何かを変えなければならない。

ちょっとしたきっかけ、そしてちょっとした心の持ちようでこんなにも気分が晴れていくものなんだと感心する。

さらにこの読後の幸福感に加え、青山美智子さんの作品すべてに通じることなんだけど、オムニバスと言うことでひとりのエピソードにかかるページ数が30ページほどで、とにかく読みやすい(^^)

なんでこんなに少ないページ数で、こんなに感動的なストーリーを濃厚に描けるのか、ほんとに驚きです。

そしてそれぞれの主人公たちが、絶妙に他の話にちょこっとだけ顔を出すのも楽しいんですよねえ。

 ショートストーリーでとっても読みやすく、最近元気が出ないとか、なんかほっこりしたいっていう人には超おすすめの作品です。


Amazonプライムで『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観る

2024年05月03日 | 映画

 
 GWに入り、Amazonプライムで『ゴジラ-1.0』が観れるようになってるか確認してみる。

あった!しかもプライム会員無料だよ(^^)

おまけに『ゴジラ』映画シリーズとして、1954年公開の最初のゴジラ作品『ゴジラ』に『ゴジラの逆襲』も。

そして私の一番好きなゴジラ作品『モスラ対ゴジラ』に『ゴジラ対ヘドラ』まで観れるようになってる(^^)

 これは朝から晩まで一挙観だよ、なんて思いながら他にも何かないかと探してみる。

するとトップ10(日本)というところに、一位で『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』という作品を発見。

解説を読むと目玉のおやじの70年前のストーリーのようだ。

水木しげる生誕100年記念ということで製作された作品、なんだか面白そうなので観てみることに。

 鬼太郎の誕生というと、実際には読んだことはないけど、水木しげるの『墓場の鬼太郎』の墓場で墓石の下の土の中から這い出てくる鬼太郎の姿が描かれた漫画のシーンが浮かんでくる。

その原作からさらにさかのぼったストーリーを創作しているんだろうけど、まずこの後付けのように製作されて、それまでの過去の作品のイメージまで影響するようになってないかが心配になる。

 というのも、話は突然変わるけど、『ルパン三世』ってみなさん知ってますよね。

変装の名人でもあるルパン三世なんだけど、あのおなじみの顔までもが変装している顔だったというのをご存じですか?

原作にもそういう設定があるそうだけど、次元や五ェ門も知らない本当の彼の素顔を知っているのは、峰不二子ただひとりだけ。

アニメシリーズの「ルパン三世 PART5」の最終回で、なんとラストでルパンがマスクを取るというシーンがあり、まあその衝撃といったら大変なもので、観るんじゃなかったと思ってしまった(^^;)

 話を鬼太郎に戻し、本作は目玉のおやじの話なんだけど、前半は横溝正史ばりの跡目争いをする一族のゴタゴタに巻き込まれるという、よくあるミステリー仕立てで、絵柄もふくめ水木しげる感も薄めで、意外に面白いが「これ本当に鬼太郎?」って気分に。

そして話はさらに一族間のドロドロの話に発展し、あまりの設定に「鬼太郎の話にこんなエピソードいる?」って思わず引いてしまう。

それでもラストはしっかり原作のシーンにつながりエンドロールへ。

 ここではっきりと確信します。

本作を製作された方たちに、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」への愛がない(キッパリ)(笑)

エンドロールでそれらしい曲は流れていたけど、なぜ熊倉一雄の「ゲゲゲの鬼太郎」を流さないんだ!

庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』を観てないのか!

 結局見終わった後、グロいエピソードを含め私的には観るんじゃなかったという感想になっちゃいました。

知りたくない情報、知らない方が良かった情報っていうか、鬼太郎の出生の秘密は謎のままでよかったんじゃないかなあ。

本作が好きなファンの方、ごめんなさい(^^;)

 さあ!次は『ゴジラー1.0』を観よう!