さっちゃんは自分の年齢も知りませんし関心もありません。
自分が年寄りだという自覚も多分ありません。
ましてや、今日がさっちゃんの誕生日だということも覚えていません。
誕生日が何か特別の日だとか、お祝いをしてもらえる寿の日だとかも思ってないでしょう。
どちらかと言うと、僕自身も自分の誕生日にはあまり関心がありませんしね。
それはもちろん、祝ってもらうとくすぐったくて嬉しいものですが。
でも、ささやかにではありますが、さっちゃんの誕生日をお祝いしてあげようと思いました。
スーパーへさっちゃんと買い物に行った際に、ちゃんとしたケーキを売っているコーナーでチーズケーキを買いました。
ケーキ用の小箱に入れてくれ、小さな保冷剤も付けてくれます。
真っ白で半球状のチーズケーキ。
帰途の夕焼けも綺麗でしたし、空き地の上を飛ぶ蝙蝠とも、今年2度目か3度目の出会いがありました。
買い物に出かける前、スーパーに着いた時、僕はさっちゃんに「おしっこ行く?」と聞きます。
家を出てから帰って来るまで、さっちゃんに尿意は起きませんでした。
家に着くと、さっちゃんのザックを下ろしてあげます。
チーズケーキとホウレンソウが入っています。
僕もザックを下ろし、食材を冷蔵庫に収めなければなりません。
そんな時でした。
台所の冷蔵庫からダイニングを挟んだ南側のフローリングの部屋。
そこは以前は僕の仕事部屋だったのですが、仕事をしなくなってからは雑然と物置状態になっています。
その部屋の窓脇でさっちゃんがズボンとパンツを下ろした姿が僕の視界に飛び込んできました。
あ、あ、あ、あ、あ!
さっちゃんのところに駆けつける僕。
でも、時すでに遅し!
板の間の上には液体が広がっています。
優に新聞紙1枚分はあるでしょう。
両脇にはまだゴミ出ししてない新聞紙や雑誌の束が置いてあります。
それが濡れてるかもしれません。
透明な液体ですから、どの範囲で溜まってるのかよく分かりません。
僕は咄嗟にさっちゃんのズボンと靴下をそのまま脱がせ、そのズボンでまずは床を拭きました。
そして、大きな声でさっちゃんに「動いちゃダメだよ」「じっとしててね」と言って、
濡れたズボンを風呂場まで持って行き、雑巾とこれから洗濯するはずだった数枚のタオルを取って来ました。
さっちゃん、聞き分けよく何時までもじっとしてるはずもありません。
動こうとするので、そのたびに僕の声は大きくなり、強い命令口調になってしまいます。
床上のおしっこの量は半分以下にはなったでしょうが、まだビチョビチョ。
そんな板の間の上を裸足で歩いて、ダイニングへ行こうとするんです。
屈んで作業している僕はさっちゃんの足首を掴みます。
「動いちゃダメって言ってるでしょ」、悪いとは分かっていても、僕の言葉には怒気が加わります。
それでも動こうとするさっちゃん、仕方なく僕はさっちゃんの足裏をタオルで拭こうとします。
足首を掴まれて動けなくなったさっちゃんは僕に怒りを向け、酷い言葉を浴びせ、叩きます。
そんなこんなで、なんとか最低限の足裏拭きをこなしました。
さらに僕は、さっちゃんの手を掴んで強く引き、お風呂場へ連れて行きました。
さっちゃんは抵抗しますが、何とかお風呂場へ。
そこで足をシャワーで洗います。
さっちゃん、最初は水だったので「冷たい」と怒り、お湯で洗ってる最中も僕の頭を叩きます。
その後、さっちゃんは寝室へ。
さっちゃんがその場に居なくなったので、僕はじっくりと板のフローリングを拭きました。
お風呂場ではズボンやタオルを繰り返しお湯洗いし、浸けておきます。
明日にでも、洗濯しなければなりませんね。
さっちゃんは時折そんな僕のそばに来て、まだ怒りが収まらないんでしょう、何やらブツブツと文句を言います。
本当ならすでに始まってるニュージーランド×イングランドの準決勝をのんびりと観たかったんですが、それどころではありません。
とりあえずつけてあるテレビのその試合をさっちゃんが観ています。
なんとかさっちゃんのおしっこ騒動はひと段落つきました。
さっちゃんが家にいる時にトイレ以外でおしっこをしたのは初めてのことです。
僕は何度も何度も大きな声でさっちゃんに命令してしまいました。
強い口調で、怒気もたっぷりと含まれていたように思います。
事態を理解していないさっちゃんの的外れな文句や事態解決への徹底的な非協力には僕も心底怒りを抱きました。
壁とかを何度強く叩きつけようと思ったことでしょう。
さっちゃんに真っ当な対応を求めるのは無理だと、理屈では分かっていても、気持ちはすぐには納得しません。
オールブラックスも負けてしまい、僕も気持ちを理屈で押さえこんだり宥めたりできる十分な時間が持てました。
なにしろ今日はさっちゃんの誕生日なんですから。
僕はさっちゃんに「さっきは大きな声を出してご免ね」と謝りました。
さっちゃんはすでにこの騒動を忘れているのでしょうね。
それから夕食前に、ささやかな誕生祝いを行いました。
チーズケーキを食べただけですけれどね。
ちなみに、さっちゃんが僕の頭を叩いてもまったく痛くはありません。
加減してくれてるのか、単に力が弱いだけなのか。
自分が年寄りだという自覚も多分ありません。
ましてや、今日がさっちゃんの誕生日だということも覚えていません。
誕生日が何か特別の日だとか、お祝いをしてもらえる寿の日だとかも思ってないでしょう。
どちらかと言うと、僕自身も自分の誕生日にはあまり関心がありませんしね。
それはもちろん、祝ってもらうとくすぐったくて嬉しいものですが。
でも、ささやかにではありますが、さっちゃんの誕生日をお祝いしてあげようと思いました。
スーパーへさっちゃんと買い物に行った際に、ちゃんとしたケーキを売っているコーナーでチーズケーキを買いました。
ケーキ用の小箱に入れてくれ、小さな保冷剤も付けてくれます。
真っ白で半球状のチーズケーキ。
帰途の夕焼けも綺麗でしたし、空き地の上を飛ぶ蝙蝠とも、今年2度目か3度目の出会いがありました。
買い物に出かける前、スーパーに着いた時、僕はさっちゃんに「おしっこ行く?」と聞きます。
家を出てから帰って来るまで、さっちゃんに尿意は起きませんでした。
家に着くと、さっちゃんのザックを下ろしてあげます。
チーズケーキとホウレンソウが入っています。
僕もザックを下ろし、食材を冷蔵庫に収めなければなりません。
そんな時でした。
台所の冷蔵庫からダイニングを挟んだ南側のフローリングの部屋。
そこは以前は僕の仕事部屋だったのですが、仕事をしなくなってからは雑然と物置状態になっています。
その部屋の窓脇でさっちゃんがズボンとパンツを下ろした姿が僕の視界に飛び込んできました。
あ、あ、あ、あ、あ!
さっちゃんのところに駆けつける僕。
でも、時すでに遅し!
板の間の上には液体が広がっています。
優に新聞紙1枚分はあるでしょう。
両脇にはまだゴミ出ししてない新聞紙や雑誌の束が置いてあります。
それが濡れてるかもしれません。
透明な液体ですから、どの範囲で溜まってるのかよく分かりません。
僕は咄嗟にさっちゃんのズボンと靴下をそのまま脱がせ、そのズボンでまずは床を拭きました。
そして、大きな声でさっちゃんに「動いちゃダメだよ」「じっとしててね」と言って、
濡れたズボンを風呂場まで持って行き、雑巾とこれから洗濯するはずだった数枚のタオルを取って来ました。
さっちゃん、聞き分けよく何時までもじっとしてるはずもありません。
動こうとするので、そのたびに僕の声は大きくなり、強い命令口調になってしまいます。
床上のおしっこの量は半分以下にはなったでしょうが、まだビチョビチョ。
そんな板の間の上を裸足で歩いて、ダイニングへ行こうとするんです。
屈んで作業している僕はさっちゃんの足首を掴みます。
「動いちゃダメって言ってるでしょ」、悪いとは分かっていても、僕の言葉には怒気が加わります。
それでも動こうとするさっちゃん、仕方なく僕はさっちゃんの足裏をタオルで拭こうとします。
足首を掴まれて動けなくなったさっちゃんは僕に怒りを向け、酷い言葉を浴びせ、叩きます。
そんなこんなで、なんとか最低限の足裏拭きをこなしました。
さらに僕は、さっちゃんの手を掴んで強く引き、お風呂場へ連れて行きました。
さっちゃんは抵抗しますが、何とかお風呂場へ。
そこで足をシャワーで洗います。
さっちゃん、最初は水だったので「冷たい」と怒り、お湯で洗ってる最中も僕の頭を叩きます。
その後、さっちゃんは寝室へ。
さっちゃんがその場に居なくなったので、僕はじっくりと板のフローリングを拭きました。
お風呂場ではズボンやタオルを繰り返しお湯洗いし、浸けておきます。
明日にでも、洗濯しなければなりませんね。
さっちゃんは時折そんな僕のそばに来て、まだ怒りが収まらないんでしょう、何やらブツブツと文句を言います。
本当ならすでに始まってるニュージーランド×イングランドの準決勝をのんびりと観たかったんですが、それどころではありません。
とりあえずつけてあるテレビのその試合をさっちゃんが観ています。
なんとかさっちゃんのおしっこ騒動はひと段落つきました。
さっちゃんが家にいる時にトイレ以外でおしっこをしたのは初めてのことです。
僕は何度も何度も大きな声でさっちゃんに命令してしまいました。
強い口調で、怒気もたっぷりと含まれていたように思います。
事態を理解していないさっちゃんの的外れな文句や事態解決への徹底的な非協力には僕も心底怒りを抱きました。
壁とかを何度強く叩きつけようと思ったことでしょう。
さっちゃんに真っ当な対応を求めるのは無理だと、理屈では分かっていても、気持ちはすぐには納得しません。
オールブラックスも負けてしまい、僕も気持ちを理屈で押さえこんだり宥めたりできる十分な時間が持てました。
なにしろ今日はさっちゃんの誕生日なんですから。
僕はさっちゃんに「さっきは大きな声を出してご免ね」と謝りました。
さっちゃんはすでにこの騒動を忘れているのでしょうね。
それから夕食前に、ささやかな誕生祝いを行いました。
チーズケーキを食べただけですけれどね。
ちなみに、さっちゃんが僕の頭を叩いてもまったく痛くはありません。
加減してくれてるのか、単に力が弱いだけなのか。
さっちゃん、刻々と変わって行っている様ですね。。。正直悲しいかな。メロンさんの対応、怒り悲しみ、やるせなさ全てを含め、正直に素直に受け止め対処されている姿、素敵だと思います。頭より心は先に動きます。これは仕方ない。落ち着いてきた時に謝ることが出来れば上出来です。さっちゃんも何かは感じているはず。
抗がん剤5回目を終え、私も今年は言葉に出来ない。。。でも体は確かに何かを発している、その何かに耳を澄ませて、時にもがいて暴れて泣いて。今見る“景色”がずいぶんと変わっています。治療が一段落する12月中分化下旬、ゆっくりハイキングにさっちゃんと行きたいと思いました。
さっちゃん、メロンさん、そして私、、、がんばろ~!