さて、古伊万里に興味を持って30年ほど、初心者時代に理解するのに時間の掛かったことについて書こうと思います。
まずは↓の品をご覧ください。


五寸サイズの美しい元禄期の深皿で、ワタシが初めて購入した「藍柿」です。
古伊万里に興味を持ち、図録や入門書を買い込んで勉強という歴史をだとりましたが
そんな中、古伊万里の書籍や図録には必ず「藍柿右衛門」が登場します
ワタシにはこの「藍柿右衛門」が理解するのに時間が掛かったんであります。
ワタシが最初に購入した↓の書籍には「藍柿右衛門」について、次のように解説されています

藍九谷の次に来る藍柿右衛門は、染付としても伊万里磁器として最初の、かつ最高の達成を示す。
それは磁器制作に必要な技術的条件が、全ての工程に於いて、文字通り完成したことを意味する。
いかにも研究者が書いたという感じがする文章ですが、要するに完成度の高い染付磁器ということのようです。
ちなみに藍九谷については、「古九谷の中で染付だけのものを藍九谷という」と記述されています
要するに初期の後の寛文あたりまでの染付皿は「藍九谷」と一括りに分類されていることになります。
ところが、延宝~元禄あたりまでの染付磁器が全部藍柿かと言えば全くそうではなく
上質な土と呉須、手抜きのない繊細な絵付けのいわゆる「上手」の品だけが藍柿右衛門であり
それ以外は中期の染付皿ということになります。
これがワタシにとっては大きな疑問につながりました
早い話が「藍柿右衛門」と分類というか称する基準は何なのか?、これが初心者時代のワタシの最大の疑問となりました。
いろいろと書籍を読んだり図録を見たりしましたが、藍柿と同時代の染付皿との境界線について言及した記述は発見できませんでした
で、たどりついた結論は、藍柿かそうでないかは結局のところ、見る人(売る人?)の判断にゆだねられる、というものでした。
骨董市やネットでも「藍柿」と称して売られている品はそこそこありますが
目線を上げて、よりレベルの高い品だけを藍柿とする、そう思うようになりました。
ま~、今思えばアホなことで悩んでいたことになりますが、初心者とはそんなものなのかも知れません。
そんな訳で、ウチの品で「藍柿」と自信を持って言える品は、最初に紹介した車輪福の深皿と
↓の六寸皿だけと考えるようにしています。

ところで、上で紹介した双葉社発刊の「古伊万里」には、こんな記述もありました。
藍柿右衛門と紛らわしいものに、盛期伊万里と延宝様式という言葉がある。
ほとんど意味するところは同じものと理解してもらって差し支えない。
例えば藍柿右衛門と盛期伊万里では時代の取り方がやや異なる
藍柿右衛門と言う場合は1670年代から80年代にかけて制作された上手の染付を言うのに対して
盛期伊万里は藍柿右衛門よりも時代を広くとらえており、元禄期(1688~1704年)まででその範疇に入れる。
盛期伊万里と言う場合、むしろ元禄期に最も優れた染付が作られたという主張が込められており
藍柿右衛門より元禄期に評価のウエイトが置かれている。
正直なところ納得できるような出来ないような分類法ではありますが、業者と学者では見解が異なるのは確かだと思います。