精神的に本を読もうという、ゆとりさえ生まれた今日この頃。
昔、読んだ小公子の「川端康成訳本」があるということを知り、早速、読みました。
子供のころ、読んだときは、バーネットの「秘密の花園」「小公女」の方が、断然面白く、
「小公子」はどんな内容だったのかも、まったく覚えていませんでした。
とにかく、印象がない。正直、当時の私、面白くなかったのだと思います。
ところが、今、読むとおもしろいんです。
読めば読むほど、その周辺の世界にも興味が広がって、当時のイギリスの貴族って、どれくらいすごかったのかとか、
大西洋を船で渡るには何日くらいかかったのかとか、
イギリス貴族の三男坊と江戸旗本の三男坊のちがいは?とか、小公子セドリックから、遠山の金さんや暴れん坊将軍にまで、
興味の幅は広がりました。
この小説は、主人公セドリックに注目して読んでも面白くない。
おじいさんの、ドリンコート伯爵に注目して読むと面白い。
セドリックみたいないい子は、あくまで大人の理想で、子供が、セドリックみたいないい子になれ!って読まされても、
全然共感できません。
しかし、自分自身が、おばあちゃん世代に足を踏み入れた今は、
頑固で、今でいう、すぐ切れるジジイ、ドリンコート伯爵が、
孫がかわいくて、どんどん好々爺になっていく姿が、面白いんです。
私にも、セドリックみたいなかわいい孫がいたら、
すぐ切れるバアサンになりたくないと、必死で、かわいいバアサンになろうと努力すると思うよ。
それから、解説が橋本治氏で、解説もすごく楽しいです。
1枚しかないけれど、挿絵は山本容子氏で、私から見ると、セドリックが、ちっともかわいく描かれてないです。
川端康成、橋本治、山本容子の3氏が組んだ本なんて、それだけでも、すごいです。