先月、デジタル一眼レフを持って葉山の方に行ってきました。今回はその紀行文です。
その日は非常に天気が良く、京急新逗子駅に降り立つと、すでに漂う汐の香りと、まばゆい陽射しに心は浮き足立ち、海に向かって歩き始めた。
自分の「逗子~葉山散歩」の定番ルートである、新逗子駅~渚橋~葉山マリーナ~森戸海岸というコースを散歩開始。渚橋付近、つまり逗子海岸は相変わらず車の通りが多く落ち着かない。国道134号線から外れると静かな漁村の風景。三浦半島の上空ではお馴染みなトンビが今日も飛ぶ。
日本に於けるヨットの発症の地だという葉山マリーナの横を歩き、その瀟洒な建物に一般的な葉山のイメージを感じながら、実はすぐ近くに釣り船の並ぶ小さい港があったりするところが、葉山のいい意味での二面性。
更に歩いていくと森戸の町へと入っていく。細い道は普通乗用車がすれ違う程度のスペースなのだけれど、路線バスもやってくる。逗子と葉山を結ぶバス路線は2ルートあり、本数の少ない森戸経由の海線はメインルートではないけれど、海が見えるから景色は良い。
その細い森戸の道沿いには、葉山らしい洒落たレストランや雑貨屋もあるけれど、格子戸の古びた米屋や、軒の小さな八百屋もあり、やはりいい意味での二面性を保っている。行き交う車に神経を使うのに疲れてきたので、裏道に入り家々の間を抜けて海岸に出た。
今日は天気が良いから江ノ島がくっきりと海に浮かぶ。空気の透き通った冬ならその向こうに富士山が見えるのだが、今日は見えない。
森戸は海岸沿いに神社がある。朱色の橋が、砂浜の横にある森戸川の小さな河口に架かっている。砂浜を散歩する人と、神社へ参拝する人で、いつ来てもちょっと賑やかではあるけれど好きな海岸。
森戸海岸でパンを食べてちょっと昼食休憩をしたあと、更に海に沿って歩く。だんだん人影は少なくなってくるけれど、そんな穴場にも地元の人々がくつろいでいる。
森戸までは低地だった道路が、一色(いっしき)海岸に近づくと高くなり見晴らしが良くなる。海辺で家族連れが遊んでいる。少女が泳いでいるが、海水は冷たくないのだろうかと気になる。
葉山町の中心部へとやってきた。海岸にはそれなりに大きい公園があるので、そこの見晴台のベンチに座り小休止。
葉山町と横須賀市の境にある長者ヶ崎を過ぎると、観光客の姿は一気に減り、道を往くのは車とバイクばかりになる。三浦半島の西海岸は、葉山から南に進むほど鄙びていく。その入口みたいな雰囲気は既に感じられ、人家も少なくなり、商店も少ない。コンビニなどという近代文明の華は無い。海岸はひたすら大きく長く伸び、それを見下ろす日陰の無い開けた歩道を歩きながら歩く。小さな漁村の海岸に突然輸入家具のアウトレットの店があったりする。まだ葉山の雰囲気が残っているエリア。
秋谷という町に到着。私は、この地に来るといつも寄っているコンビニに入る。この付近ではこの店くらいしかないコンビニ。そこでビールを買って海岸に行き、海を眺めながら飲んで夕日の時間を待つ。
だんだんと日が傾いてきたので、秋谷海岸の北にある立石という所に行く。そこは、大きな岩が海岸に立つ景勝地であり、そこへやってくる観光客を対象に、駐車場があり、レストランもある。来る度に、その状況が面白くない気分にさせるが、やはりいい眺めには惹かれてしまうから、自分も周りの観光客と一緒にカメラを構えて夕日を撮ったりしてしまう。
ここは、その大きい岩と夕日と富士山が撮れる撮影地でもあるから、ドライブの観光客だけでなく、アマチュア写真家もやってくる。私の隣で初老の男性がニコンの立派な一眼レフを三脚に付けて、構図決めに霧中になっている。
その周囲の本格度に比べ、小さな一眼レフに小さなレンズを付けて、手持ちで撮っている私は、携帯やコンデジを構える観光客と同化してしまっている。
日が沈んで、写真家は続々と引き上げ、海を眺めるカップルだけが残る立石からもう少し葉山方向に戻って、私は久留和海岸という小さな漁村に向かった。静かな海の色がだんだん夜の色になっていく。そろそろバスに乗って帰る時間がやってきたようだ。
(写真はすべて カメラ:オリンパスE-410 レンズ:ズイコーデジタル25mm F2.8)