少し前にBerryz工房が一年前に演じていた舞台「三億円少女」のDVDを見た。実際に起きた三億円事件という偽白バイ警官による現金輸送車からの現金強奪事件は昭和最大のミステリーと言われ、これまでも様々な考察本が出版されてきたが、それらの仮説を根底から揺らがす物語をベリが作り上げた。と言っては大げさかもしれないけれど、少なくとも見終えたあとに「そんな事があったとしても不思議ではない」と思わせるものがあった。それは脚本や構成のリアリティが優れていたという訳ではなく、演者が放つリアリズムとその空気が成せる説得力であったのかもしれない。
この舞台はメンバー七人が日替わり交代で主役を務める「レインボー主演」という舞台だったけれど、DVDでは梨沙子主演の回が収録されている。梨沙子ヲタではない人からすれば、その事実にガッカリするところではあるけれど、開始数分でそんなヲタ的感情は変化をするだろう。白バイ警官の恰好をする梨沙子があまりに自然体なのだ。
同様に、テレビレポーター役の茉麻も、旅館の仲居な桃子も、セーラー服姿のキャプテンも、とにかくみんな役にフィットしている。そんな中で梨沙子の存在感がリアリティを帯びて迫ってくる。普通の女性を演じる熊井ちゃんや千奈美のあまりに普通過ぎる存在感の出し方も素晴らしいが、梨沙子のそれは存在感と本人の内面が見事にシンクロしていて、他のメンバーの主役回をイメージしにくくするほどだ。単にフィット感というなら、犯人グループの主犯役の恋人役の雅ちゃんのやさぐれ感も程よい感じのリアリティではあるけれど。
現代にタイムスリップしてきた(という事にしている)白バイ警官姿の梨沙子の登場シーンでの目の演技。戸惑う心理をまばたきと瞳の動かし方だけで表現し、物語が事件当時の回想シーンになると突如、田舎(広島という設定)から上京してきた純朴で働き者な女の子の姿に変わる。
ちゃんと事件前と事件後。過去と現代で、同じ人物の心理的変化による人間性の変化を表現している。
梨沙子という人はパッと見の印象で多くのヲタ人気を掴んできたが、魅力の本質はパッと見では伝わりにくいところにあるのだ。アイドルとして売っていくには損なパーソナリティだ。
私はこの舞台を残念ながら観る事が出来なかったが、こうしてDVDで見ているからこそ細かい点も見えて、彼女が放っている繊細な変化にも気づいて、その演技をこんな風にレビューしているのだけれど、客席からではそこまではわかるまい。
ふと思う。「戦国自衛隊」もそうではなかったか?
「戦国自衛隊」で梨沙子は着物を着て現れ、優雅な舞いも見せた。戦車が置かれた舞台にはおよそ似つかわない柔らかな舞いを見せる梨沙子の姿は、今彼女が存在する場所への微妙なフィット感のズレでさえも内包しながら、美しくも少し悲しい調べを奏でているようにも見えた。
それはきっと、これは現在を表現しているものであり、季節が変わっていくほどに同じものは見られなくなっていくという現実を写し出すものであるし、DVDという映像はそれを真空パックして後世に残していくツールでしかないという事も物語っている。
だからと言って、一年前の舞台のDVDを今観る事は無意味な筈はなく、もっと言えば今週発売になった「戦国自衛隊」DVDを見る事にも意味はある。
アイドルがアイドルとして輝いている瞬間を映像として残している事実に、私たちアイドルヲタは感謝をしながら、過去と現在をモニター越しにタイムスリップしていくのである。ベリキュー舞台にタイムスリップものが多いのは必然なんだとも感じる。
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実はあたし梨沙子ちゃんがあそこまで人気があってBerryz工房のエースというポジションにいるのかよくわかってなかったんです。(可愛いしけど…みたいな感じでした)
そぅ思いながらモベキマスイベントに行き、握手会で「キ」のレーンに参加しました。
で、普通に歩きながら握手すれば係の人も無理に流す事もなくわりとゆったりだったんですが…
なんと、あたし梨沙子ちゃんの前で思わず止まっちゃったんです。まいみちゃんTシャツ着てたのに梨沙子ちゃんの時だけ係の人に流されました(笑)
明らかに1人だけ空気が違ったというか、とにかく可愛かったし美人だし見惚れてしまいまして(^^;)
なんかうまく言えないんですけど「オーラがある人ってこういう人なんだ」って感じました。
本当に記事と関係ないコメントですみません;
関係ないどころか、おおいに関係ある話なので興味深く読ませていただきました。まさに、梨沙子の持っている「何か」はやはりタダモノではないという事は確かなようですね。
それを本人がどこまで自覚しているのか?そこが心配であります。