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かくして、ワタシは、いや、私は、ここでこうして佇んでいることが仕事となりました。とある日、妙齢のご婦人の訪問を受けたのであります。新たなこの世で初めて出会う女性でした。また、女性か。私は生得女に関わる運命にあるのか。そのように思って投げやりに思っていました。
「私は、ヤーマラージャ様のお使いで参りました。これからお言葉をお伝えします」
「ちょちよっと待ってください」
「何でございましょうか」
「いやね、そのヤーマなんとかいうお方はどなたですか」
「ご存知かと思っていました。閻魔様とも申します」
「閻魔様 !!」
「そうでございます」
「で、どういう・・・。まさか、またあの世に帰れとかおっしゃるんじゃないでしょうね」
「いや、そうではありません。あの世でお振り分けになるときに、あまりにも多すぎるので、貴方の場合、お言葉をおかけになることをお忘れになっていたようでして・・・」
「忘れてた、・・・で、・・・」
「あなた様は、あのー、どう言いますか、科がいくつも重なっていまして、人間にはできなかった。・・・で、どうしても人間として生きたかったのなら、一旦お焚き上げをしてくださいということでした」
「ええっ、また、火の地獄ですか」
「いえ、私が、貴方をちょっとだけ抱擁すればすぐ終わります」
「抱擁 ?」
「そうです。私の両腕で、軽く・・・」
「そうすると科が消える ?」
「ええ、そうです。しかし、貴女は女性、また、変なことに・・・」
「大丈夫です。少し熱い思いをすれば、人間として生きていけます。科を焼き消すのです」
「わ、分かりました。・・・でも、お断りします。私は前世この世で人間として生きてきて、あまりにもいろんな苦労をしてしまいました。全部身から出た錆です。だから、人間だけは勘弁してください」
「ああ、そうですか。・・・じゃ、ヤーマラージャ様にそうお伝えしておきます」
そう言い残すと、その女性は煙とともに消え去ってしまいました。後で、私は、後悔の心を少しばかり感じていました。でも、いいのです。私には私の生きる道がもう出来上がっていましたから。こうしていると、ずしんずしんと電気の重みが伝わってきます。これです。これです。これが私の鼓動です。
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