とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

巫女の恋

2013-03-03 23:33:48 | 日記
巫女の恋




「ウェスタの巫女の衣を羽織る女性」(アンゲリカ・カウフマン)

 巫女の衣装のヴェールがウエディング・ヴェールの起源だと思われる画像である。真実はよく分からない。ただ、結婚式の際に、花嫁がフェイス・ヴェールをするのは、魔除けの意味があるという。同時に、ヴェールはふたりを隔てる壁でもあり、花婿がフェイス・ヴェールをあげてキスをするのは、ふたりの間の壁を取り払う儀式であるとされている。日本では魔除けの意味を角隠しや綿帽子が担っているという。


 ある日の夕方、長柄さんがやって来ました。大変なことになったと言いますので、私も何が起こったか心配しました。


 いやね、あの、出雲大社で巫女修業をしている笙子さんのことだよ。

 ああ、笙子さんね、それがどうしたの。

 見染めた人がいるんだよ。

 ほほう、笙子さんにも縁談が・・・。

 笙子さんもまんざらではないようだよ。

 ちょっと、元からしっかり話してよ。

 いやね、今日、うちのお宮の宮司さんが来てね、笙子さんはどういう方かと聞くくんだよ。まあ、知っていることは話したけどね。

 お宮というと、あの千年椋の木のお宮だね。それで・・・。

 そこの長男が出雲大社の国学館で神官の勉強をしてるんだけどね、巫女修業の笙子さんを見て、人目ぼれしたらしい。それで、話を進めたいと言うんだよ。ゆくゆくは神主夫人ということになると思うけど。

 そりゃ、いい話じゃないですか。でも、どうして貴方に・・・。

 今の宮司さんとは昔から懇意にしてたし、今までご縁市場に関係ある人との繋がりがあると思って・・・、いや、簡単に言うと藁にでもすがりたいというやつだよ。

 藁・・・。

 まあ、そんなものだよ、俺なんか。

 いや、いや、市場にとって貢献者ですよ。自虐的な言い方は止めようよ。

 それでね。どう進めたらいいのかね。

 二人の気持ちがどうかということを先ず・・・。

 どうして確かめるの。

 貴方のうちで二人を引き合わせてみたらどうかな。

 それが旨くいけば、私も全面的に協力するよ。

 そうか。

 笙子さんは養女だから、いろいろ話がややこしくなってくるかも知れないね。でも、進めていくしかないね。

 おい、おい、大丈夫かね。

 いい話だけど、進めてみなければわからない。今のご両親の気持ち次第だね。

 そうか。長柄さんはそう言いながら、私の顔をじっと見つめました。

東北関東大震災 緊急支援クリック募金←クリック募金にご協力ください。


 
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。