とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

お祖父さんご免なさい

2013-04-17 17:49:19 | 日記
お祖父さんご免なさい





出雲市では、神社の芸能神事として獅子舞が各地で伝えられている。写真は出雲市大津の三谷神社の投げ獅子舞である。右側は番内と呼んでいる。一般の神社では秋祭りで奉納されることが多い。獅子舞の本奉納は、頭(祷)屋宅から神社に御分霊が還幸されるに際して舞われ、道中および社頭において、演じられる。なお、舞の構成や形式には伊勢太神楽の影響が強い。三谷神社の獅子舞は島根県無形民俗文化財に指定されている。



 このお面は我が家にある古い神楽面である。実用的なものではなく土産物として売られている陶器製のお面である。一般には恵比寿、大黒の組み合わせが現在は多いが、この場合は素戔嗚らしき面と大国主の面の組み合わせである。


 根の国彷徨とも言うべき私の旅の途中で、伯母が嫁いでいる親戚に立ち寄りました。今は叔母は亡くなっています。その折その家の長男・・・私の従兄ですが・・・から私の祖父のことについて話していただきました。祖父は私がやっと歩けるようになった頃他界しています。ですから私は写真から姿を想像するだけでした。私が赤ん坊の時、祖父は心臓を患っていて、「この児を抱いてやりたいが、息切れがして・・・」と言っていたそうです。私は遺影に向かって「ありがとう」と心の中で呟いて感謝していました。

 お前のお祖父さんは世話好きで、色んな人に慕われていた・・・。従兄がそう言いました。

 ・・・。

 61で亡くなったが、もっともっと長生きして欲しかった。

 ・・・。

 秋祭りのときには必ず来て貰っていた。御井神社の獅子舞が大好きで、最初から最後まで見て暗くなってから帰ってこられた・・・、遠い昔の思い出になってしまった・・・。

 お祖父さんは獅子舞が大好きだった・・・。

 何というか、神さんに憑りつかれたような感じだった。

 木の俣神・・・、八上姫・・・に憑りつかれたという・・・。

 そうだった。神がかりだった。実に・・・。

 (お祖父さん、ご免なさい。今まであまりお祖父さんのことを考えていなかった)。私は心の中で深くお詫びをしました。

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根の国彷徨

2013-04-13 17:45:09 | 日記
根の国彷徨


 『Wiki』の記述を中心に私は根の国を確認しました。
 
 ①名称

 根の国(ねのくに)は、日本神話に登場する異界である。『古事記』では「根之堅州國」(ねのかたすくに)・「底根國」(そこつねのくに)、『日本書紀』では根国(ねのくに)、祝詞では根の国底の国(ねのくにそこのくに)・底根の国(そこねのくに)と書かれる。 根の国は、その入口を黄泉の国と同じ黄泉平坂(よもつひらさか)としている記述が『古事記』にあり(大国主の神話)、一般には根の国と黄泉の国は同じものと考えられている。

 ②どこにあるか

 六月晦の大祓の祝詞では根の国は地下ではなく海の彼方または海の底にある国としている。根の国が地下にあるとされたことで、それが死者の国である黄泉の国と同一視されるようになった。(出雲大社のご神体が西の日本海を向いておられることと関係があるのでは、と愚見ながら私は考えています)

 ③比定地はどこか

 夜見(よみ)という地名のある鳥取県米子市と、黄泉平坂の比定地のある島根県松江市の間の島根県安来市には、古くからイザナミのものと伝えられる御神陵があることからこの出雲東部一帯が根の国とする説が安本美典著「邪馬台国と出雲神話」では述べられている。 また、大国主が根の国へ行く前に「木の国」へ行ったとの記述が神話にあることから、紀伊国、特にスサノオとの縁が深い熊野であるとする説もある。『日本書紀』の一書にイザナミが熊野に葬られたとの記述もあるように、熊野もまた古来より他界信仰の霊地であった。ただし、出雲説を支持する立場からは、「根」からの連想で「木」を持ち出しただけであるとする反論もある。(日本海に面した猪の目の洞窟も考えられています)


映画「瞬 またたき」のロケ地、縁結び・パワースポットを巡る旅のHP(ここに黄泉津比良坂の地図が掲載されています)


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八上姫の謎

2013-04-09 18:21:18 | 日記
八上姫の謎


私はその後八上姫の真実、大国主の真実という大問題にとらわれて苦しんでいました。あれこれ調べているうちに何かしら解答を得ることができました。それが下記の引用です。特に3番目の古事記論は注目しました。本当にこれが真実だと思いました。ヤマタノオロチ、スサノオ、大国主、というキーワードで古代史がすっきり解明されるのです。
 しかし、まだまだ疑問点はあります。例えば八上姫の歌「火の山のふもとの湯こそ恋しけれ身をこがしても妻とならめや」という歌の出典が分かりませんでした。火の山、それはどこか。大黒山なのか仏経山なのか。当時火を吹いていた山があったのか。・・・いや、その前に、兄神たちの八上姫への求婚の貢物を背負って旅を続け、因幡の素兎を助けて、兎から八上姫と結ばれるのは他でもない貴方だと告げられ、その通りに結ばれ、子どもまで宿した八上姫がどうして正妻とならなかったのか。不思議でならないのです。また、八上姫も産んだ子どもをどうして因幡に連れ帰らなかったのか。須勢理毘売(すせりびめ)の嫉妬を恐れたからという理由では説明にならない気がしてならないのです。
 大国主が高志国の沼河比売のもとに妻問いに行ったことに対し須勢理毘売命は激しく嫉妬しました。困惑した八千矛神(大国主)は大和国に逃れようとしますが、それを留める歌を贈り、二神は仲睦まじく出雲大社に鎮座することとなりました。沼河比売は妻に迎えられ、美貌の神八上姫は自ら身を引いてしまう。この違いはどう説明したらいいのか。私は八上姫の悲劇を素直に受け入れることができません。
 因みに、記紀神話での記述はないものの、建御名方は大国主神と沼河比売(奴奈川姫)の間の御子神であるという伝承が各地に残っているそうです。妃神は八坂刀売神とされています。・・・等々語ればきりがありません。もっと研究を深めていきたいと思います。

「子供を殺される(別れる)悲劇の母」

「名前が一致する確率」

「霊(ひ)の国の古事記論」魏志倭人伝に書かれた古代人の霊(ひ=魂、祖先霊、鬼神)信仰に着目し、神話時代の古事記を分析。皇国史観・反皇国史観に変わる、新たな古代史神話のパラダイムを追求。



「沼河比売神」と御子神「建御名方神」の母子像(糸魚川市海望公園)


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御井神社の母子像

2013-04-05 23:20:11 | 日記
御井神社の母子像




 大国主に関連した系図(「Wiki」より)。



出雲市斐川町直江の御井(みい)神社の拝殿。御祭神は、木俣神(このまたのかみ)、八上姫大神(やかみひめのおおかみ)。木俣神は、大国主命の御子で八上姫との間にできた命の第一子である。上の系図参照。




 
『古事記』には、大国主神と結婚した「八上比売(やがみひめ)」は、子を身ごもり出雲国まで来たが、大国主神の正妻「須勢理毘売(すせりびめ)」を畏れ、生まれた子を木の俣に押し込んで因幡国に帰ってしまった、と記してある。このことからこの御子を「木俣神」といい、またの名を「御井の神」と言う。写真はその母子像である。
 社伝によれば、八上比売は出雲から因幡に帰る途中、この地で産気づいて出産し、その際に「生井(安産の水神)」「福井(産児幸福の水神)」「綱長井(産児寿命の水神)」の3つの井戸を掘って産湯に使われたと記されている。


 私は、脚本家長山氏の話を聞いてから急に思い立って、彼を誘って御井神社に出かけました。母子の神像を思い出したからです。

 長山さん、このお宮は私の叔母が嫁いでいる家の氏神様です。子どものとき、ここの秋祭が楽しみで毎年叔母の家に泊まりに出かけました。

 そうですか。古事記ゆかりの神社、しかも、大国主の神の第一子が祀られているんですね。

 これです、これです、この像です。安らかな表情の姫が印象的です。

 それにしても、どうして子どもをここに置いて帰ったんでしょう。

 正妻の須勢理毘売に知られると、恐ろしいことになると思ったからでしょう。嫉妬深い神だったようですから。まあ、それだけ正妻としての誇りを持っていたんですね。

 湯の川温泉の像とは雰囲気が違いますね。母神としての神々しさ、温かさを感じます。

 私はこの像を見ていると、私の母を思い出します。思い出すと言っても私を産んでからまもなく死んでしまいますけどね。・・・写真だけ残っています。この像とそっくりです。・・・神々しさは感じませんが、温かさと言いますか、写真を見ていると、亡霊でもいいから会いたいという気持ちになります。

 分かります、その気持ち。・・・畝本さん、今度の公演を必ずご覧ください。たくさんの仕掛けを用意していますから。

 仕掛け、ですか。

 そうです。渾身の力を込めて書き上げました。

 渾身・・・。

 そうです、渾身の・・・。長井さんはその像をじっと見ながらそう言いました。

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女神の化身

2013-04-03 22:20:19 | 日記
女神の化身





 出雲市斐川町学頭の大黒山(頂上が尖っている山)。この山の頂上の神社には大国主命が祀られている。また、麓には日本三大美人の湯の一つ、湯の川温泉がある。



 『古事記』に登場する八上姫の石像。国道9号線から湯の川温泉へ入る道の入り口に建てられている。湯あみをしている石像は全国的にも珍しいと思う。



 八上姫と湯の川温泉の繋がりについて解説してある掲示板。


 『Wikipedia』では須勢理毘売命(すせりびめのみこと)と八上姫について次のように解説している。

 「須勢理毘売命は父の須佐乃男命とともに根の国に住んでいたが、葦原中国から八十神たちの追跡を逃れるために根の国を訪れた大穴牟遅命(おおなむちのみこと=大国主)と出会い、一目見てすぐに結婚した。須勢理毘売命が家に帰って大穴牟遅命を父に紹介したところ、父は大穴牟遅命を蛇のいる部屋や蜂とムカデのいる部屋に寝させた。須勢理毘売命は呪具である「比礼」を大穴牟遅命に与えてこれを救った。また、須佐乃男命が頭の虱を取るよう命じ、実際にはムカデがいたのだが、須勢理毘売命は椋の木の実と赤土を大穴牟遅命に与え、ムカデを噛み潰しているように見せかけるよう仕向けた。須佐乃男命は安心して眠ってしまい、その間に大穴牟遅命が須佐乃男命の髪を部屋の柱に縛りつけ、生大刀と生弓矢と天詔琴を持って須勢理毘売命を背負って逃げ出した。須佐乃男命は追いつけず、大穴牟遅命に大国主神の名を与え、須勢理毘売命を本妻とするよう告げた。」

 ・・・「大国主は先に八上比売と結婚し子を得ていたが、八上比売は本妻の須勢理毘売命を畏れて子を置いて実家に帰ってしまった。」

 ・・・「また、八千矛神(やちほこのかみ=大国主)が高志国の沼河比売(ぬなかわひめ)のもとに妻問いに行ったことに対し須勢理毘売命は激しく嫉妬した。困惑した八千矛神は大和国に逃れようとするが、それを留める歌を贈り、二神は仲睦まじく出雲大社に鎮座することとなった。」


 私は劇団湖笛の脚本家長山真一郎さんから電話を貰い、また新しい事実を知らされました。今度の劇は出雲神話とからめる内容になるということは想像していましたが、女神の化身が登場するというのです。


 郁子さんが演じる村娘の里ですが、実は八上姫の化身という設定にしました。喜多川さんの指導はいつも厳しいですよ。

 へえー、そうですか、何だか込み入ってきましたね。

 そうなんです。彼は普通とか常識ということが大嫌いでして、いままでも舞台稽古になってもストーリーを何度も変えさせられました。

 そうなると、黄泉の国から現世(うつしよ)に蘇ってくる訳ですね、里は・・・。

 そうなんです。

 そうすると、悲恋というのは・・・。

 工事現場の若役人が物売りに来た里を見染める訳ですが、現世の生身の人間と神は・・・そうですね、結ばれたとしてもいずれは離れなければならないという・・・。

 いや、まいったですね。こりゃ、懲りすぎじゃないかなー。

 そうなんです。どうしてリアリテイーを出すか、苦労しました。・・・まっ、そこが腕の見せ所でして・・・。

 やはりローカルだけではいけないんですね。古事記という背景が欲しかったんですね。

 西日本での公演に耐えるためにはやはり・・・。

 思い切った手法が必要ということですね。

 そうなんです。・・・私は長山さんの努力に頭が下がる思いがしました。

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