あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_里ラムネ

2009年07月03日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年6月28日(日) 午前中から妻と一緒に広島市内に映画を観に出かけた。 『Dear Doctor』
帰りに呉で妻を降ろすと、私は一人で倉橋島へと向かう。

今日の目的は、倉橋名物の『里ラムネ』と『北吉鮮魚店』
***
島ならではの、クルマ一台がやっと通る事のできる狭い路地を抜け、『里ラムネ』へ。
クルマを停め、奥に入って行く。 するといつものご主人が居られた。
『こんにちは。 ご無沙汰してます!』 すると私を見て『おお、久し振り』
『今日は空瓶を2ケース持ってきました。 1ケース買って帰りたいんですが』 『それがのう、機械が故障しとって、今ないんよ。 今朝まであったんじゃが、イベント用に10ケース買いにきた人がおって、ないなった』
『えー、ほんまですか。。。 残念じゃのう』

『あんた、すぐに帰らんといけんのんじゃろう?』 『いやあ、今日は北吉さんに持ち帰りの刺身を頼んどって、4時にいきゃあええんです。 じゃけえ、まだ時間はありますよ』 時計を見ると、まだ1時間弱ほどある。
『ほうか! 今、鉄工所の人に部品を修理をしてもらいよるけえ、待っとったら直るかもしれんで』 『ほうですか! じゃあ、待ちますよ』
するとご主人は、ニコニコと笑いながら、店の前に置いた空のラムネケースに座り、お話モードに入った。 そう、ご主人は、私がここでラムネに関する様々なお話を伺うのが好きな事を良くご存知なのだ。
***
『あんたあ、去年はよう来たよのう』 『ほうですねえ。 今年は海にでるのが忙しゅうて来れんかったんです』
『海?』 『あれですよ、カヌーです』 『おお、ほうじゃったのう』

『ところで、バラのラムネも無いんですか?』 『あるよ』 『じゃあ、飲みたいんで一本ええですか?』 『おお、ええよ』
 
奥にある冷蔵庫から一本出して下さり、懐かしい栓抜き(?)でビー玉を押して栓を開ける。 ここのラムネは、一本なんと『60円』である。 感謝感激。 そして、感涙!

『プシュッ』 『カラカラ』 『シュワワワー』 『グビリ』 『あー、やっぱりウマいですねえ』
***
『ところで最近はどうですか? 去年は暑かったけえ良かったんじゃないですか?』 『ほうじゃの。 少しはえかったかのう。 まあ、そうは言うてもそんなにもうかりゃあせんよ』
 
『ところで、こりゃあラムネの瓶のパッキンですね』 『ほうよ。 これが去年は無いゆうてのう。 困っとった』 『なんでですかねえ?』 『多分、去年は油が高うなっとったろう。 その影響じゃ思うんよ。 今年はちゃんとあるいうて言いよる』

『少ないゆうて言いよっちゃった瓶は大丈夫ですか?』 『まあ、毎年減って行きよるよ。 割れるんもあるし、祭りやなんかで売りよる分は、回収してくれ言うて頼むんじゃが、やっぱり珍しいけえ持って帰る人もおるよ。 まあ、売る人も全部に目は配れんしのお』

『あの口がプラスチックになっとるのはどうなんですか?』 『あれはのう、わしも飲んでみたが、口のところがプラスチックじゃろう。 冷えんのんよ。 じゃけえ、飲んだ時に美味うない』 『なるほど! やっぱり口が当たる所が冷えとるんも、ラムネのおいしさの一つなんですねえ』
***
こうやって、いつものようにご主人から様々なお話を伺っていると、軽トラックのエンジンの音が聞こえてきた。
『お、帰ってきたかの』
***
鉄工所の方が帰ってこられ、ご主人と話しながら機械の方に行かれた。 もちろん私も見学。
修理したと思われる部品を取り付け、位置や角度を確かめている。
 
『こんにちは。 これはロウ付けされたんですか』 『ほうよ。 ここが曲がっとったけえ、寸法をはかって、直してきた』
『じゃあ、この機械が故障したら、いつも見られよるんですか?』 うんと頷き、『そうよ』 子供の頃からここのラムネを飲んでおられるという地元の鉄工所の職人さんが、このラムネ製造を支えておられるのだ。 素晴らしい!

『それにしても、この電動機やプーリー、革ベルトがええですね。 機械好きにはたまらんですよ』 『もう、こんな機械は作れんで。 この電動機なんか、コロ軸受けじゃのうて、メタルなんで』 『そりゃあ凄い。 ベルトじゃけえ、負荷が大きゅうなったら滑って逃げるけえ、メタルの滑り軸受けでもつんでしょうね。 ホンマ、こりゃあ、大事に直してもらわんと』

上手い具合に直ったかどうかを確かめるため、電源を入れて試運転。 空の瓶をセットして動かし、戻ってきたら外して次の瓶に入れ替える。 うん、どうやら調子は良いようだ。
***
試運転が終わると、機械に火を入れたり(炭酸ガスが冷えてドライアイスになるのを防ぐためだそうだ!)、バルブを開けたり、瓶をセットしたり。 とうとう、実際のラムネの瓶詰めが始まるのだ。 ワクワク!
奥から、奥さんも出てこられた。 『こんな壊れる言うのは、もうラムネ作るんは止めえいうとるんじゃろうねえ』 『何いうとられるんですか! こんな貴重な機械を止めてもろうちゃあ泣きますよ。 絶対、続けて下さいよ!』
 
機械が動きだし、ラムネが詰め始められた。 しばらくすると、ご主人が箱から2本取り出し、『ほい、飲んでみてくれ。 いつもの味と変わっとらんか?』
 
味の確認である。 責任重大だ! 鉄工所のおじさんと私は『出来立てホカホカ』、いやこれはおかしいな、『詰めたてシュワシュワ』のラムネを試飲し、顔を見合わせ、『ええよねえ』と頷き合い、『ええんじゃないですか!』と答えた。
***
機械は順調に動き、どんどんラムネが詰められていく。 おばちゃんは、一本一本、異物が入っていないかを目視で検査。
ここ『里ラムネ』では、瓶の洗浄も一本一本手作業だし、詰めるのも検査も人の手が掛かっている。 これで、おいしいラムネが一本『60円』 改めて感涙!

『おっちゃん。 わしのラムネも、1ケース詰めてもろうてええですか』 『おー、わかった!』
***
『おっちゃん、ありがとう。 また買いに来ますけん』と工場を後にした。 時間は、ちょうど午後4時。
北吉鮮魚店に予約している時間である。
 
今日は、両親を招いてのささやかな宴。 修学旅行中の次男を除いた5人前の刺身を持ち帰り、みんなでおいしくいただいた。
タコ、イカ、ブリ、鯛、鱧の湯引き、そして珍しい『穴子の刺身』
初めて北吉刺身に行って出された『穴子の刺身』を食べてから、こんなおいしい刺身があるのかと感動し、ぜひ親に食べさせたくて、特別にお願いして刺し盛りに加えてもらったものだ。 これがプリプリ、コリコリで、両親にも大好評であった。
***
とびしま海道を漕いだOne Wayのシーカヤック旅で、『みはらし食堂』で楽しい夜の時間を過ごし、翌日には大崎下島の大浜で『あるくみるきく_旅するシーカヤック』を堪能した週末は、倉橋名物である『里ラムネ』と『北吉鮮魚店』で〆。
いやあ、この週末も最高だったなあ! 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする