あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 『旅する櫂伝馬プロジェクト』_大崎上島、櫂伝馬競漕練習参加

2009年07月26日 | 旅するシーカヤック
2009年7月24日(金) フレックスを利用して少し早めに仕事を上がり、ロードスターでそのまま大崎上島へと向かう。

祝島の神舞で櫂伝馬を漕いだ時の私のブログを見て、大崎上島出身のFさんに声を掛けていただき、メールや電話でやりとりしている内に『瀬戸内カヤック横断隊』のように櫂伝馬で旅をしたいね、という話で盛り上がり、静かに始動した『旅する櫂伝馬プロジェクト

今日は、その一環として、8/1に行われる櫂伝馬競漕に向けた練習を体験させていただくのである。 ただし基本的に、一週間行われる練習に全て参加しないと競漕には出られないということなので、私の場合は体験参加である。
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大崎上島は、日本の櫂伝馬の約1/3が残っていると言われるほど櫂伝馬競漕が盛んな島。 櫂伝馬の時期が近付くと血が騒ぐという人も多く、伝統行事として長く続いている。

練習は、月曜日から土曜日まで、午後7時から9時までの2時間。 今回は、22日にフネを降ろして練習を始めたと言うことで、3日目の練習参加となった。
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午後6時過ぎ。 櫂伝馬が舫ってある港に着くと、練習の準備が始まっていた。 午後7時からの練習に向け、徐々に人が集まって来る。
次々と来られる方に、『こんにちは』と会釈したが、日に焼けた坊主頭の人や、いかつそうな人が多く、私は少々ビビり気味。
私を誘ってくれたFさんも来られ、『今日、呉から来てくれたNさんです』と紹介していただく。 『よろしくお願いします!』と私。

しばらくすると、今年船頭を勤めるというFさんと、ベテランの地元の方が櫂伝馬に乗り込み、なにやらやり取りしている。 聞いていると、櫂をロープで固定する穴の位置について議論しているようだ。 昔と今の漕ぎ方の違いや、それによって異なる漕ぎ易い穴の位置などなど、途中からはメジャーを取り出し、あと何センチこっちにとか、何番の櫂の穴の位置は云々だとか、真剣なやり取りが続く。
いやあ、大崎上島の人たちにとって、櫂伝馬はとても大切な行事なんだなあ!
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7時になり、雨の中の練習開始。 みんな裸足になって、櫂伝馬に乗り込む。 そう、櫂伝馬は神聖な神様舟なので、履物を脱いで乗り込むことになっているのだ。
今年初めて船頭を勤めるFさんがリーダーとなり、港の周りを漕ぐ。 私は、太鼓側の3番を漕がせていただく。 ベテランの方が一緒に乗り込み、櫂の漕ぎ方や、船頭の大櫂の操作について指導して下さる。

暗くなると、舳先に取り付けた懐中電灯を点けて練習を続け、午後9時頃に練習終了。
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練習が終わると、近くの集会所に移動してくつろぐ。 毎日、練習後にはこのように集まって軽く打ち上げをやっておられるとの事。 卓を囲み、ビールで乾杯。 ベテランの方も同席され、櫂伝馬についての話で盛り上がる。

『あの櫂は重すぎる。 少し削った方がええんじゃないか』 『もう、全体が太いわい。 あんなんじゃあ、グッと力を入れて進ませよう思うても難しい。 昔の櫂いうたら、片手で軽う持てよったもんじゃが、今の櫂は両手でしっかり持って渡すような感じじゃもんのう』 『細うて折れるのは駄目じゃが、こんな硬いと漕ぎにくいわ』
『櫂を削るいうて、自分達でやられるんですか?』と私。 『そうよ。 鉋を使うて削る』 『柿渋を塗るんも自分らでやりよった』 『そうですよね。 たしかに前は、あの何番いうて書いてある字が読めんようになるくらいまで削りよったですよね』
『柿渋は、何のために塗るんですか?』 『水が染み込まんようによ。 少しでも軽い方がええけえの』 『なるほど』

『競漕前の二日間は、櫂伝馬を陸に揚げて乾かすんよ』 『やっぱり軽うなったら違いますか?』 『そりゃあ違う。 浮き方がぜんぜん違うわ。 でも、2レースくらいしたら、水が染み込んで結局同じになるんじゃがの』
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私はシーカヤックで瀬戸内を旅しており、この付近では生野島に良く行っている事や、竹原から出て大三島の台海水浴場でキャンプしたりしている事をお話しすると、『ええ、台まで漕ぐ! ようやるのお』 『あれですよ、竹原から岡村島まで漕ぐ事もあるんですよ』

また、シーカヤックでも硬すぎるパドルは漕ぎにくい事や、先日お話を伺った大崎下島での櫂造り職人さんの話、昔は祝島から木江まで櫂伝馬を借りに来た事があるという話などなどを交えつつ、更に櫂伝馬のお話を伺う。

『柿渋は、フネにも塗るんよ』 『ほうですか! 沖縄のサバニを造る所を見に行った時には、サバニにはサメの脂を塗る言うて聞きました』 『へえ、そうなんね』

『あの、櫂を取り付ける所の木は松を使うんよ。 毎年取り替えるんじゃが、昔は自分らで山に取りに行きよった。 ええ木ががあったら、ノコで切ってもって帰りよったもんよ。 昔はだれも文句いうもんはおらんだった』 『そうでしょうねえ、上島で櫂伝馬の人らじゃいうたら、文句は言えんかったでしょう』

『櫂伝馬でも、底の形でぜんぜん違う。 漕いだとき、舳先が浮き上がって疾走するけど、漕ぐのを止めたらすぐに停まる舟もあるし、最初の加速は悪いが漕ぐのを止めてもそのまま進む舟もある』 『シーカヤックも一緒です! ダッシュがええフネもあるし、なかなかスピードには乗らんけど巡航速度は決して遅くないフネもあるんですよ。 ちょっとした底の形や長さと幅の比率で違う』
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その後も、昔の櫂伝馬競漕の話や、島の産業の事などなど、四方山話で盛り上がり、楽しい交流会は終了。
最初港で見た時は、いかつい人ばかりで内心ビビッていたが、熱くて濃くて良い人ばかり。 打ち解けることができて良かった!
『あんた。 また、漕ぎに来んさい』 『はい、ありがとうございます!』

一部の人は2次会に行くと言う事で、『あんたも一緒に行こうや』と誘っていただき、近くの店で再び盛り上がる。

こんな櫂伝馬好きの人たちが住む大崎上島で進める『旅する櫂伝馬プロジェクト』 これは楽しい企画になりそうだ!

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