あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 島根半島、猪目海岸キャンプツーリング

2009年08月16日 | 旅するシーカヤック
2009年8月14日(木) 朝4時起床。 この週末のツーリング候補地は、毎年夏に訪れている瀬戸内の無人島と島根の猪目海岸。 アテンザワゴンにはキャンプ道具一式とニヤックは既に積み込んでおり、いつものように、その日の朝の天気予報次第でどちらにするか最終決定するため、パソコンを立ち上げ、天気予報を確認した。

『お、日本海は穏やかな予報。 ようし、今回は猪目海岸に決定だ!』 早速着替えて4時半に家を出た。
島根半島の西側に位置する猪目海岸をベースにしたキャンプツーリングでは、これまで様々な出合いに恵まれて地元の貴重なお話を聞かせていただくことができ、お気に入りの場所の一つである。

*** 一昨年、昨年の猪目海岸ツーリングの記録 ***
2007年:
日御碕へ
ローカルバスで『あるくみるきく』
浜で『あるくみるきく』(1)
浜で『あるくみるきく』(2)

2008年:
浜で『あるくみるきく』
***

ほぼ一年振りとなる猪目海岸に到着。 ただ、いつもと雰囲気が違う。 コールマンの大型ドームテントがいくつも張られ、キャンプに来ている人が大勢居るようだ。 うーん、今年は。。。
私は、人が多い賑やかな場所でキャンプしたり、カヤックを漕いだりするのは嫌いなので、もう帰りたくなってきた。

とはいえまだ朝も早く、浜で泳いでいる人は居ないので、シーカヤックを降ろし、漕ぎ出した。
 
今日は日本海側の高気圧に覆われ、穏やかな晴れになるとの予報なのだが、海にはまだうねりが残っている。 湾から出て、1時間ほどお散歩ツーリングを楽しんだが、この様子なら、おそらく昼頃からは穏やかな凪の日本海になるだろうから、昼から漕ぎ出す事にしよう!
 
一旦浜に戻り、テントを張る。
***
そうこうするうちに、どんどんとクルマがやって来て、浜には人が増えてきた。 今日は久し振りの快晴で、お盆休みのまっただ中。 『うーん、誤算だった』 これじゃあ、昼間にカヤックを浜から出す事はできそうもない。
 
昼から日御碕方面を目指すのは諦め、流木に腰掛けて缶ビールをプシュッと開け、海を眺めながらお弁当を食べると、バス停へ。 せっかくだから、出雲大社にお参りする事にしよう。
一日に数本しかないローカルバス。 クネクネと曲がりくねった狭い峠道を登って下り、出雲大社へ。
 
立て替えが行われている最中の本殿は、立派な雨風避けで覆われており、ここは工場か? と思わせるような外観に驚いた。
お盆休みの旅行で大勢の人が参拝する中、私も旅の安全を祈願。 しばし町中を散策し、いつものスーパーで買い出しをして、帰りのバスに乗り込んだ。
バスに乗った時、一昨年楽しいお話を伺った運転手さんにお会いできないかと期待していたのだが、今回は往路復路とも若い運転手さんであり、残念ながら再会はかなわなかった。 もう、退職されたのかなあ。
***
浜に戻ると、更に人が増えている。 引越しかと思うくらい多くの荷物を運んで来てテント村を作っているグループもある。 ああ。。。
しばし海に浸かって頭と体を冷やしたり、猪目洞窟へ散歩に行ったり。
 
私の苦手な賑やかな浜から脱出するため、再びバス停へ。 せっかくなので、これまで気にはなっていたが乗った事のなかった、平田駅方面への『生活バス』を利用させていただく事にした。 楽しみだ!
 
このバスは、ワンボックスカーがベースのマイクロバスである。 これまた一日に数本と本数が少ないので、乗り込む時に聞いてみた。 『これ、平田のバスターミナルで折り返しですよね。 途中で降りて、平田のスーパーで買い出しする時間はありますか?』 すると、運転手さんは時刻表を見ながら、『そうじゃねえ、20分くらいあるんじゃない』との事。 『じゃあ、お願いします』とバスに乗り込んだ。
バスは海岸沿いの狭い道を走り、驚くような狭い山道を抜け、平田市街へ。 もう一人乗っておられたおばあちゃんも、スーパーの傍のバス停で一緒に降りた。 『料金はなんぼですか?』 『200円』 えー、これは安いなあ。
『帰りもこのバス停から乗れるから、時間頃にはここに出とって』と運転手さん。 『はい、よろしくお願いします』
***
スーパーでビールとつまみを買い出しし、時間前にバス停へ。 到着したバスに乗り込むと、乗客は私一人であった。
『ありがとうございました。 おかげさまで買い出しできましたよ』 すると運転手さんは笑いながら『どっから来られた?』
『はい、広島からです。 猪目には、毎年夏にカヌーを漕ぎに来よるんですよ』 『ほうね、キャンプしよるん? でもクルマで来とるんじゃろ』 『はい、キャンプしてます。 クルマで来ちょるんですが、昼にビール飲んだし、地元のバスに乗るのも好きなんで』
『お盆なのに、墓参りはせんでもええんかね?』 『ええ、ここに来る前に墓参りはしてきましたから』

『それにしても、どこまで乗っても200円言うのは安いですねえ。 驚きました』 『ほうじゃろ。 もっと長い路線じゃったら、終点まで1時間いうのもある。 それでも200円よ。 一区間乗っても、1時間乗っても200円』
『前は、タクシーの運転手をやりよった。 生活バスの運転手は、元タクシーの人が多いんよ』 『そうなんですか。 じゃあ、狭い道でも慣れたもんですねえ。 もしタクシーで平田駅から猪目まで乗ったらどれくらい掛かるんですか?』 『そうじゃねえ、3000円以上掛かるね』 『それがこの生活バスなら200円! やっぱり安いなあ』

『猪目分校があるじゃろう。 あそこには今も3人の子供が居る。 その子らが週に3回、別の学校に行くんよ。 その時にこのバスを使う。 もし、あの子らが居らんようになったら、このバスもなくなるかもしれんなあ』
***
『ところで、さっきは山の中の狭い道を走られましたが、あそこで乗る人も居るんですか?』 『たまには居るよ。 バス停もあるが、このバスはフリー乗降じゃから、手を挙げたらそこで停まって乗せてあげる』 『冬の雪は大丈夫なんですか?』 『なあに、このバスは4WDじゃから、何にも問題ない』

『そういやあ、猪目じゃあ鹿が出るいうて聞きましたが、やっぱり居るんですか?』 『ああ、鹿はよう見るよ。 お盆には、お墓に供えた花を食べに来るし、雨が降った後は、よう里に降りて来る』 そしてあるところで減速し、『ほら、これが鹿が降りて来る通り道よ』と指差し、教えていただいた。

↑ 翌日の帰り道に撮影した、鹿の通り道

その後も、生活バスの話、猪目付近での釣りの話、十六島(うっぷるい)の東側での冬の大波の事、磯での密漁監視の事などなど、様々なお話を伺っているうちに、猪目へ到着(一昨年のツーリングの時にも話を伺ったが、地元の漁師さんは、サザエやアワビの密漁で本当に困っておられます。 サザエの1個でも密漁です。 罰金は数年前に一桁上がり、300万円ほどとか。 罰金は別にしても、自然保護と地元の方々との交流を大切にする心あるシーカヤッカーなら、絶対に密漁はしませんよね!)。
『あんた、ここでキャンプしとるんよね?』 『はい、あの小さいテントです』 『じゃあ、そこの前で停めてあげよう』
バスが停まり、200円を支払って降りる。 『ありがとうございました』 『気をつけてな』
***
夕方5時。 さすがに海水浴客の多くは帰り、キャンプする人たちも夕食の準備を始めている。 絶好のチャンス。 シーカヤックを海に浮かべた。
 
穏やかな日本海。 傾いた陽の光が良い感じで海岸線を照らし、気持ちの良いお散歩ツーリング。 十六島を目指し、漕ぎ進む。 遥か彼方には、うっすらと隠岐の島が見える。
30分ほどで十六島へ。 そこから折り返して海岸沿いに猪目に戻る。
 
海に落ちる小さな滝、海岸洞窟、そして浜に戻る頃には美しい夕焼け。

シーカヤックを浜に揚げ、買ってきた食材で夕食。 暮れ行く日本海を眺めながら、冷えたビールを飲み、出雲の割り子蕎麦を食べる。 イカをつまみにビールをゴクリ。 うーん、旨い!
食事をしていると、後ろの道を生活バスが通る。 見ると先程の運転手さんだ。 会釈をすると、手を振って応えていただいた。 旅先では、こんなちょっとした出合いやコミュニケーションがうれしいものだ。

日御碕までは行けなかったけれど、朝と夕にツーリングが楽しめ、生活バスでの出合いもあり、なかなか良い一日であった。
***
翌朝は、テントを叩く雨音で目が覚めた。 天候不順な今年らしく、天気もコロコロと変化する。 昨日、漕いでおいて良かったなあ。 テントの中でゆっくりと朝ご飯を食べ、荷物を片付けてシーカヤックをカートップ。

帰りには、日本海ツーリングからの帰りの定番となっている、一福さんの蕎麦と、ラムネ温泉を堪能。
今回の教訓は、猪目にキャンプツーリングに行く時は、お盆の休みを避けるべきであるという事。 また、機会があれば静かな時期に訪れてみたいものだ。

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