公営住宅の緑地帯にも初夏が巡ってきた。昨年、伊勢原のフラワーランドで買った苗ポットの「モッコウ薔薇」がこのところ旺盛に花芽をつけている。やはり苗ポットから地面に植え替えたのがよかったみたいだ。これからあのクリームがかった小粒の薔薇は夏ころまで目を楽しませてくれそうである。
今朝はお隣の敷地からはみだして、小枝を徒長させている八重の山吹を少しだけ失敬してくる。世田谷線の松陰神社付近の線路際を走る電車の窓から、ちょっとした庭植えの花木類を眺めるのは好きで、昨日は山吹の風になびく風情がよかった。二年前まで住んでいた日向薬師の近辺なら山吹などは野辺道のどこにいてももいでくることができた。いまはそうはいかない。失敬してきたばかりのこの山吹を好きな器に挿してみる。部屋の片隅に置いて眺めるという遊びである。どこか小田原の骨董市で手に入れた白磁の瓢(ひさご)型、大和骨董市の先月に入手した500円の蕨を鉄絵であしらった志野焼き掛け花入れ、現代沖縄赤絵のチョカと山吹をかわるがわるに挿してみる。
傍らの朝食は珍しく自炊の味としては仕込みの味付けから成功した茨城産のタケノコ炊き込みご飯、キュウリの浅漬け、デザートの水菓子に信州大泉村産の干し柿、これはDさんのお薦め品で、甲州や信州の寒風が育む至宝の食材だ。こういうものをさりげなく土産とするDさんの食センスの良さにいつもながら感謝する。
来週の楽しみは森アーツで始まる「子ども展」だ。アンリ・ルソー、ルノアール、の大判ポスターをじっと眺めていると滲みだす至福感、コロコロした女の子の胸を飾る一輪のマーガレットを眺めるだけで幸福感情は倍増してしまう。背後にリフレインする野原のタピスリー模様はまったくジャズ的即興と共通する韻律を感じる絵柄だ。ルノアールの女の子に抱えられた子猫が伸びをしている様子、ぜひともそのディテールに宿っている真理を拝みに行こうと思っているところだ。
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